将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
いわき市における東日本大震災に係る災害廃棄物等の処理について(その1)
福島県いわき市 松本雄二郎

 市町村での処理経験について、福島県いわき市行政経営部秘書室ふるさと発信課 松本雄二郎課長補佐(前:いわき市生活環境部環境整備課 主任主査兼企画係長)にご寄稿頂きました。計2回の連載になります!

はじめに


 いわき市は、東北地方の最南端に位置し、東は太平洋を臨む全長約60kmの海岸、西は福島県の中央部に接する阿武隈高地まで広がる、総面積1,231.34㎢の広大な面積を有しています。

 人口は約32万6千人で、東北地方では仙台市、郡山市に次いで3番目となっていますが、現在は、東京電力福島第一原子力発電所に伴う相双地方からの避難者約2万4千人の方や、復興事業や福島第一原発関係に従事する多くの方も市内で生活しており、実勢人口は相当数増加しているものと推測されます。

 産業面では、東日本大震災以前は、東北地方第1位の工業製造品出荷額であった製造業を基幹産業として、水産業や農林業、更には海岸やいわき湯本温泉などを中心とした観光業も活発に展開し、地域ごとに特色を持つ当市ならではの都市環境を形成してきました。

 しかし、震災によりこれらの産業は一時的に大きく落ち込み、特に水産業、農林業及び観光業は、当市が福島第一原発から概ね半径30~70km圏内に位置していることから、原発事故に伴う放射能の問題や風評による影響を受け、厳しい状況に置かれました。

 現在、これらの風評を払拭し、震災前にも増して活力に満ちたまちにするべく、産・学・官そして市民が一丸となって復興に向け取組んでいるところです。

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災害廃棄物等の発生と処理の現状


 平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、当市では、海岸線が津波に襲われ大きな被害を受けました。また、内陸部においても、震度6弱を記録した本震の揺れに加え、ひと月後の4月11日・12日には当市の南部地域を中心とする震度6弱の直下型地震が立て続けに起こるなど、その後の度重なる余震の影響も受けて被害が拡大しました。

 市内の家屋等被害は9万棟を超え、このうち、環境保全上やむを得ず市が災害廃棄物等処理として解体撤去を行った家屋等は約1万棟に及びました。

 こうした津波による流出がれき、損壊した家屋等の解体がれき、更には家庭等における被災ごみなど、市内で発生した災害廃棄物等の総量は約86.3万t(災害廃棄物67.6万t、津波堆積物18.7万t)で、これは当市において年間に発生する一般ごみの約6年分にあたる量です。

 これら災害廃棄物等の処理は現在も続いています。平成26年8月末現在の処理済量は約79.0万t(災害廃棄物67.3万t 津波堆積物11.7万t)で、進捗率は91.5%(災害廃棄物99.6% 津波堆積物62.4%)となっています。

仮置場への集積


 発災後、市内の復旧に向けてまず必要とされたのは、これら災害廃棄物等の1日も早い収集・撤去です。このため、これらを集積し仮置きする場所として、市内17か所に災害廃棄物等の一次仮置場を設置し、発生した災害がれきの収集、被災し損壊した家屋の解体撤去などを進めました。

 一次仮置場17か所の内訳としては、主に津波流出がれきを集積するために津波被災地区に設置した仮置場が10か所、損壊家屋等の解体がれきや家庭等で発生した災害ごみを搬入するために内陸部に設置した仮置場が7か所でした。



いわき市の災害廃棄物仮置場 位置図 
注:これまでに設置したすべての仮置場を示すもので、撤去済か所も含む
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 また、集積した廃棄物の再生処理(リサイクル)を円滑に進めるため、市内2か所に二次仮置場を設置し、一次仮置き場に集積した廃棄物のうち「金属類」、「家電類」、「コンクリート類」を選別・移動し集積しました。

 仮置場の設置にあたっては、平成20年度に策定した「いわき市災害廃棄物処理計画」において7か所の候補地を選定していましたが、今般の震災が想定を上回る規模であったため、同計画で選定した仮置場では足りず、特に被害が大きく大量のがれき等が生じた津波被災地区においては、震災直後の混乱した状況の中で、公有地・民有地を問わず集積できる場所を何とか確保し仮置場としたというのが実状です。

 当市では、広大な土地を仮置場として確保することが難しく、設置した仮置場は各地区の市民グラウンドや最終処分場跡地などで、広さはそれぞれ5,000~40,000㎡、19か所合わせた面積は約240,000㎡でした。

 集積の最盛期には仮置場のスペースが不足し、更に仮置場を確保する必要が生じましたが、市内のある程度まとまった広さの土地は、被災者や原発事故に伴う避難者のための仮設住宅用地などに使用されていたため、土地の確保が難しく、また漸く土地を見つけても放射能の付着に対する不安から、災害廃棄物等を集積することについて、地域の住民や事業者の理解を得ることが困難であったため、新たな仮置場は設置できず、一時逼迫した状況に陥りましたが、既存の仮置場内の廃棄物の積上げ方を工夫したり、二次仮置場を有効活用し廃棄物の処理を迅速化することでスペースを確保し、何とか凌ぐことができました。

 この結果、市民の生活の場周辺に流出・飛散したがれき等については平成23年7月末までに、家庭等で発生した災害ゴミについては平成24年3月末までに仮置場への搬入を終えましたが、膨大な数に及んだ損壊家屋等の解体がれきについては平成26年3月末まで仮置場への搬入が続きました。

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災害廃棄物等の選別・仕分


 内陸部の仮置場では、廃棄物を搬入する際に、概ね、木くず、畳、混合可燃物、コンクリート、瓦、石膏ボード、自然石、家電、ガラス・陶磁器、金属、土砂、その他危険物等に分類して集積しました。当初はもう少し大雑把な区分に分類していた仮置場もありましたが、集積した後、処理を迅速に行うため細分化していきました。


いわき市四倉市民運動場(内陸部) 災害廃棄物仮置場 見取図 
注:データは平成24年4月現在のもの
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 一方、津波被災地区の仮置場では、土砂に様々な物が混入した状態の津波堆積物を主に集積したため、仮置場内に振動篩い機やトロンメルなどの選別機を設置するなどし、概ね、重機による粗選別→作業員による手選別→選別機による細選別→作業員による篩い上の手選別、といった手順で選別・仕分を進めました。


仮置場の管理


 仮置場では、集積した廃棄物の適切な処理・処分に繋がるよう周辺環境に配慮しながら管理し、必要な対策を講じました。

 最も気を使ったのが火災対策ですが、気温の高い夏場のみならず、冬場でも衣服・布団など繊維類や土まじりの可燃物は温度が上がりやすく、100℃程度まで発熱し発煙や内部の炭化を起こすことがありました。このため、夜間も警備員を配置し24時間体制で監視するとともに、集積した廃棄物の温度測定を毎日3回実施し、温度の上昇が見られた場合、攪拌し放熱するなどの対策をとりました。放熱を目的としたガス抜き管も必要に応じて設置し、消火設備の設置や消防署と連携のもと毎年仮置場での消火訓練を行うなどの対策も行いました。

 また、夜間、仮置場へ侵入し家電(エアコン室外機等)を持ち去る案件が生じたため、防犯・事故防止対策として、24時間体制の警備に加え、各地区の警察署と連携し仮置場周辺のパトロールを強化しました。

 害虫及び悪臭対策としては、市内の専門事業者で構成する共同事業体への委託により、年3回の消毒を実施するほか、必要に応じ適宜、薬剤や消石灰の散布を行いました。これにより、仮置場内やその周辺での悪臭・害虫の発生は特に見られませんでした。

 放射能対策としては、各仮置場内やその周辺の放射線量測定値を毎月ホームページ等で公表するほか、地域住民等から要請があった場合には、その都度立会いのもと線量を測定し確認いただいたり、毎日の線量測定値を仮置場前に掲示するなどしました。また、仮置場内に集積した廃棄物については、搬出する前に必ず種類ごとにセシウム濃度の測定を行い、問題がない値であることを確認したうえで処理を進めました。

 このほか、仮置場内及び周辺の環境監視として、水質、土壌、大気中の有害物質等の測定・分析を実施しています。

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