将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
いわき市における東日本大震災に係る災害廃棄物等の処理について(その2)
福島県いわき市 松本雄二郎

 市町村での処理経験について、福島県いわき市行政経営部秘書室ふるさと発信課 松本雄二郎課長補佐(前:いわき市生活環境部環境整備課 主任主査兼企画係長)からのご寄稿(その2)です。

災害廃棄物等の処理


 当市では震災直後から市内の廃棄物関連事業者等と連携し、仮置場へ集積した廃棄物の処理を早急に開始するべく準備を進めましたが、福島第一原発の事故に伴う放射能汚染の問題が生じ、当市を含む福島県の一部の地方の災害廃棄物等については、暫くの間仮置場からの運搬や処分が制限されました。

 平成23年6月になって環境省から「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」が示され、一定の条件のもと当市においても処理を進めることが可能となったことから、具体的な処理の方法や進め方について更に環境省と協議を重ねつつ、焼却施設や埋立処分場など処理施設周辺住民への説明、処理施設やリサイクル製品の放射線量の調査、施設作業員の安全対策、モニタリング体制の構築などに取組、準備が整い次第順次処理を開始しました。

 災害廃棄物等の処理は、環境省が平成23年5月に示した「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」に基づき進めましたが、より計画的かつ適正に進めていくため、平成24年3月に市として「東日本大震災に係る災害廃棄物処理実行計画」を策定し、この中で処理を進めるにあたっての基本的な考え方、処理の方法、スケジュール等を示し、同計画に沿って平成26年3月末までの完了を目途とし処理に取組んできました。

 また当市では、災害廃棄物等の処理にあたっては、可能な限り市内で進めることを基本としました。これには、当市で発生した災害廃棄物等については、当初、国により県外への持ち出しが制限されたこと、県内においても暫くの間、他の市町村から受け入れを拒まれる状況にあったこと、また一方では、当市は東北有数の工業都市であり、市内の廃棄物関連事業者が充実していることなどが背景としてありましたが、国からの復興資金を直接市内に落とすことで、地域を活性化し復興の足掛かりとしたいという狙いもありました。

 このことから、仮置場に集積した災害廃棄物等の運搬・選別・処理については、基本的に市内の廃棄物関連事業者約60社で構成する共同事業体へ業務を委託し進めました。もちろん、市内では処理が困難な廃棄物もあるため、これらについては市外の処理事業者を探し、当該事業者の所在の自治体と協議し了解を得られたものについて、別途業務を委託し処理を進めました。

 また、処理を進める際には、まずは再生利用(リサイクル)を基本とし、可能な限り焼却や埋立処分量を減らすとともに、市や福島県の土木部門等に協力を求めるなどして最大限復興に向けた資材としての活用を進めました。

 再生利用については、仮置場から搬出する段階で100㏃/kg以下(原子炉規制法に基づくクリアランスレベルと同等)とする当市独自の基準を設け、平成23年7月以降これをクリアできた品目から順次処理を進めました。

 この再生利用の成否が、本市において災害廃棄物等の処理を進める上での鍵でしたので、様々な手法や事業者を探しリサイクルルートを確保していきました。

 その結果、木くず類は主に合板や木質燃料に、コンクリート類は堤防資材や路盤材に、金属類は金属原料に、廃プラスチック類は発電燃料に、津波堆積物は海岸防災緑地の資材として再生し、災害廃棄物等の最終的なリサイクル率は8割程度となる見込みです。

いわき市豊間中学校災害廃棄物仮置場(混合廃棄物)2012年7月撮影 

いわき市北緑地災害廃棄物仮置場(木くず類)2012年7月撮影 


 一方、再生利用ができない可燃ごみについては、当初、バグフィルター等の必要な設備を備えた市の焼却施設2か所で焼却する考えでしたが、放射能汚染に対する施設周辺住民の不安が強く理解を得るまでに時間を要し、平成24年9月に漸く市の南部にある焼却施設1か所で焼却を開始しましたが、より原発に近い北部の施設では焼却灰の処分の問題などもあって周辺住民の理解を得られず、焼却を開始することができませんでした。市の施設1か所だけでは焼却が間にあわないため、平成25年6月からは市内の民間焼却施設1か所でも焼却を進めています。

 再生利用ができない不燃物については、当初、市の最終処分場で埋立処分する考えでしたが、こちらも焼却施設と同様の理由から処分を開始できない状況が続き、平成24年7月になって市内の民間安定型処分場で、次いで平成24年9月から市内の民間管理型処分場で埋立処分を開始しました。

 災害廃棄物等の処理は、国のマスタープラン及び市実行計画に沿って平成26年3月末までの完了を目指し取組んできましたが、当市を含む福島県内の一部地域では、原発事故の影響が大きかったことなどから、国が状況に応じ処理期間の延長を認めることとしており、当市においても一部の災害廃棄物等について処理を完了することが難しかったことから、平成26年度も引き続き処理を進めています。

 当市において、平成26年3月末までに処理が完了しなかった主な廃棄物等は、石膏ボード類及び津波堆積物です。

 石膏ボード類は、損壊家屋等の解体撤去に伴い大量に発生しましたが、再生処理、埋立処分ともに市内で処理できる量には限りがあり、また、市外での処理は原発事故の風評から受入れが進まず遅れが生じたものです。一時、市内に再生プラントを設置し処理することも検討しましたが、用地確保が困難であったことなどから断念しました。

 平成26年度になって、市内の民間管理型処分場が拡張工事を終え、まとまった量の受入れが可能となったことから埋立処分を進め、現在は処理を終えています。

 津波堆積物については、その多くは土砂ですが、これらのほぼ全量を福島県が実施する海岸防災緑地工事の資材として活用することになっています。資材化するためには、県が求める規格に応じた土質とするため、篩いなど細選別の作業が必要になりますが、量が膨大であるため時間を要し、現在もこの作業を進めているところです。こちらは、平成27年3月末までに作業を終える予定です。

 この津波堆積物の処理の終了をもって、当市における東日本大震災に係る災害廃棄物等処理の全ての工程が完了となります。

放射能の問題


 当市において、災害廃棄物等の処理を進めていく上で一番課題となったのは、何といっても原発事故に伴う放射能の問題でした。正直、この問題が無ければ、当市の災害廃棄物等の処理は、ずっと早い時期に完了していたものと考えられます。

 放射能について、当初は、我々はもとより、国も県も廃棄物関連事業者も、ほとんど知識やノウハウがありませんでした。

 当市としては、まずは災害廃棄物等を安全かつ適切に処理するための方針や基準、マニュアルの策定などを国に対し要望しました。それらが示されるまでには数か月の時間を要し、その間は処理が進められず、また、方針等が示された後も具体に処理を進める過程で新たな疑問や課題が生じ、その都度環境省に確認し判断を求める必要がありましたが、答えが準備されている状況ではなかったため、常に後手後手に回る感じで、特に平成23年度の上半期は思うように処理が進まず、もどかしい時間を過ごしました。

 またこの時期、仮置場周辺地域、議会、市内部などからは、早急に災害廃棄物等の処理に取りかかるよう求められる一方、災害廃棄物等の処理を進めることで放射能が拡散するのではとの不安などから、処理を進めることに猛烈に反対する市民の方もいて、処理が進まなくても責められ、進めようとしても責められるという、辛い状況にありました。

 当市は福島第一原発からの距離が比較的近い割には事故当時の風向きの関係などもあって、市内の放射能汚染は少なく、環境省が示した基準に沿って再生処理、焼却、埋立処分ともに進められる状況にありました。しかし、前述のとおり、市民の放射能に対する不安は想像以上に強く、特に焼却、埋立処分については施設周辺住民の理解が得られず、平成23年度中に処理を開始することができませんでした。

 こういった放射能に対する市民の不安の解消に向け、処理施設周辺住民を対象に複数回にわたり説明会を開催し、環境省や国立環境研究所等の協力のもと専門家の方を招いて放射能や放射線の安全基準の根拠等を説明するなどしましたが、放射能の問題は、ある意味感情的なものになっていて、具体的な基準や安全性の根拠、客観的な数値等を示しても理解を得られないことも多く、説明会で詰め寄られたり、市役所に要望・抗議に来られることも度々ありました。

 また、市内で処理が困難な廃棄物について、市外で処理を進める場合も、放射能の問題が大きな足かせとなりました。発生元である市内でも反対が出るものを、他の自治体で受け入れられるか考えれば当然なのですが、特に平成23・24年度は、当初持ち出しが制限されていた県外はもとより、県内の自治体からも事前協議で断られることがほとんどでした。

 県外への持ち出しが認められた後、ある品目について、先進的な技術を有する事業者が所在する他県の自治体に、当市の災害廃棄物を受け入れられる“可能性があるか”を伺っただけで、当該県から環境省に苦情がいくなど騒ぎとなったこともありました。

 この放射能の問題に対し、市としては、災害廃棄物や処理施設の放射能濃度や放射線量の調査、施設周辺環境の放射線モニタリング体制の強化などに努め、これらを随時公表するなどして、危険性がないことを客観的に“見せていく”しかありませんでした。あとは正直、時間が解決してくれるというところもあって、様々な報道を通じたり、また生活していく中での経験などから、放射能に対する過剰な反応は徐々に薄れ、感覚的に市内で発生した災害廃棄物等の処理が放射能を拡散したり環境に影響を与えるような危険なものでは無いということが浸透していった感じを受けています。平成25年度に入ると、理解を示してくれる事業者や自治体が増え、処理が進み、石膏ボードや津波堆積物など一部の品目を除けば、平成26年3月末までに概ね処理を終えることができました。

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おわりに


 今回、いわき市における災害廃棄物等の処理について書かせていただきましたが、概略的な内容に留まっています。皆さんが本当に知りたいところは、もっと具体的に突っ込んだ内容かもしれませんが、さらに具体的な部分になると、ここではお伝えし難いこともあったりしますので、もし興味がありましたらお問い合わせいただければ、詳しい話や体験等について、できる限りお伝えいたします。

>>福島県いわき市行政経営部秘書室ふるさと発信課 松本雄二郎課長補佐(前:いわき市生活環境部環境整備課 主任主査兼企画係長)からのご寄稿連載は今回で終了です。次回の掲載をお楽しみに!