将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
平成30年7月豪雨における災害廃棄物処理支援を通じた都道府県の役割とあり方について
東京都環境局多摩環境事務所
廃棄物対策課長 荒井和誠

令和元年5月

目次


1.はじめに

2.災害廃棄物処理に係る経歴

3.これまでに培った災害廃棄物処理の経験

(1)東日本大震災の災害廃棄物処理支援
(2)大島町災害廃棄物処理事業

4.平成30年7月豪雨における広島県への災害廃棄物処理支援

(1)初動期の支援
 ①災害廃棄物の量及び処理費用の推計
 ②坂町緊急搬出支援(広島県による市町に対する技術的援助)
 ③災害廃棄物処理実行計画の策定支援

(2)応急対策期の支援
 ①事前準備
 ②派遣者研修会の開催
 ③支援概要及びその成果

5.支援活動を振り返って

6.都道府県における災害廃棄物対策の役割とあり方について

7.まとめ


1.はじめに


 近年、気候変動が影響していると考えられる集中豪雨や台風が多発し、土砂災害や河川の氾濫等が相次いでいる。また、首都直下地震等の大規模地震が何時起きてもおかしくない状況である。何時、どこで発生するかわからない災害に対して、いざ発生した時には、必ず災害廃棄物の処理を進めていかなければならない。そこで、国では、様々なレベルで重層的に、平時から廃棄物処理システムの強靭化を図り、災害時に、災害廃棄物を適正かつ迅速に処理できる社会の構築を進めているところである。

 本稿は、東京都の職員として、これまで培った災害廃棄物処理の経験と、その経験を生かした平成30年7月豪雨における広島県の災害廃棄物処理支援活動を振り返り、都道府県における災害廃棄物対策の役割やあり方を模索し、「人」に着目した災害廃棄物対策を中心に、将来、伝えていきたいことをまとめたものである。このアーカイブが、災害廃棄物を適正かつ迅速に処理することの一助になれば幸いである。


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2.災害廃棄物処理に係る経歴

(1)環境局一般廃棄物対策課災害廃棄物処理支援担当係長 H23.4~H26.3
東日本大震災の災害廃棄物処理支援を担当。H25.10から大島町災害廃棄物処理事業も担当。

(2)環境局一般廃棄物対策課災害廃棄物処理事業担当係長 H26.4~H27.3
大島町災害廃棄物処理事業を担当。この間、「東日本大震災に係る災害廃棄物処理業務総括検討委員会」(宮城県設置)に広域処理受入自治体の委員として就任。

(3)環境局一般廃棄物対策課課長代理(施設審査係長) H27.4~H28.3
一般廃棄物処理施設の許認可(多摩地域を除く。)、循環型社会推進交付金等の業務を担当。この間、「環境省大規模災害発生時における災害廃棄物対策検討会」人材育成ワーキンググループ委員に就任。

(4)環境局多摩環境事務所廃棄物対策課長 H30.4~現在(H31.4)
産業廃棄物処理業、多摩地域(八王子市を除く。)の廃棄物処理施設の許認可等を所掌。この間、平成30年7月豪雨に伴う広島県の災害廃棄物処理支援活動を管理監督。


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3.これまでに培った災害廃棄物処理の経験


(1)東日本大震災の災害廃棄物処理支援


 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、東北地方において膨大な量の災害廃棄物が発生した。その処理が、復旧・復興の大きな支障になっていたことから、東京都は被災地の早期復興のために、岩手県・宮城県の災害廃棄物処理を支援した。この支援で、平成23年11月から平成26年2月までに、約17万トンの災害廃棄物を、都内の民間処理施設や清掃工場で処理した。(図1:月別の災害廃棄物受入処理量推移表)


図1

図1 (クリックで画像を拡大)


 この支援で培った経験は、被災現場での仮置場の状況確認を行い、都内処理施設の受入基準を満足する選別破砕処理方法等について、被災地自治体職員と一緒に考案したことである。具体的には、都内の各処理施設において、災害廃棄物の種類、性状、形状及び処理方法等をまとめた受入基準(図2)を決めて、それを下に受入処理を実現した。次に、安全、安心な広域輸送システムとしての鉄道貨物輸送ネットワークを構築し、運用できたことである(図3)。さらに、この間、都内自治体と都内民間事業者で相互に連携して災害廃棄物処理に取り組み、再び災害が発生し、災害廃棄物の処理が必要になったときでも、迅速に処理ができる強固な信頼関係を構築できたことである。

図2 

図3 


 これらの経験は、「東京都災害廃棄物処理支援事業記録・・・東日本大震災に伴う支援活動・・・」(平成26年3月 東京都環境局)としてホームページに公開している。

東京都環境局のページ(外部リンク)
情報プラットフォームにも掲載されています



(2)大島町災害廃棄物処理事業


 平成25年10月26日未明に伊豆大島を襲った台風第26号に伴い発生した土砂災害により、大島町において、島内では処理できない約23万トンの災害廃棄物等(平時の一般廃棄物約18年分に相当)が発生した。これらの処理が、町の復旧・復興の前提となることから、大島町が島内処理を行い、東京都は島外処理と町に対する技術的援助を担った。(図4)悪臭や害虫等の生活環境保全上、速やかに撤去する必要がある、住宅に近接している仮置場において、平成25年12月17日から、この仮置場の災害廃棄物を緊急的に島外で処理することを皮切りに、平成26年10月16日まで都内清掃工場での受入処理、同年12月26日まで民間処理施設での受入処理を行い(図5)、平成26年度内までに、町におけるすべての災害廃棄物処理が完了した。

図4 

図5 


 この処理事業において、一次仮置場の確保と周辺環境の保全措置、災害廃棄物処理の業務委託、島嶼地域における災害廃棄物の船舶輸送ネットワークの構築(図6)、災害廃棄物の徹底したリサイクルの実現、都内自治体と民間事業者との連携を実践し、東日本大震災の処理支援の経験に加えて、処理事業の経験を積み、災害廃棄物処理のスキルが一段と高まった。とりわけ、廃棄物処理法の再委託禁止規定によって早期かつ柔軟な処理ができなかったことを課題として捉え、このことを国に働きかけたことが、平成27年度法改正で災害廃棄物処理に限り再委託が可能となったことにつながったのではないかと思われる。


図6

図6 


 これらの経験は、「大島町災害廃棄物処理事業記録・・・大島土砂災害により発生した災害廃棄物の処理経過報告・・・」(平成27年3月 大島町・東京都環境局・公益財団法人東京都環境公社)としてホームページに公開している。

東京都環境局のページ(外部リンク)
情報プラットフォームにも掲載されています


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4.平成30年7月豪雨における広島県への災害廃棄物処理支援


 広島県において、平成30年7月3日から8日までの6日間の降水量が、過去の7月の最大月間降水量に匹敵するほどの豪雨に見舞われ、7日6時時点で土砂災害警戒情報の基準値を大半の地域で超過し、さらに、7日19時40分に大雨特別警報が発令され、土砂災害と河川氾濫が県内各地で発生した。また、この災害によって、108名の尊い命が失われ、行方不明者6名という人的被害が生じた。さらに、住宅被害では、全壊1,029件、半壊2,888件、一部損壊・浸水被害等が約1万件に及んだ。この豪雨は、広島県だけでなく、岡山県、愛媛県でも大きな被害をもたらした。

 この災害によって、複数の県で大量の災害廃棄物が発生したことを踏まえ、土砂災害の災害廃棄物処理の経験等がある東京都に、7月17日に環境省及び広島県から、初動期の災害廃棄物処理支援の要請があった。この要請を踏まえて、第1陣の派遣部隊が7月21日に現地に到着し、初動期の支援活動を開始した。(図7)


図7

図7 



(1)初動期の支援


 初動期の支援活動は、7月21日から8月10日までの期間に、広島県庁に対して行ったものである。第1陣から第3陣の体制で、派遣人員は延べ14名である。各陣の体制には、東日本大震災の災害廃棄物処理支援、大島土砂災害による災害廃棄物処理事業、熊本地震による災害廃棄物処理支援の派遣者、東京都災害廃棄物処理計画の策定担当者等の災害廃棄物処理の経験者が若手職員と一緒にチームに加わるかたちで構築した。その第1陣が現地に到着したとき、環境省の支援チーム、D.Waste-Netのメンバー等が、すでに現地に入り、毎晩、災害廃棄物の発生状況等を共有する情報収集・連絡体制が構築されていた。そうした中で、筆者は第1陣のリーダーとして東日本大震災の災害廃棄物処理支援、大島土砂災害の災害廃棄物処理事業の経験を踏まえ、都道府県として市町村に対する災害廃棄物処理に係る技術的援助の一丁目1番地である市町別の災害廃棄物の推計作業と処理費の概算の算定等に執りかかった。同時に、片付けごみが集積されている仮置場の解消、そして、発生した災害廃棄物を計画的に処理するために必要な災害廃棄物処理実行計画の策定支援の3つを初動期の支援方針と定めた。こうした方針は、広島県の災害廃棄物処理の状況を鑑み、一つ先を先取した支援によって、適正かつ迅速な災害廃棄物処理に貢献したいと思ったからである。


①災害廃棄物の量及び処理費用の推計

 土砂災害に伴う災害廃棄物の量の算定は、大島土砂災害の経験を生かして、被災現場の土砂堆積状況(図8)や被災前後の航空写真等により、面積と堆積厚さ等で土砂量を算定し、土砂災害で流出した流木については、山林流出面積を求めて、大島土砂災害時に推計した原単位を乗じて算出した。また、廃家財等は住家被害棟数に、広島県災害廃棄物処理計画の原単位を乗じて算出した。さらに、土砂と流木、廃家財等で、これまでの過去災害で得られた災害廃棄物の処理単価を乗じて、処理費の概算を算定した。これらの作業を、東京都の派遣職員が担い、その算定結果を広島県に提供した。そして、その結果を下に、7月25日に広島県において災害廃棄物の発生推計量及び処理費推計の発表に繋がった。(図9:広島県発表資料[平成30年7月25日]より)

図8

図9 


 ここでのポイントは、経験者が指揮を執り、広島県の市町別での推計と処理費の概算を算定したことである。広島県災害廃棄物処理計画には、広島県が災害廃棄物推計量のデータを市町に情報提供することが規定されていたが、環境省の支援チーム等が県レベルでの災害廃棄物推計量を算定していることもあって、市町別の推計が手つかずの状態であった。災害廃棄物は一般廃棄物に位置づけられ、市町に処理責任があり、当然、その処理に係る予算や人員等は市町が確保しなければならない。そうした中で、東京都としては、広島県を支援すべく、市町別の災害廃棄物の推計量を算定することとし、それを実行したのである。


②坂町緊急搬出支援(広島県による市町に対する技術的援助)

図10

 片付けごみは、被害の様相によって、出方が全く異なってくる。浸水被害の場合は、人的な被害は少なく、水が引いた翌日から片付けが始まるのに対して、土砂災害では、救助や捜索活動の終了後、片付け作業に入るので、そのタイミングで片付けごみが集積されていく。こうした見識は、平成27年9月の関東・東北豪雨に伴う茨城県常総市の浸水被害直後の片付けごみや大島土砂災害での災害廃棄物処理で目の当たりにしたことによって得られたものである。ちょうど、第1陣の派遣初日に、広島県三原市で浸水被害による片付けごみが廃校の校庭から緊急搬出され始めた。これを手配したのは、東日本大震災の際、災害廃棄物処理で活躍した環境省本省の職員(以下「本省職員」という。)である。その職員とは、東日本大震災を契機に、災害が発生するたびに連絡を密にしている。具体的には、本省職員から三原市の緊急搬出も7月末にはほぼ終了する見込みとの情報(図10)があり、他の市町で緊急搬出の必要の有無を確認された。そうした中で、避難所でもある坂町小屋裏小学校の校庭に片付けごみが大量に集積されており、この小学校がまさに避難所として利用されていると聞いた時、大島土砂災害の元町小学校で、集積されたものをすぐに撤去した記憶がよぎった。また、この時、広島県庁の会議で、茨城県常総市で災害廃棄物処理を担当していた職員(以下「常総市職員」という。)と出くわして、茨城県常総市でも同じことがあったことを広島県庁へ伝えていただいた。坂町役場で小屋裏小学校に集積されたものを、すぐにでも撤去する必要がある旨を坂町の職員に申し出たが、災害廃棄物処理だけでなく普段のごみ処理の対応もあり、そこまで手が回らない状況で、広島県に技術的な援助が求められた。


図11 

 坂町の職員からの要請を受け、本省職員に、すぐにでも坂町の災害廃棄物を緊急搬出したい旨を伝え、関係者を直ちに坂町役場に招集して、開始日を決めた。この緊急搬出で利用するコンテナは、船舶用20ftコンテナなので、小屋裏小学校の校庭に車両が入らないため、名古屋市等の収集運搬支援の力を借りて、北新地運動公園まで運び出して集積し、そこでコンテナに詰め替えて緊急搬出を開始した(図11)。北新地運動公園仮置場での緊急搬出や小屋裏小学校の近くの路上に集積された災害廃棄物の搬出を現地で仕切るメンバーとして、第3陣には、東日本大震災や大島土砂災害で現地搬出管理を担っていた東京都環境公社の職員も災害廃棄物処理支援に加わった。

 ここでのポイントは、なんといっても決断力の速さと災害廃棄物のロジスティクスを構築することである。なぜならば、片付けごみが搬出されずに放置される期間が長引けば、災害廃棄物の集積場所からの悪臭や害虫の発生など、周辺住民に、生活環境保全上、支障が生じることが明らかである。このケースでは、関係者一丸となって、各人の役割を果たし、協力し合うことによって、緊急搬出が実現できたものと考えている。


③災害廃棄物処理実行計画の策定支援

図12 

 次に、東京都が大島土砂災害の経験を生かした支援によって、広島県が災害廃棄物処理基本方針を8月8日に発表できたことである(図12)。この方針は、市町の災害廃棄物処理実行計画の策定に必要な事項として、基本的な考え方、処理期間、処理主体、処理方法等をまとめたものである。また、処理実行計画の策定にあたり、東日本大震災の災害廃棄物処理支援のときに、岩手県山田町で災害廃棄物処理に関係するコンサルタント会社の担当者として会い、平成27年度の環境省検討会でも一緒だった者が、平成29年度に広島県災害廃棄物処理計画の策定を受託したコンサルタント会社の担当者ということを知り、広島県を通じて、至急、協力してもらうように話を進めた。

 一方で、処理基本方針の策定にあたり、環境省の災害廃棄物処理事業(国庫補助金対象額)の範囲について、土砂、流木、廃家財等の区分けが明確にならず、国土交通省の堆積土砂除去事業とのすみわけが問題になっていた。環境省の事業では諸経費が原則認められず、国交省の事業では対象となるため、災害廃棄物の処理を国交省事業でできないかと考える市町が現れたのである。当然、国交省事業では災害廃棄物の処理費を算定することはできないが、流木に関しては、災害復旧工事に伴って発生する産業廃棄物として取り扱って、処理できないかを模索していた。こうした混乱の中で、広島県庁で災害廃棄物処理事業の範囲が定まらず、災害廃棄物処理実行計画の策定に着手できない状況に陥ってしまった。このような状況を、本省職員に相談したところ、環境省東北地方環境事務所から東日本大震災の時にも宮城県内の市役所で災害廃棄物処理を担当した職員が広島県庁に派遣され、県内市町に対する災害廃棄物処理事業の対象範囲を明確にしていくことになった。さらに、これから策定する処理実行計画が、今後、災害報告書の作成及び災害査定の根拠となるものとして位置づけられるものであることを、常総市職員から、当時の災害査定での経験をもとに県内市町向けに講演してもらう機会をもてたことは、認識を深めることに繋がった。




(2)応急対策期の支援


 初動期の支援後、処理実行計画が策定されて、応急対策期に入り、広島県庁からの地方自治法の事務委託や仮置場の運営方法などの相談に対応していたところ、9月25日に環境省から広島県に災害報告書の提出についての通知があった。これを受けて広島県庁は、県下18市町に提出を促したところ、各市町で災害報告書の作成に関して温度差があることが判明した。この状況について、広島県庁から東京都へ相談があり、9月27日に大島土砂災害で災害報告書を作成した経験を生かした支援を求められた。なお、この支援要請は、災害報告書の作成が必要な18市町のうち、政令指定都市、中核市を除く5市町(竹原市、三原市、海田町、熊野町及び坂町)である(図13)。

図13

図13 


①事前準備

図14

図15

図16

図17 

 5市町の災害報告書の作成支援要請を受けて、現状の作成状況と事前調整のために、現地確認を行うとともに、都内では、災害が発生した時、災害報告書を作成するのは区市町村でもあるので、その区市町村に対して5市町への職員派遣要請を同時に進めた。

 事前調整の現地確認では、災害廃棄物処理に係る仮置場での処理状況の確認と区市町村職員の派遣目的及び支援業務内容を確認することを目的としていた。しかし、一部の仮置場では、8月中旬から放置されている状態にあることが判明した(図14)。これは、災害廃棄物処理が滞っていることを意味していて、行き先を失った災害廃棄物が災害当時のままに集積され、周辺に民家等がないので、なおざりにされていたと考えられる。こうした現場状況に加えて、5市町での打合せでは、災害報告書の作成が進んでいる市町でも着手した段階に過ぎず、これから本格的な作業が必要になることが明らかであった。そこで、事前調整に赴いた筆者が、5市町に派遣する区市町村職員には、災害報告書の叩き台の作成を目標として定め、災害報告書の作成に関する実務研修を開催することを決めたのである。


②派遣者研修会の開催

 派遣者研修では、まず現場感覚を研ぎ澄ますために、常総市職員から平成27年9月関東・東北豪雨に伴う茨城県常総市災害廃棄物処理に係る災害報告書の作成及び現地調査(災害査定)の経験についての講演を行った(図15)。次に、東京都災害廃棄物処理計画に位置付けられている災害廃棄物対策としての国庫補助事務に係る支援策、広島県庁から委託を受けたコンサルタントから広島県災害廃棄物処理実行計画の概要説明、事前調整で情報を入手した派遣先の5市町の状況を説明した。さらに、大島町災害廃棄物処理にかかる災害報告書を作成した経験を、唯一有する筆者自ら講師となり、専門研修として災害報告書の作成実務を教示した。この専門研修において、5市町へ派遣される受講者の区市町職員に、派遣されたらすぐに執りかかること、災害報告書の叩き台を作成するために項目を整理して、その項目を埋めることが派遣期間終了時の到達点であることを示したのである。


③支援概要及びその成果

 災害報告書の作成支援は、10月17日から24日までの8日間、東京都職員延べ3人が広島県庁へ派遣され、区市町の職員延べ14人が5市町に派遣された。また、5市町への派遣者は災害派遣日報を作成し、広島県庁に派遣された東京都職員に提出することで、各市町の災害報告書策定状況の進捗管理が行われた。なお、土曜日等の休日も出勤して対応した派遣者もいた。さらに、災害報告書の作成支援だけなく、その報告書を下に、環境省職員と広島県庁の職員で、予備査定を実施(図16)し、それに同席する形で経験を積んだ。ただし、実際の査定は、5市町で対応しなければならないので、都内区市町派遣職員で災害報告書の作成を進めているが、予備査定では5市町の職員が中心となって対応することとなった。これらの成果として、本査定の結果、政令市を除く他の市町と比べて0.7%程度査定率が向上したと思われ、これを金額に換算すると約5千万円である。

 こうした派遣経験を下に、平成31年2月12日に、東京都が開催する廃棄物行政講習会で、派遣された職員が講師となって、都内区市町村に情報を共有した。特に、都内では首都直下地震に備え、平時から区市町村職員が準備するべきことなどを中心に講演を実施した(図17)。この中では、被災した時に市町の状況として、一部の部署だけに業務のしわ寄せがいくこと、業務多忙やPTSDで戦線離脱する職員がいたこと等、実体験したことを都内区市町村の職員にも共有し、いざという時のために、平時から準備することの重要性を力説していた。



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5.支援活動を振り返って


 災害発生の2週間後に行った初動期の災害廃棄物処理支援、約3か月後の応急対策期における災害報告書の作成支援をとおして、一番過酷な時期でもある初動期に対応すべき事項は、平時から策定が必要な災害廃棄物処理計画に、具体的な行動としてまとめておくことが、改めて重要なのだと痛感した(図18:大島土砂災害時の処理事業フロー)。


図18

図18 


 災害は何時、どこで、どのような規模で発生するかは、誰にもわからない。そのことを踏まえれば、処理計画に、最低限、体制整備の方法だけでも位置づけることが必須である。また、今回の初動期の支援にあたり、様々な場所で災害廃棄物処理を経験した方々と再会したように、やはり経験者を上手く活用すれば、災害廃棄物処理を円滑に進めることが可能になる。被災自治体では、今、目の前のことに没頭してしまって、後々手遅れになることもある。その点、災害廃棄物処理を経験した者が加われば、次に何が起こるのか、何が必要になるかを知っていて、さらにその先、1か月後の業務を見据えて、先手を打つことで、災害廃棄物処理を止まることなく流れるように進めることができるに違いない。初動期においては、災害廃棄物処理実行計画の策定がマイルストーンである。それ以降は、その実行計画に沿って災害廃棄物処理を進めていくことになる。初動期の混乱している中で、災害廃棄物の発生状況、緊急対応での処理、処理に必要なリソース等を調査し、処理の流れを止めずに、実行計画を考案していくことは非常に大変なことである。災害廃棄物処理実行計画は区市町村が策定し、その計画をとりまとめ、地方自治法に基づく事務委託との兼ね合いをもとに、都道府県の実行計画ができるものである。ただし、区市町村での処理実行計画の策定にあたっては、①対象となる災害に対して、処理の基本的な考え方として、安全第一に、スピードと経済性をバランスさせること、②処理期間の設定として、地方自治法に基づく事務委託等の処理主体の考え方を踏まえ、各主体の仮置場の解消時期と処理全体の期限を示すこと、そして、③災害廃棄物の種類ごとの具体的な処理方法等を盛り込んだ処理方針を、都道府県が区市町村の災害廃棄物処理実行計画の作成に先立って示すことが肝要だ。

 次に、応急対策期の災害報告書作成支援については、都内区市町村と連携して、初めてとなる支援の形態を執った。災害報告書を作成するためには、処理実行計画を把握するとともに、これまでの処理にかかった経費の算定、処理委託契約書、支払伝票、履行確認等の資料をまとめ、今後、必要になる経費を災害廃棄物処理実行計画に基づき算定しなければならない。この作業は、災害廃棄物処理全体を俯瞰し、そして、その個別事業まで熟知することが求められる。この経験は、いざ災害が発生し、災害廃棄物処理を進めることになれば、非常に意義のあるものだったと考えられる。また、この支援においては、広島県庁に東京都職員を派遣し、広島県内5市町に都内区市町の職員を派遣したことで、広島県の災害廃棄物処理を東京都と都内区市町が一緒になって取り組んだ実績となり、これまで以上に連携が深まったと感じられる。さらには、派遣された職員にとっても、この業務を通じて、被災した自治体の状況を肌身に感じながら、支援者としてではなく当事者として業務に携われたこと、また、事前調整の中で、今回、派遣する職員には報告書作成に邁進できる環境づくりで、その業務を専任で進められるよう他の業務を充てないように申し入れたので、短期間で業務を全うできたことは大きな意義があったのではないかと思われる。特に、事前に開催した派遣者研修では、丸一日かけて、取組姿勢と被災地が置かれている状況を伝えるとともに、派遣先でやるべきことを伝え、専門研修の中では、災害報告書のひな形を示して、どのように完成させていくものなのかを教示した。そして、派遣期間が終わるまでに、災害報告書のひな型に、仮の数量及び金額でも入れて叩き台を完成させることが使命だと厳命したことなど、今、振り返って思い返せば、厳しい研修を強いたものだと感じた。そして、それを乗り越えて、5市町で一定の成果があがったことは、都内区市町の職員の活躍の賜物である。また、その期間、派遣職員が欠ける中で、派遣元の職場を支えてくれた、都内区市町の協力と理解があってこそだと思っている。


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6.都道府県における災害廃棄物対策の役割とあり方について


 災害廃棄物は一般廃棄物に位置づけられ、区市町村に処理責任がある。また、都道府県は区市町村に対して、一般廃棄物の処理に係る責務が十分に果たされるように必要な技術的援助を与えることが廃棄物処理法に規定されている。広島県における災害廃棄物処理支援では、政令指定都市や中核市などの力のある市役所では、広島県からの技術的援助が少ない中でも、処理が進んでいるようであった。一方で、小規模な自治体では、目の前の業務に埋没し、日常のごみ処理で手一杯の中で、災害廃棄物処理まで手が回らず、広島県に助けを求めてきた。しかしながら、広島県としても災害廃棄物処理の経験は少なく、少数の職員の中で、どうにか回しているような状況を目の当たりにした。こうした経験を踏まえると、都道府県の役割は、小規模な自治体に対して、重点的に災害廃棄物処理を支援することが肝要で、政令指定都市や中核市などの自治体に対しては、いざ災害が発生しても、自らの力で災害廃棄物処理が完遂できる、平時からの備えを充実させるよう促すことが役割ではないかと考えられる。

図19

 さらに加えて、災害が発生した都道府県で、そういった災害廃棄物処理を経験した職員がいるとは限らないため、国レベルで、都道府県職員として区市町村に対して災害廃棄物処理に関する技術的援助を行った経験者をリストアップしておくなど、いざ災害が発生した時には、被災した都道府県から、経験者に派遣要請できる仕組みを構築した方が良い。また、都道府県レベルでは、区市町村で災害廃棄物処理を経験した者を把握しておくことが良いだろう。このように、災害廃棄物処理が必要になった時、重層的に人材が参集できるようするためにも、少なくとも国レベルでは都道府県職員の経験者との、都道府県レベルでは区市町村職員の経験者との定期的な勉強会などを開催して、顔の見える関係を構築しておくことが重要である。このように考えたのは、初動期の第1陣で派遣された時、残念ながら広島県職員に知り合いがいなかった中で、広島県庁にて、宮城県、茨城県常総市、国立環境研究所、コンサルタント会社の知り合いと再会し、また知り合いの知り合いでの繋がりをたどることで、支援活動を充実することができたからである。(図19:実務担当者の集合写真)このことによって、私自身、人的なネットワークが非常に重要なのだと再認識したのである。


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7.まとめ


 一度、大規模な災害が発生すると、大量の災害廃棄物が発生し、それを処理していかなければならない。何時どこで起きるかわからない災害に対して、災害廃棄物対策スキルを備えていくことが肝要であるのはもちろんのこと、そのためにも、都庁職員の育成はもとより、災害廃棄物処理の当事者である都内区市町村でリーダー的な存在が不可欠になる。そうした職員に、実際に災害廃棄物処理の現場を知る機会を与えるため、特に、初動期での対応は、経験者が能力を発揮することが求められ、そこで重要なのが、組織を越えたネットワークの構築である。また、応急対策期の支援において、都内区市町で14人が派遣されて災害廃棄物処理支援業務を経験した。この体験を東京都の区市町村向けの行政講習会での講演によって共有できたことも大きな成果である。今後も、国や他道府県からの依頼があれば、積極的に支援していきたいと考えている。

 一方で、都内において、災害廃棄物処理が困難な未曾有の災害に遭遇した時、国や他道府県に、甘んじて支援を求めていきたい。いずれも、災害は、何時どこで起きるかわからない、被災地では受援、そして被災を受けなかった時は支援、そのことを念頭に、災害廃棄物対策には、人が繋がること、すなわち「絆」が非常に重要なのではないかと私は考える。


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