将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
大規模災害による被災自動車の適正処理に向けた自治体支援活動について
公益財団法人 自動車リサイクル促進センター
再資源化支援部 主事 元起 秀和

平成31年2月

はじめに


 本財団は、自動車リサイクル法に基づく指定法人として、主に使用済自動車等の適正な再資源化に資する事業を行っております。その一環として、大規模な災害時でも自動車リサイクル法に基づく対応が適切に行われるよう、東日本大震災以来、業務を行ってまいりました。今回はその取り組みについて、概要をご説明いたします。


top

1.自動車リサイクルのフロー


 2005年1月より本格施行された自動車リサイクル法では、原則として自動車購入時にユーザーがリサイクル料金を預託し、その自動車が使用済自動車となった際に、引取業者が自動車リサイクルシステムで預託済みであることを確認します。このとき、当該使用済自動車が預託済みであった場合、その再資源化の工程が開始となります。


【参考 自動車リサイクルシステムフロー図】


top

2.東日本大震災における番号不明被災自動車の発生と対応


 ところが、2011年の東日本大震災の津波被害では、損傷が激しくナンバープレートや車台番号が不明で、所有者や預託確認ができず、通常のリサイクルルートに乗せられない「番号不明被災自動車」が約13,000台と大量に発生しました。


津波により被災した所有者不明の自動車(番号不明被災自動車)
【写真提供:東北大学 劉 庭秀 教授】


自治体仮置場に保管された被災自動車
【写真提供:JARC】


 既存のスキームでは、番号不明被災自動車は所有者不明の放置車両と同様、自治体がリサイクル料金を負担し、再資源化することになっておりました。一方、自動車リサイクル制度が十分に世の中に浸透して多くの車両が実質的には預託済であることから、本財団は国等と協議し、使われなかったリサイクル料金(自動車リサイクル法第98条 特定再資源化預託金等)を原資として、被災自治体の負担軽減、および円滑な被災自動車の処理を目的として、新たに預託済の車台番号を付与する「番号不明被災自動車対応」を行うことといたしました。


top

3.手引書・事例集の作成


 窓口を開設し、被災地の市町村から番号不明被災自動車の申請受け付けを開始すると、普段、自動車リサイクルに馴染みのない市町村のご担当者の方から、自動車リサイクルに係る様々な質問を受けました。


・被災自動車の取り扱いや保管で注意すべきことは?

・被災自動車の所有者はどのように調査するのか?

・処分の公示期間は何か月必要か?

・引取業者とは何か?



・・・等々、多岐にわたりました。

 都道府県、保健所設置市には自動車リサイクルの担当部署がありますが、そうではない市町村に対しては、災害時における自動車リサイクルを分かりやすく説明するツールが必要だと、このとき痛感いたしました。

 このことをきっかけに、番号不明被災自動車への適切な対応を担保することとなる、被災自動車処理の全般について、適正かつ円滑な自動車リサイクルを推進するための、自治体担当者向けの手引書・事例集を作成し、2018年5月にリリースするに至りました。

 なお、津波被害の想定がない内陸の市町村においても、土砂災害等により被災自動車が発生する可能性があることや、発災時に沿岸の市町村へ支援されることもあると考えられ、本手引書・事例集はご参考頂けると思います。


top

4.手引書・事例集の主な特徴と構成


【本書の主な特徴】

  • ・南海トラフ巨大地震による津波被害を想定した被災自動車の対応に係る手引きとして作成
  • ・自動車リサイクルに馴染みの無い市区町村担当者が災害廃棄物処理計画の策定や、災害発生時の参考資料として活用いただくことを想定
  • ・「災害廃棄物対策指針(環境省)」に準拠し、災害廃棄物全般の処理に関する自治体向け指針と齟齬がないよう、かつ、重複する部分は簡略化し、被災自動車に特化した部分は手厚く記載
  • ・東日本大震災当時に被災自動車の処理経験のある自治体、事業者へ訪問調査を行い、対応事例として掲載
  • ・民間との事前協定締結書のフォームや被災自動車の管理台帳等、実用的な様式を掲載




 手引書・事例集の総ページ数は120ページで、自治体内部の手順を示すパートは、「対応フロー」「作業内容」および「作業ポイント」、「事例」の見開きで4ページを基本構成としています。



 なお、本書は自治体内部の業務へのご提案や、事例等を含むため、ホームページ等では一般公表しておりません。提供については、自治体のご担当者様および内部の関係者様に限っておりますので、冊子の送付を希望される場合は、本財団にご連絡ください。


top

5.理解・普及活動について


 本財団は、手引書・事例集の作成の他、南海トラフ巨大地震による被災自動車の発生台数の推計も行いました。

 自治体における被災自動車への事前対策を普及・啓発するため、都道府県単位で手引書・事例集や被災自動車推計結果を用いた説明会(30~60分)、または討論型図上演習と有識者講演も含めた研修会(3~4時間)を2018年度より行っております。

 2018年度は都道府県における市町村の一般廃棄物担当者を対象とする会議等や、環境省地方環境事務所主催の連絡会にお呼びいただき、説明会を9県、2ブロックにて、研修会を4県で実施しました。(何れも費用は本財団が負担しております。)


研修会の様子の写真


 本財団は2018年12月に、環境省によるD.Waste-Netに参画いたしました。平常時におきましても、引き続き自治体支援を積極的に行ってまいりますので、自治体の皆様におかれましては被災自動車処理にかかわるご質問・ご相談等ありましたらご連絡を頂きたいと思います。


top

被災自動車処理にかかわる手引書・事例集や説明会、研修会等のお問合せ、ご相談


公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(JARC)
再資源化支援部 担当あて
TEL : 03-5733-8302
URL : https://www.jarc.or.jp/
E-mail : shienbu1-2@jarc.or.jp




top

>>本記事は以上になります。 画面top  メニューに戻る  諸団体における取組みページ