将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~インタビュー~
岩手県における災害廃棄物処理を語る(その2)
岩手県 松本実

 岩手県環境生活部 廃棄物特別対策室 松本実災害廃棄物対策課長(当時)へのインタビュー(その2)です。

災害廃棄物処理を支えるルールづくり

(聞き手)

 今回の災害廃棄物処理では、もちろん処理現場も大変ですが、それを支える事務の仕事量も膨大だったと聞いています。例えば建物の解体に対する補助は、補助対象が途中で何度か変更になったため、それに伴う事務作業が大変だったという話を聞いたことがあります。

(松本課長)

 建物の解体は、通常は災害廃棄物処理の補助対象には含まれませんが、阪神・淡路大震災のときには特例として認められたので、東日本大震災でも認められることになりました。ただ、その補助対象が最初は民家や中小企業の建物だけだったのが、基礎部分の解体や公共施設に段階的に広がっていきました。補助制度が拡充される前に自分のお金で既に解体してしまった人に対しては、さかのぼって手続きをしなくてはなりませんから、市町村の事務作業は大変だったろうと思います。
今回は処理を円滑に進める様々なルールがなかったので大変苦労しましたが、今回の経験をもとに、必要な補助制度や特例措置をパッケージ化しておくとよいのではないでしょうか。災害の規模ごとに必要な法令措置をセットにしておき、発災したら、どのパッケージを使うか決めればよいわけです。

(聞き手)

 なるほど。それができていれば、発災後にどんな措置が講じられるのか自治体にもわかっているので、安心して処理を進められますね。

(松本課長)

 自治体が数か月間歯を食いしばれば処理できるレベルなのか、既存システムだけでは処理に数十年かかるようなレベルなのか、発災時にそれだけ判断することができれば、必要な措置をセットできるような仕組みですね。そのような仕組みができれば、それほど発生量の推計を精緻に行う必要はないんじゃないかと考えています。

被災者、関係者への心配りを忘れずに

(聞き手)

 これだけの量の災害廃棄物を処理するにあたっては、自治体職員の方々は心身ともに激務だったことでしょう。部下や関係者へのメンタルケアも欠かせなかったのではないでしょうか?

(松本課長)

 県庁の職員も大変でしたが、被災した市町村の職員はもっと大変だったと思います。県と市町村が一緒に仕事を進める場面も多かったので、県の職員には常々「相手の事情をよく考慮して仕事を進めるように」と言っています。被災した市町村職員の中には、職員自身の自宅が全壊し、避難所生活を送りながら任務にあたっている方もいました。そういう方は、日中は役場職員として激務をこなし、夜、避難所に帰ってからも役場職員として避難された住民の方々をケアしながら暮らしているわけです。大変な心労だと思います。また、必要な書類がすべて津波で流されている市町村もあり、単純に電話やメールで「去年と同じようにやって」という仕事のお願い方法では相手を困らせることもあります。加えて相手は支援のため他の自治体から派遣され、土地勘のない方かもしれません。相手がどんな状況で仕事をしているのか考えないと、良好な関係は築けないと思います。


 県の部下職員に対しても、できるだけ丁寧にフォローしてきたつもりです。例えば、苦情対応の電話等は特定の職員ばかりが対応せず、できるだけみんなで電話に出るようにしたりもしました。部下が困ったら最後は引き取ることにしていました。


 ところで、この写真、なんだか分かりますか?

(画像を拡大することができます。)

(聞き手)

 今回の震災で発生した廃自動車の仮置場ですよね?

(松本課長)

 そうです。環境省からは廃自動車は3台まで積み上げて保管してもよいと言われましたが、実際には市町村は、この写真のように平積みにしました。なぜだと思いますか?

(聞き手)

 ・・・。危ないからでしょうか?

(松本課長)

 いえいえ、被災者の方々が車を見に来られるから、有価物として返還することを想定しています。中には津波で何もかも流されて家族の遺品が見つからないから、車の中に何か想い出の品が残っていないかと探しに来られる方もいます。結構な人数がいらっしゃるんですよ。そういう方のために、積み上げて保管するのは適切でないと判断したようです。ただ、そうはいってもいつまでも保管しておくわけにはいかないので、県がルールを作り、公示して2週間問い合わせがないものは市町村の判断で処理することにしました。

(聞き手)

 なるほど。被災者の心情に寄り添った対応ですね。

>>インタビュー連載3回目 災害廃棄物処理の進捗の特徴とは?

聞き手:公益財団法人 廃棄物・3R研究財団
森朋子