将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
平成30年7月豪雨災害を経験して…
~小さな自治体で起こった大災害からの復旧作業~(その2)~
坂町 都市計画課 課長 西谷伸治

令和2年10月

本稿は、全2回のうちの(その2)になります。

目次

(その1)

1.はじめに

2.災害時の状況

3.発災直後にまず取り組んだこと

○交通インフラ / ○生活インフラ
○被災者支援 / ○膨大な量のがれき混じり土砂
○土のう袋に入れられた災害廃棄物等の搬出と処理

4.緊急県外処理の背景と経緯

5.広島県への事務委託における坂町の役割と実務


6.公費解体の取組

〇公費解体事務とその支援
〇解体工事がスムーズに進むまで
〇国庫補助事業の対象について

7.環境省・国土交通省の連携事業の成果と課題

8.被災したリサイクルセンター坂の復旧が補助対象外に

9.災害の経験を踏まえて

10.最後に


6.公費解体の取組


公費解体事務とその支援


 公費解体事務では、実際に災害を経験した熊本市と熊本県西原村から応援に来てもらい、要綱や申請書類の様式等を提供いただくとともに、事務の内容を詳細に説明してもらえて、本当に助かった。

 発災から約1ヶ月後、公費解体と土砂混じりがれきの撤去にかかる費用償還の申請受付を行うこととなった。少ない職員数で本庁舎と小屋浦地区の二か所に受付窓口を設置した。最初はどのくらいの被災者が申請に押し寄せるのか不安であったが、初日(土曜日)と二日目(日曜日)に多くの相談者が集中して来られて混雑したものの、その翌日からは受付事務担当を増員することなく受付事務を進めることができた。

 公費解体の申請には、登記簿謄本、所有者が死亡していた場合は相続人の戸籍謄本、印鑑証明書等、被災者が提出しなければならない書類が多く、受付事務対応は1件につき約30分を要し、高齢者の相談ではさらに時間がかかった。受付での説明後は被災者に正式に書類を整えてもらうが、添付書類が多く、被災者に不備を修正してもらわなければならないことが何度もあり、書類の簡素化が図れれば良かったと思う。特に高齢者にとっては添付書類が多く、申請書類に記入することも煩雑になり、負担をかけることとなった。

 生活再建のため緊急に解体を行いたい被災者には、償還制度を利用してもらい、業者と契約して解体した費用は後から役場から支払われるとお知らせした。ただし、環境省の補助事業では、解体工事であっても諸経費15%以下の要件があるため、償還制度を利用する被災者には諸経費の関係で全額償還できるかどうか分からない旨をしっかり伝え、解体事業を進めていった。

 自治体が公費解体を実施する場合、解体にかかる費用の積算、工事発注、解体工事監理、完了確認まで、一連の業務が発生するが、災害復旧の真っただ中で、町の土木職員が足りず、解体にかかる業務全てを環境部局が行うのは難しい状況であった。そこで広島県や熊本市からのアドバイスを受け、東日本大震災や熊本地震でノウハウを持っている、日本補償コンサルタント復興支援協会に設計業務を委託することができた。日本補償コンサルタント復興支援協会は、申請受付した書類のチェック・被災家屋の測量・申請者との立ち合い・完了報告等を担当してもらった。家屋解体にかかる業務の大半を委託できたことは、職員の負担軽減に繋がった。10月にはコンサルタント業者に委託契約し、申請家屋の調査・設計を開始してもらった。環境省や広島県が示した解体の基準単価(m2当たり10,000円前後)の積算もあり、10月後半には設計書が徐々に出来上がり始めた。


解体工事がスムーズに進むまで


 熊本地震の際は、公費解体工事を地元解体業組合と1社随意契約を行い、解体工事は組合の差配で順次行うことができたと聞いていたが、平成30年7月豪雨災害では、広島県に解体業者をまとめる組合が存在しなかった。また当時は解体業者の人手不足が顕著で人件費が高騰しており、広島県が定めた基準単価の設計額では業者に請け負ってもらえず、解体作業が進まなかった。特に坂町は狭隘な道路が多く、被災家屋の解体を行うにもダンプや重機が入らない家屋が多くあり、通常の設計額では落札されなかった。

 このため、町内企業などから小運搬費用の見積を徴収し、基準単価に車両通行不可能家屋の小運搬費用を上乗せし、設計額を見直すことで、ようやく業者と契約することができた。さらに、基準単価には家屋内に流入した土砂の撤去費用も含まれていなかったため、基準単価にそれらも上乗せし、業者が落札できるよう設計することも必要であった。また、基準単価には、家屋内に残った家財やごみなどの撤去運搬費用は算定されておらず、家財道具などは基本的に被災者が家屋から仮置場に持って行ってもらうよう申請時に被災者にお願いしていた。しかし、被災者(特に高齢者世帯)が家屋から膨大な量の家財を搬出するのは困難であり、被災者からは相当な数の苦情が寄せられた。あらかじめ、ボランティアを公費解体が決まった家屋に優先的に配置し、家財道具を搬出するなどの事業を事前に取り決めておけば被災者からの苦情も少なく出来たのではないかと思う。

 熊本市の方からは、危険物の自主廃棄や室外機のフロンガス抜き等、申請時に注意しておくべき事項を事前に教えてもらっていたが、町には様々なクレームが入り、ボランティア団体に処理を依頼することや、解体業者の作業項目に追加して対応してもらうような状況であった。

 解体業務が落札した後、広島県から委託された二次仮置場管理者(鴻池組・広島県)と坂町が委託した解体業者に対する説明会を実施し、二次仮置場へ搬入する際の留意事項(ダンプのシート掛け、アスベスト含有建材のフレコンバック搬入等)を説明した。しかし、解体業者の中にはこれらの事項に十分対応できていない企業もあり、しっかり分別できていないこと等、留意事項の徹底をその都度しなければならなかった。また、解体工事が軌道に乗ると、被災していない住民からは解体時に発生する交通渋滞、騒音、振動等のクレームが多数あり、その対応にも苦慮することとなった。

 解体業者の中には、解体業務を多く落札して作業に遅れが出始め、粗悪な下請け業者を雇う落札業者が現れ、分別の不徹底、解体現場での素行、二次仮置場に過積載で搬入するなど、現場や二次仮置場でのトラブルが発生することがあった。解体業務を発注する際には、厳しく作業手法の指導や現場内での作業確認を行うことが大切であると感じた。


国庫補助事業の対象について


 基本的に災害廃棄物処理事業で国庫補助事業の対象となる工事請負費で計上できる項目は限られている。例えば、表土入替えは通常の工事であれば土木積算で設計をするが、災害廃棄物処理事業の公費解体や一次仮置場の表土入替えでは委託業務として契約を行わなければならなかった。また、各種工事の積算単価は、県標準単価を使用するようにと環境省から通知があったが、県標準単価を使用した場合、土木積算での設計額と諸経費率に差がありすぎるため、どうしても設計額が低くなり契約することができないなど苦慮した。

 災害廃棄物処理事業(国庫補助事業)は、災害により被害を受けた市町村が行う、災害廃棄物の収集、運搬及び処分に係る事業のことであるが、主として災害廃棄物の収集運搬にかかる費用が主なものであり、諸経費などは実態のない費用としてみなされ、補助対象外になっていると思われる。しかし、近年の大災害では、土砂混じりがれきの撤去や解体業務は、通常の土木工事と同じことが行われており、土木積算単価で設計することを求められていることから、業務の内容によっては土木工事のような諸経費率が認められるよう国には検討してもらいたい。

 また、西日本豪雨災害では災害廃棄物事業で被災家屋の公費解体が可能となっているにも関わらず、公費解体事業を行わない自治体があったという報道を目にした。制度の活用は、各自治体の判断によるものであるが、生活再建を進める上で公費解体事業を行政が行えば、被災者の大きな財政支援になり得ると思われ、同じ災害で他自治体と同じように被災したにもかかわらず、公費解体の制度を設けていない自治体があったことはとても残念に感じた。

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7.環境省・国土交通省の連携事業の成果と課題


 災害時には、様々な災害廃棄物が地域に発生するが、国土交通省の堆積土砂排除事業で排除が可能なものは、豪雨や洪水などの災害により宅地内に流入した土砂や異常に多量の泥土、砂礫、岩石、樹木等の、いわゆる自然由来のものが対象となっている。一方で、環境省の災害等廃棄物処理事業は、主に災害等による損壊家屋やがれきなどの災害廃棄物が対象となっている。

 西日本豪雨災害では、環境省と国土交通省が連携し、堆積した廃棄物、がれき、土砂の迅速な撤去を促進し、被災者の早期生活再建を図る、連携事業が初めて適用された。災害時に発生した土砂やがれき等を収集運搬し、分別後、土砂等の自然由来のものは国土交通省が、がれき等は環境省が処分費を負担し、中間の運搬・分別処理はかかったそれぞれの廃棄物の費用を重量で按分し負担するものであった。

 環境省では諸経費が15%までが補助対象事業であるが、連携事業として申請することで、諸経費は土木積算の経費率が適用され、その全てが補助事業となり(諸経費は直接工事費で按分)自治体にとっては有利な面があると思われる。しかし、新たに創設された連携事業であったが、災害2か月後の国・県の説明会では、詳細な内容が説明されず、事業内容や、土量の把握方法、諸経費の按分方法など、各省間でも詳細に内容が詰められていないようで、査定時まで採択されるか不安があった。

 連携事業で申請した場合、両省庁が同時に査定を行うことになり、がれき混じり土砂の推計量は、国土交通省が数量を㎥(体積)で計算するのに対し、環境省は数量をt(重量)で計算するため、土木部が計算した体積を土砂や流木などの比重で再計算する必要がある。

 災害廃棄物処理実行計画では処分する災害廃棄物の総量を明確にしなければならず、土木部局と環境部局が綿密な連携を図り、災害廃棄物の推計値をうまくまとめる必要性がある。土砂の量が膨大であり、資料作成時には土量の予測が困難であったが、最終的に土木担当と情報共有を図り、なんとか数量を調整することができた。


土木・他部署担当との打合せ

 浸水地域では、水が引いた後に災害廃棄物やがれき混じり土砂が宅内に堆積しており、その除去を連携事業で実施したが、家屋内や床下にもがれきや土砂、ヘドロなどが堆積する家屋が多数あった。

 国土交通省事業では、自治体が契約した事業者が撤去を実施することとなっており、環境省事業では自治体の直接撤去や被災者が契約した業者が撤去できる償還制度の二本立てとなっている。

 床下や床上の撤去を自治体が行う場合、撤去の際に家屋が損傷する恐れがあり、責任問題が発生する可能性があったため、自治体主体での撤去は行わなかった。そのため、床下や床上の撤去は国土交通省事業として扱わず、環境省の償還制度を活用してもらい撤去を実施していった。

 土砂のみの撤去であれば国土交通省の管轄になると思われるが、国土交通省では償還払い制度を認めていない為、がれき混じり土砂という理由付けで環境省の補助事業を活用し、宅地内土砂撤去の償還払いを行っていったが、今後は、国土交通省でも償還制度を活用できるよう運用を見直し、さらなる被災者支援を行っていただきたい。

 また、国土交通省等の災害復旧事業では事業採択要件が定められており、事業採択要件に該当しないメニューについては、災害復旧事業債(単独)で、当該年度の財源が確保できることもある。環境省の災害廃棄物処理事業は、査定で採択されない場合は全て一般財源となるため、査定で認められなかった費用については起債を充当することで、当該年度の財源に穴が開かないようなスキームを財務省と協議していただきたい。


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8.被災したリサイクルセンター坂の復旧が補助対象外に


 坂町は資源リサイクルを行う施設『リサイクルセンター坂』を管理(運営は業者委託)しており、町内の資源ごみの収集・分別・売払いを行っていた。豪雨災害では、同施設が被災し、ほぼ全壊となったため、廃棄物処理施設災害復旧費補助金の制度を利用し施設復旧を実施しようとした。しかし、被災施設があった場所は河川沿いであり、今回土石流による最も大きな被害が発生した場所であったため、周辺に砂防堰堤を早急に設置することが決定し、現在の場所で再建することは断念せざるを得なかった。

 再建場所の候補を探しつつ、早急に施設が再建できるよう、国への補助申請作業を行っていたが、廃棄物処理施設災害復旧費補助金は、被災した現地に、全く同じ施設を建設した場合に補助事業で採択されるというもので、他の場所に建設することは補助要件に該当しないとの見解であった。

 町は現地に施設を再建した場合、また同じ被害が発生する可能性があることや、砂防堰堤が施設跡地に建設されること等、現地再建が不可能である理由を環境省と協議したが、過去に現地に再建しない場合に施設復旧を補助対象事業とした前例はないという理由で採択されなかった。

 施設復旧が補助事業であれば国庫補助率は80%となり、町にとっての財政支援は大きいものであったが、単独事業となり、支援額が減少した事はとても残念なことであった。

被災したリサイクルセンター坂・パッカー車   

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9.災害の経験を踏まえて


 豪雨災害を経験し、災害廃棄物処理業務や国庫補助の申請事務等、一連の作業を経験することができた事は自分にとっての大きな財産になった。

 その経験を生かして、令和元年東日本台風災害2か月後には、被災地である福島県に向かい、被災自治体で災害廃棄物処理事務の支援を行うこととなった。

 現地では、災害後、国や福島県が災害廃棄物処理事業補助金の事務の流れを説明していたようであるが、担当者は様々な対応に追われて補助金申請に必要な事務、公費解体、二次仮置場の管理体制整備など、時間の経過に合わせた業務内容や事務量が把握できておらず、支援に行った自治体の職員の中には、県の説明不足を口にする職員もいた。やはり、災害後は被災者支援などの他業務を早急にこなさなければならず、説明会等で災害廃棄物処理事業の内容を伝えるだけでは、処理業務にかかる全体の作業内容の把握は難しいものと思われる。そのような中で、自分のような小規模自治体職員が、事務の流れや当時の対応状況を話すことで、被災自治体職員の方々の理解が深まり、処理の道筋が少しでも見えたのではないかと感じた。

 支援に行った団体の規模は様々であったが、比較的、職員数の多い自治体においても、災害廃棄物の処理の流れや公費解体事務等、災害後に取り組むべき業務を詳細には理解できていないこともあった。自治体職員は人事異動により様々な行政事務を担当するが、災害復旧事務は災害が起こらないと体験することはできない。被災自治体に支援に行く場合、災害を経験した支援職員が被災地の事務担当者に的確なアドバイスを行い、災害を経験していない支援職員は共に実務を担当するなどして、災害復旧事務の経験値を上げる取り組みがあれば良いのではないかと思う。

 自分自身は、対等な立場である自治体職員が、支援に来てもらい、経験談や対応状況を話してもらったことが、大きな安心感(小規模自治体でもできる!)に繋がっていき、うまく事務が進んでいったように思う。自身の体験として、災害経験のある自治体職員がアドバイスする場合は、支援側と受援側の自治体が同規模であることが望ましいのではないかと感じたが、これは小規模自治体でも国や県の協力を得ながら、事業を完了することは必ずできる!と、伝えることで、被災自治体職員の心の負担軽減に繋がっていくであろうと思う。


令和元年東日本台風福島県への支援メンバー


福島県内自治体への支援の様子

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10.最後に


 浸災害発生直後から救命作業→防災→避難所運営→被災者支援→災害廃棄物処理と、様々な災害復旧対応を行ってきたが、一連の災害復旧業務のタイムラインを統合させ、復旧に向けた事務の流れを可視化することで、迅速かつ効率的な被災者支援に繋げることができるのではないかと思う。

 当プラットフォームでは、過去の災害の経験談や今後取り組むべき課題など、災害発生時に役立つ、とても貴重な情報が掲載されていると思う。このような情報を日頃から収集し、災害発生前に事前の対策を検討していれば、坂町での発災時の酷い状況がもっと早く改善されていたのではないかと感じた。

 防災部局では、災害の教訓を後世に伝えるべく慰霊碑の建立、災害誌の刊行等、様々な取り組みを行っているが、それらの取り組みと合わせた災害廃棄物処理の発信方法があればいいと思う。

 最後に、この災害廃棄物情報プラットフォームが沢山の方々(行政職員のみならず、一般の方々にも)の目に留まるようになればと思うとともに、このプラットフォームが激甚化・複合化する災害に対応した廃棄物処理の最良の教科書となるよう今後も継続して頂きたい。


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