将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
平成30年7月豪雨による災害廃棄物の処理に思うこと
-D.Waste-Netの活動を通して-
一般社団法人 日本廃棄物コンサルタント協会
副会長・技術部会長 宇佐見 貞彦

平成31年1月

はじめに


 平成30年7月5日から6日にかけて西日本に停滞した発達した前線、ならびに同時期に来襲した台風7号の影響により、日本付近に温かく非常に湿った空気が供給され続け、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。

 6月28日から7月8日にかけての総雨量は、7月降水量平年値の2~4倍となったところもあった。さらに、48時間雨量や72時間雨量などが、中国地方、近畿地方などの多くの地点で観測史上1位となった。
このような大雨で、岡山県、広島県、愛媛県、福岡県などで、死者221名、行方不明者9名、全壊・半壊家屋15,969棟、床上・床下浸水29,092棟の被害を生じた(消防庁情報、2018年8月21日現在)。

 これらの被災府県の中で、被害が甚大であった福岡県、広島県、岡山県及び愛媛県の4県に、日本廃棄物コンサルタント協会(以下、「廃コン協」という)はD.Waste-Net(Disaster Waste Network, 災害廃棄物処理支援ネットワーク)の一員として災害廃棄物処理の支援活動を行った。

 ここでは、廃コン協におけるD.Waste-Net活動の一端を紹介するとともに、その活動を通して感じた支援のあり方等について述べる。なお、ここで述べる内容は、あくまで筆者個人の見解であることをお断りしておく。


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1.被災都市と災害廃棄物、支援実績


 被災4県の災害廃棄物量とD.Waste-Netとして廃コン協の支援実績を表1に示す。発災1週間後の三連休に大量の片づけごみが排出されると想定されたので、7月12日より廃コン協会員から技術者を派遣し、片づけごみの排出が一段落したお盆前まで支援を行った。

表1 町内の仮置き場

被災都市 災害廃棄物量※ 廃コン協支援実績
福岡県 7月12日~16日
延5人日


呉市 141万トン
(平成30年8月31日時点)
7月12日~8月14日
延70人日
坂町
東広島市
他20都市


倉敷市 41万トン
(平成30年8月 3日時点)
7月13日~8月10日
延39人日
岡山市
総社市
他24都市


宇和島市 53万トン
(平成30年8月 6日時点)
7月13日~8月10日
延24人日
大洲市
西予市
他13都市

※各県の災害廃棄物処理実行計画に基づく。

 なお、福岡県は久留米市や飯塚市等が被災したが、災害廃棄物が少ないこと、被災都市単独で処理が可能であること等から、短期間で支援を終了した。


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2.D.Waste-Netにおける廃コン協の役割


 廃コン協は、D.Waste-Net では復旧・復興支援対応メンバーとして位置付けられており、災害廃棄物処理実行計画策定に対する技術支援や広域処理実施スキームの構築支援が、その役割とされている。

 現実的には、被災都市のニーズにより初動・応急対応も避けられず、災害廃棄物の排出、仮置き場の確保、仮置き場における分別、集積所等における排出状況確認と収集、処理・処分先の確保、災害廃棄物量の推計、処理フロー作成と災害廃棄物処理実行計画の策定、国庫補助申請・精算等に係る技術的支援を行った。


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3.広島県の災害廃棄物処理状況


 広島県内は瀬戸内海沿いの都市中心に被災したが、災害廃棄物は呉市や坂町の2 市町で県内発生量の約6 割を占めている。
また、土石流等による被害であることから、災害廃棄物の8 割以上を廃棄物混じり土砂が占めていることが特徴である。

 支援活動は、呉市、坂町、東広島市、広島市、三原市、尾道市、海田町、庄原市、福山市、府中市、三次市、竹原市を巡回し、仮置き場の状況確認と技術支援を行うとともに、県内の災害廃棄物量の推計を実施した。特に、職員が少なく体制が十分確保できない坂町を重点的に支援した。

 海田町、庄原市、福山市、府中市などは、しっかり分別されていたが、呉市や坂町などは発生量が大量であるためか、混合状態で排出されているとともに、いわゆる勝手仮置き場と見受けられる道路沿いや空き地の集積所も多数存在していた。


呉市大屋大川沿いの被災状況
:河川が損壊し、周囲は土砂が堆積


集積所に排出された災害廃棄物(呉市)
:混合状態で多様な廃棄物が排出されている。



坂町北新地仮置き場
:土砂混じりで、混合状態


坂町土砂仮置き場
:大量の土砂が流出



坂町勝手仮置き場
:混合状態


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4.岡山県の災害廃棄物処理状況


 岡山県は、高梁川に注ぐ支流小田川の氾濫による倉敷市真備地区の被害が特に大きいことから、倉敷市中心に支援活動を行った。倉敷市では、発災当初は「処理施設への持ち込みが難しい場合は自宅前等に排出すること」と市民にアナウンスしたが、道幅が狭い川辺地区では拡幅予定地が空いていた国道486 号線沿いや併走する農道沿いに災害廃棄物が長蛇の列をなすように排出された。


倉敷市真備地区国道沿いの集積状況
:延々と道路沿いに排出された。


吉備路クリーンセンター仮置き場
:混合状態で山積み



 この集積された災害廃棄物は、市役所の管理の眼が行き届いていなかったため、分別はされずに混合状態であった。6か所の一次仮置き場では初期は畳や家電製品を除き分別がなされていなかった。また、4か所の仮置き場は学校であったため、二学期に向けて、仮置き廃棄物の撤去が必要となった。そのため、別の仮置き場や二次仮置き場が追加開設された。

 さらに、大型の廃棄物は破砕しないと受け入れられる産業廃棄物処理施設がないため、西部ふれあい広場には移動式破砕機や篩選別機も設置された。


移動式破砕機


移動式篩選別機



 これらの仮置き場では、面積不足もあり、高さ8m程度も積み上げられたので、廃棄物内の温度が上昇して発火のおそれも生じたためガス抜き管の設置など火災防止対策も必要となった。

 狭い仮置き場を有効に利用しようと高く積み上げるとともに転圧しようとする意識が働くのは避けようがない。しかし、廃棄物は10m近く積み上げると発酵して内部温度が70℃~80℃になる。このような状態が継続すると木材等の可燃物は燻焼き状態となり、酸素に触れると発火する。よく言われていることだが、現場では知見を有する人がいないことも多く、無駄に思えるかもしれないが、高さは5m程度(高くても7m程度が限度)に抑え、あまり転圧しないこと、そして場合によってはガス抜き管等で熱を逃がすなどのことを、あらためて周知する必要があると感じた。


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5.愛媛県の災害廃棄物処理状況


 愛媛県では、宇和島市は浸水と土砂崩れによる被害、大洲市はダムの緊急放流による浸水被害で、この2市を中心に支援を行った。災害廃棄物は、水害由来の特徴から土砂混じりである。その他愛媛県西予市や松野町、高知県宿毛市等も巡回したが、災害廃棄物量が少ないためか順調に処理ができていた。

 宇和島市は、浸水と土砂崩れによる災害であったため、被災地区の近隣空地に住民が自主的に仮置きを開始した。このような場所は地元住民の自主管理や管理者がいない状態であり、分別も十分でなかった。また、住宅の近くの公園等も仮置き場として使用されたこと、十分な面積を確保できなかったこと等から、最終的には、これらの仮置き場が廃止されて港湾地域の緑地1か所に集約して分別も徹底された。そのため、仮置き場から別の仮置き場に輸送する、いわゆる「横持ち」が必要となった。


宇和島市吉田公園自由広場仮置き場
:混合状態で民家のすぐそばに排出


宇和島市大浦地区仮置き場(自転車金属)
:一次仮置き場から移動時に分別



宇和島市大浦地区仮置き場(木材)
:一次仮置き場からの横持ち時に分別



 大洲市でも、住民が近隣の空き地に浸水した家財等を出したため、多数の集積所(いわゆる勝手仮置き場)が生じた。最終的には、総合運動公園、環境クリーンセンター、及び高砂運動公園の3か所の仮置き場に集約され、これら仮置き場に直接搬入するような広報がなされたが、勝手仮置き場の災害廃棄物は、撤去しても次の休日明けには再度排出されているという状況が継続し、発災から1か月後でも勝手仮置き場からの災害廃棄物収集が必要であった。自宅内の家財等は重いことと嵩張るため、住民が仮置き場まで運搬することが容易ではないことを思い知らされた。


大洲市阿蔵団地集積所
:混合状態で民家のすぐそばに排出


大洲市総合運動公園仮置き場(金属類)



大洲市環境クリーンセンター仮置き場
:洗濯機置き場、品目掲示板あり



 また、家電リサイクル法の指定4品目は、被災で一時的に大量に排出されたため、四国の指定引取所の保管・運搬能力が十分になく、保管期間が長期化する事態も生じた。


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6.災害廃棄物処理の支援について思うこと


 平成30年7月豪雨による災害は、西日本一帯にわたり多くの都市が被災した、いわば同時多発的災害であった。

 したがって、環境省は、各地方事務所の専門官だけではなく、本省も含めて廃棄物関係の職員が多く現地に入り対応された。廃コン協からも4県に1か月間に亘り、25人を派遣した。国立環境研究所や日本環境衛生センターからの派遣もあった。

 廃コン協としては派遣要員の確保に尽力したが、結果として全ての場所と期間を通じて、十分な経験を持った技術者を派遣することは困難であった。また、地域の特性等を承知しない場所への派遣や、日常業務との調整ができず細切れの派遣となった面も否定できない。廃コン協の会員は、土木分野で災害査定等復興支援の経験を有する会社が多数存在する。この場合、会社ごとに対応する施設を分担され、各社数名のプロジェクトチームを結成して対応することが多い。廃棄物分野は、土木分野のように技術者の人数が多くなく、会社規模も比較的小さい場合が多いし、かつ災害対応した経験を有する技術者の総数も少ない。このようなことから突発的に発生する災害に対して、日常業務に支障がないように技術者を割いて対応することは容易ではない。

 南海トラフ巨大地震を想定すると、さらに大規模な支援が必要となることは明らかであり、環境省を含めて関係機関における経験者の育成が急務である。

 今回の災害では、支援に伺う自治体での分担業務や必要となる資機材等について事前の情報がなく、現場に赴いてから分担や必要な資機材が明らかになったという面もあった。経験のない技術者が派遣された場合、十分な活動ができたかという思いもある。

 災害対応できる人材の育成のための研修プログラムや会員会社の得意な地域などを考慮した地域分担制等の検討も進めることが必要であろう。このプラットフォームに掲載されている研修ガイドブックを活用することも有効であろう。

 災害に見舞われた都市は、まず人命救助である。それとともに、被災者の保護と生活のため避難所の開設、道路・ライフラインの復旧が優先される。また、被災都市には災害対策本部が設置され、廃棄物分野の人員も参画するが、優先順位の高い業務に人員や時間を取られ、初動時には思うような動きができなかったという声も多く聞く。結果として、多くの都市で分別が不十分な状態の勝手仮置き場が多数発生し、また仮置き場に持ち込まれた。

 地震災害の場合は、余震が続く間は被災者の片づけは開始されないが、水害の場合は水が引いた翌日からでも被災者による家屋の片づけが開始される。今回の場合は、7日(土曜日)に災害が発生したので、9日(月曜日)には仮置き場の確保や排出方法の周知が必要であった。したがって、発災翌日あたりから支援を行うことが必要であったと考える。

 自治体における災害廃棄物処理の担当者は、降ってわいた経験のない業務に休みもなく追いまくられる。多くの都市でプロジェクトチームが設置されるが、全員が何をやればいいか、優先順位は何かなど手探り状態で対応される。また、片づけごみの出し方や収集の相談等、ひっきりなしに住民からの電話が入る。被災都市の担当者は、休みもなく、毎日遅くまで働きづめであり、まさに首が回らない状態となる。環境省は被災都市に寄り添うような支援を主旨とされているが、被災都市担当者が首が回らない状態の場合は、被災都市の内部に入り込み、被災都市の一員となって活動するような枠組みも考慮する必要があるだろう。その意味で、今回の災害対応に、被災経験を有する常総市・熊本市・朝倉市等から職員が派遣されたことは、被災都市の担当者にとっては事務処理面のみならず精神的にも心強かったことと思う。

 さらに、環境省では災害廃棄物対策指針をはじめとして、分別ちらし(中国四国地方環境事務所)、災害廃棄物処理行政事務の手引き(東北・関東地方環境事務所)等を作成されているが、これらは環境省ホームページのいろんなところに散在しているので、探すことは容易ではない。また、現場でそのまま利用できる性格のものでもない。被災都市の担当者は、どんなことを何時行えばよいか手探りである。したがって、発災後から経過時間ごとに何を行えばよいか、またその時に利用できるちらしや広報材料はどんなものかが一目で把握できる資料を準備しておくことが有効である。例えば、仮置き場の広報資料は、地図や住所・電話番号等を追記すれば被災都市でそのまま利用できるようなものを予め作成しておくことである。また、ボランティアへの周知が不十分になりがちなので、放送用の原稿、住民やボランティアに配布するちらし原稿、ホームページ用掲載原稿、災害対策本部掲示用原稿等も準備しておくと有効である。その他、仮置き場の分別品目掲示板、標準処理フロー、災害廃棄物処理日報(添付写真撮影要領も)等も必要である。せいぜい初動1週間用の材料が簡単に入手できるようにしておけば、被災都市の初動対応が円滑に行えると思う。私は、このような資料を初動セットと呼んでいる。

 今回の災害では、収集・仮置き場の管理、中間処理及び最終処分を地元の建設会社や産業廃棄物処理業者に委託した例も多い。これらの業務は、休日なしで朝早くから夕方まで従事しなければならないし、緊急に作業員や車両を確保しなければならない場合も見受けられ、通常より単価が高くなることも想定される。さらには、同一業者に委託しても、常時の委託の有無により被災都市間で処理単価が異なる場合もありうる。弱みに付け込んで暴利をむさぼる業者の方はいないと信じているが、単価の設定や精算方法は、都道府県や国の指導のもと、被災都市間で統一することが必要と思われる。災害廃棄物の収集は、積み込み・積み下ろしの作業時間が多くを占め、移動距離が短いため、精算はトン単価や距離単価は馴染まず、時間単価が実情に合う。このような災害廃棄物処理の積算要領も作成しておくことが必要だと思う。

 多くの被災都市の担当者から、「今度災害が発生したら、もっとうまく対応できますよ。」との声を聞く。そうたびたび災害が起きては困るが、被災都市の担当者の経験は、別の災害時に被災都市に対して支援側として活用してほしい。このような経験者のネットワークづくりや人材バンクなどのような組織も検討する必要があろう。

 また、廃コン協としては、災害廃棄物に関する専門委員会を設置し、災害廃棄物処理基本計画策定、D.Waste-Net活動、人材育成等に係るあり方や手引きの作成を進め、廃コン協会員技術者のレベルアップを図っている。全国の自治体における災害廃棄物処理計画策定や人材育成に廃コン協会員をご利用いただければ幸いである。

 最後に、一日も早い被災都市の復旧・復興を祈念いたします。


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