将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~インタビュー~
令和元年房総半島台風による大規模停電を経験した焼却施設の取組
山武郡市環境衛生組合

令和3年4月

はじめに


 令和元年房総半島台風(台風15号)では、強風による倒木や建物の倒壊等によって電柱や電線・通信線が損傷し、千葉県内で大規模停電が発生しました。その影響を受けた中でごみの受入れを続け、電源車を活用した山武郡市環境衛生組合ごみ処理施設の取組についてうかがいました。


■発災直後の対応


○令和元年房総半島台風の発災直後はどのように対応しましたか?

<発災直後の対応>

 令和元年9月9日(月)4時59分に停電が発生しました。ごみ処理施設へ行くまでの道は倒木で通行止めになっていたため回り道をして到着に時間がかかりました。施設は照明や電話、電子メールが使えない状況でしたし、事務所管理棟に雨が吹き込んで書類が水浸しになったため、その拭き取り作業が必要でした。また、施設へのアクセス道路の倒木の状況について県土木事務所へ連絡し、一部は職員が伐採して撤去していました。

 ごみ処理施設については、停電後の点検と雨漏りをしていた箇所の復旧作業を行いました。焼却炉は流動床炉で、停電のため空気の流入が遮断されて燃焼が停止した状態でした。非常用発電機は設置されていませんが、無停電電源装置によって計装設備が稼働していたため、ごみの受入れは可能でした。ただし、ごみピットの扉が停電で開閉できなくなくなったため、フォークリフトでこじ開けてできる限りごみの受入れを継続していました。 また、ポータブル発電機を使用してプラント用水をくみ上げてトイレ用水にしたり、PC等の電源として使いました。

倒木による電線等の被害

道路の通行止め


施設の破損・雨漏り


<構成市町との協議~県内広域処理>

 当時焼却炉1炉が耐火物工事中であったことから、ごみピット内は多めに廃棄物が溜まっており、バックホウをレンタルしてピット内のごみを均したり、発電機400Vをレンタルしてクレーンを稼働して均すなどの工夫をしていました。しかし、停電3日目(9月12日)にはピットがいっぱいになり、もはや受入れられないと判断して組合の構成市町(山武市・芝山町・横芝光町)へ伝えに行ったところ、構成市町からはごみの受入れを継続するよう強く要請されました。その際に山武市から、千葉県が取りまとめたごみの受入れが可能な市町村のリストを入手し、リストにあった市川市の焼却施設の協力で処理を行えることになりました。同時に、大型アームロールの運搬車両の手配を行いました。また、積込み用のショベルローダーのリースを行いました。県とは電子メールや電話での連絡がとれていなかったため、情報を入手するのが遅れましたが、そのリストは貴重な情報でした。

 停電から4日目に可燃ごみが倍増しました。それは冷蔵庫・冷凍庫の食品が廃棄されたことによるものと思われ、暑い日が続いていたため、臭気も発生していて、ごみ収集を止めていなかったことは衛生面から良かったと思いました。ごみピットがいっぱいになってきたことから、屋外の金属プレス品の一時保管場所へ可燃ごみを仮置きしました。この場所は鉄板敷きで、コンリート擁壁があり、ショベルローダーで運搬車へ積込む事がスムーズにできました。市川市へは16日から21日までの6日間、延べ22台、1日最大7台運搬し、170トンを受け入れて処理してもらうことができてたいへん助かりました。

発電機の設置

ごみの積み込み


市川市へごみの搬出

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■電源車の活用


○電源車を活用されたと伺っていましたがスムーズにいきましたか?

 山武市から13日夕方に電源車が手配できたという連絡があり、20時にごみ処理施設で待機していました。22時になって電源車400kVA 2台と北海道電力、東京電力、関東電気保安協会が到着し、施設の入り口に電源車を配置して電源ケーブルを配電線に直結させる工事が行われました。14日0時20分に接続が完了して給電を開始し、そこから復電した後の16日まで家には帰れませんでした。

 焼却炉の立上げには、事前に絶縁チェックを行い問題ないことを確認してから、残っていた重油で昇温して、手動で徐々に負荷をかけて電力会社といっしょに様子を見ながら負荷を上げていきました。

 電源車は燃料の軽油を130L/h消費し、2時間程度で燃料がなくなるため、電力会社職員が24時間体制で待機して電力を供給し続けてくれました。燃料のドラム缶5本程度が配置されて、燃料がなくなる頃にタンクローリー車が来て給油をしていました。電源車の使用に関しては、設置から運転管理まで電力会社等で対応してくれたことが、現場にとって大きな助けとなりました。16日13時15分に復電したため、商用電源に切り替えて点検して、15時に施設を復旧させることができました。

電源車の繋ぎ込みの様子(1)

電源車の繋ぎ込みの様子(2)


電源車の配置



表 山武郡市環境衛生組合ごみ焼却施設停電からの復旧プロセス概要

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■災害廃棄物の処理


○災害廃棄物の処理にはどう対応しましたか?

 地域を回って被害状況やどんな災害廃棄物が搬入されるのかを見ながら、また、構成市町には災害廃棄物をどうするのか確認していきました。 組合と構成市町との災害協定では、生活ごみは組合で受入れること、災害廃棄物については市町が仮置場を設置し、その内の可燃物は組合のごみ処理施設で処理することになっていました。9月23日から仮置場からの災害廃棄物の搬入が始まり、畳や布団が多かったため、敷地内に仮置きしてから切断して焼却処理しました。

 発災直後は、ごみ処理施設前の道路が全面通行止めであったため市民の直接持ち込みを停止していましたが、9月19日から持込を開始し、罹災証明書を持ってきた方の分を災害廃棄物として受け入れました。

 事業継続計画を作成中で、災害廃棄物処理計画はまだなく、作成を予定しているところでした。

市民による持込

畳や布団が多い


仮置場から搬入された災害廃棄物(1)

仮置場から搬入された災害廃棄物(2)


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■今後に向けて


 施設の工事は台風シーズンを避けた方がいいと思いました。

 発電機を借りて、水や事務作業に必要な基本的な電力を確保できるように対応したいと思います。

 すぐに停電は解消するだろうと思っていましたが、8日間と想像以上に長い日数になりました。再度、長期間の停電が発生することを考慮した対策を検討しておく必要があります。


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■さいごに


 今回のインタビューは、環境省関東地方環境事務所令和2年度大規模災害時における関東地域ブロックでの広域的な災害廃棄物対策に関する調査検討業務の一環として実施しました。応対していただいた山武郡市衛生組合の皆様のごみ処理事業継続に対する気概と取り組みには深く敬意を表します。

 一般廃棄物処理施設は、地域の重要なインフラとして、停電時の電源車の手配について病院に次ぐ優先度で検討してもらえるように働きかけることが大切です。

 焼却施設が稼働停止した後も様々な工夫をしてごみの受入れを続け、また、県内広域処理の協力も得られて地域の衛生環境が保たれました。山武郡市衛生組合ごみ処理施設における一連の取組は、多くの一般廃棄物処理施設の参考になることと思います。


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インタビュアー:廃棄物・3R研究財団 中山育美

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