将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
東日本大震災災害廃棄物処理の課題と巨大災害への備え(その2)
一般財団法人 日本環境衛生センター 宗 清生

 東日本大震災での処理に携わったご経験から、今後の巨大災害にどう備えていくべきかについて、前回に引き続き(一財)日本環境衛生センター西日本支局環境工学部 技術審議役の宗清生氏からのご寄稿、全3回シリーズ・その2をご紹介します。

3 災害廃棄物処理に求められる迅速性への対応


 東日本大震災の災害廃棄物処理に係る課題の一つに、処理の「迅速化」があげられます。災害廃棄物処理は、基本的に復旧・復興へ向けた最初のステップになりますので、迅速に実施することが求められます。また、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」に示された約3年の処理期間の中で、実際に処理ができる期間を可能な限り長く確保するために、事務処理(仮置場の確保、発注契約事務、施設建設など)も全般に亘って「迅速化」が求められました。


3.1 被災市町村への支援


 東日本大震災では、職員や庁舎も被災した市町村がありましたが、その中でも災害廃棄物処理はスピード感をもって行わなければなりません。また、被災市町村の中には自力では災害廃棄物処理事業を推進することが不可能なほど被害の大きい市町村や元々マンパワーの少ない小規模な市町村もあり、そのような市町村は県に地方自治法に基づく事務委託を行いました。県は日常業務で廃棄物処理の実務に係わることはありませんので、細かな点まではノウハウがなく、加えてスピードも求められましたので、困難な事業であったことは想像に難くないでしょう。結果としては処理期限の平成25年度末までに処理を完了することはできましたが、それを可能にしたのは県や被災市町村自らの努力が第一であったのはもちろんですが、多くの非被災市町村や学会、業界団体、そして国の応援という周辺からの支援の積み重ねも大きいものだったと思います。災害廃棄物の処理責任を有する市町村は、精神的にも物理的にも厳しい環境におかれたということ、そしてスピードが要求されたということは、今後の巨大災害でも同様に起こるであろうと推察されます。その中でより円滑で迅速な災害廃棄物処理を行うには、国、学会、業界団体等被災市町村周辺からの支援が益々必要になると考えられます。

 ここで、筆者が所属した環境省現地対策本部岩手県内支援チームとしての支援の内容についていくつかご紹介します。

 支援チームには県及び被災市町村からいろいろな問い合わせ、要望等がありました。中でも災害廃棄物処理事業費や廃棄物処理施設災害復旧費の国庫補助対象内外の判断に係る照会は多数寄せられ、緊急を要する事案もありました。補助金は事業実施の財政的な裏付けとなるものですので、当然ではありましょう。毎日、時には深夜まで本省と連絡・調整が行われ一定の期間内に回答されました。これを受けて被災市町村は、次のステップに歩を進めて行きました。

 支援チームは実務的な対応も行いました。広域処理受入を検討している市町村等からの破砕・選別施設や選別品の視察要請が殺到することが予想されましたので、その受付や案内をする部署を支援チーム内に新設したのです。予想通り多数の視察要請があり、結果として延べ5,701人もの受入対応を行いました。その他、次のような支援活動も行いました。


・被災市町村の巡回訪問
 災害廃棄物発生量、処理業者との契約状況、処理・処分の状況、直面している課題、国に対する要望などを調査して、本省に報告し必要な対応を行いました。(環境省ホ-ムページ 東日本大震災への対応 環境省職員・研究者・技術者チームの巡回訪問参照)

・仮置場での火災防止活動
 仮置場の災害廃棄物を高く(5m以上)積み上げると、自然発火による火災が発生しやすくなりますので、災害廃棄物の積み上げ高さや温度、一酸化炭素濃度などを測定して監視する必要があります。多くの仮置場は適正に管理されましたが、中には仮置場が狭いあるいは数が少ないために、山を高くせざるを得ないところもありました。そこで、国立環境研究所主任研究員の指導の下実態を調査し、危険個所においては技術的助言を行いました。


 災害廃棄物処理を迅速に進める上では、被災市町村周辺からの支援の強化が望まれるところですが、このように被災市町村と本省とのパイプ役となってその距離を近づけ、県や被災市町村に寄り添って活動する現地組織は将来に亘っても必要であり、一歩進んでよりきめ細かな対応ができる体制の整備が期待されるところです。


3.2 一次仮置場の確保


 一次仮置場の確保は災害廃棄物処理のスタートとなる作業であり、迅速且つ円滑に進めないと、災害廃棄物が被災現場から動かなくなります。東日本大震災では、仮置場の確保が円滑に進まず時間を要した例がありました。その原因としては、災害廃棄物量が膨大であったこと、それに見合う用地選定が事前にできていなかったこと、適地があっても仮設住宅や自衛隊の野営地等の用地が優先されたこと、住民への説明に時間を要したこと、地権者が複数いたりあるいは死亡していて手続きが円滑に進まなかったことなどがあげられます。

図2 仮置場確保面積 


 図2は、実際にどれくらいの広さの仮置場が確保されたかを示すグラフです。縦軸は災害廃棄物1t当たりの仮置場面積(平成23年8月時点)で、横軸は発生した災害廃棄物量の推計値です。

 災害廃棄物量(津波堆積物を含む)が少ない地域を除くとほぼ一定範囲にあることが分かります。それは、災害廃棄物量が少ない地域を除いて、必要最小限の仮置場を確保するのがやっとだったことを示すものです。

 一次仮置場としては、公有地が第一候補になりますが、実際に岩手県で一次仮置場になった公有地は、学校、公園、球場・グラウンド、港湾、その他でした。しかし、公有地だけでは一次仮置場を必要量確保できなかったのです。そこで、大型商用施設の駐車場など民有地がそれを補完する形で借り上げされました。

 将来の巨大災害に備える上では、このように公有地だけでは仮置場が不足する事態を想定して、民有地も仮置場の候補としてリストアップし、借用手続きが円滑にできるように準備しておくことが重要な事前作業であると言えます。確保面積は想定される災害廃棄物量をもとに設定しますが、仮設住宅用地、自衛隊野営地等にも配慮するとともに、想定外の災害にも備えて可能な限り広大な用地を確保しておくことが望まれます。


3.3 発注・契約事務


 災害廃棄物処理では、図1((その1)に掲載)に示した災害廃棄物処理の流れの各段階において、次のような発注・契約事務がありますので、できるだけ早期に短期間で実施することが求められます。


 ①一次仮置場の借上

 ②被災建築物の解体業務委託

 ③撤去・運搬作業の委託

 ④一次仮置場の管理委託

 ⑤二次仮置場における破砕・選別処理及び破砕・選別品運搬委託

 ⑥仮設施設の設置、運営委託

 ⑦破砕・選別品の運搬・処理・処分委託

 ⑧破砕・選別業務の施工監理委託

 ⑨被災自動車の処分、廃家電のリサイクル、有害物(アスベスト、PCB等)の処分等


 発注・契約事務手続きを「迅速化」する上では、随意契約方式を採用することは非常に有効になりますが、随意契約採用の自由度が県と市町村では異なっていました。市町村の方が随意契約を採用できる自由度が比較的高かったのです。そこで、契約事務は市町村、発注に係る設計積算事務を県といった役割分担が行なわれ、時間短縮につながった事例がありました。

 将来の災害に備える上では、このような役割分担も事前に検討しておくことが望まれます。また、一方では、事前に発注・契約事務に係る手順を記載したマニュアルの作成も望まれるところです。マニュアルには、発注仕様書を作成するのに必要な情報、発注仕様書の様式、予算を積算するのに必要な情報及び積算方法、活用できる補助金の情報、業者選定方法などを盛り込む必要があります。

 随意契約方式は「迅速化」の点で優れた面がありますが、「競争性の確保」の面では劣りますので、契約手続きの全部が随意契約であったわけではありません。しかし、全般的に「迅速化」が求められる災害廃棄物処理においては、今後、随意契約方式の採用幅拡大や採用条件(透明性、公正・公平性、品質・経済性等の確保方法、生活環境保全上の緊急性、地元企業の優先等の現地条件など)の検討を行うなど、発注・契約事務の迅速化に向けた取り組みが期待されます。


3.4 施設建設


 可燃性の災害廃棄物を既存の焼却施設だけでは目標とする処理期間内に処理できないと見込まれる場合には、仮設焼却炉を設置して処理することになります。仮設焼却炉を設置するには、図3に示すように用地を選定して、住民了解を得る手続きが必要ですし、廃棄物処理法等法律に則った手順を踏まなければなりません。通常、ごみ処理施設を建設するには、10年程度の期間をみて事務手続きを始めるのが一般的です。しかし、処理期間が限定される災害廃棄物処理においてはそのような時間的余裕はないので、猛スピードで手続きを進める必要に迫られることになります。

 東日本大震災では、用地選定や建設工事期間の短縮など住民やプラントメーカの協力もあり、岩手県では発災後概ね1年程度で仮設焼却炉を建設できました。他の地域では一部長期間を要した事例もありますが、最短では7ヶ月程度で建設した自治体(仙台市)もあります。

 如何にして建設に要する期間を短縮するかは、発災すると直ぐに直面する課題ですので、今後の法改正も踏まえ可能な限り短期間で建設できるよう事前に検討し、準備しておくことが望まれます。なお、建設期間の短縮は、その短縮幅が大きいほど稼働時間が長く確保でき、結果として施設規模を縮小できることから、コスト削減にも繋がります。

図3 仮設焼却炉設置フロー(例)(出典:災害廃棄物対策指針)