将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし

~寄稿~
災害廃棄物処理の事業主体と役割分担
-阪神・淡路と東日本を比較して-
公益財団法人ひょうご環境創造協会 築谷尚嗣

 今回は、阪神・淡路大震災当時、兵庫県庁職員として災害廃棄物処理に活躍された貴重なご経験を基に、今後も発生し得る災害廃棄物の処理への備えについて、(公財)ひょうご環境創造協会 築谷理事長からご寄稿頂きました。

築谷尚嗣さんプロフィール

 昭和52年3月京都大学大学院工学研究科修了、昭和52年4月に兵庫県庁に入庁。平成7年の阪神・淡路大震災の際には、兵庫県環境整備課にて災害廃棄物処理事業に係る市町への助言・国庫補助事業の指導を行った経験を持つ。県庁内の要職を歴任した後、平成25年4月より公益財団法人ひょうご環境創造協会の副理事長に就任し、現在は同協会の理事長を務める。

1 はじめに


 平成27年1月、阪神・淡路大震災から20年を迎える。

 その災害廃棄物処理に携わり、東日本大震災の支援にも関わった者として、二つの大震災の災害廃棄物処理を比較して、大きな違いを感じるのは処理のスピードと再生利用率などである。最終的にかかった処理期間は、兵庫県、宮城県・岩手県とも概ね3年であるが、その過程には大きな違いが出ている(図1)。阪神・淡路では立ち上がりが早く、2年後の処理進捗率は98%であったが、東日本では60%である。この一番の理由は、東日本では津波による被害が大きく、津波堆積物の処理や自動車・船舶の移動・保管までの対応が必要となったことと思われるが、事業主体の違いも影響していると考える。そこで、事業主体と処理期間、再生利用率、関係者の役割分担等について述べる。

図1 処理の進捗率(東日本は宮城県・岩手県合計の進捗率) 
(クリックして画像を拡大することができます。)


2 事業主体と処理期間


 廃棄物処理法第22条は「国は、市町村に対し、災害その他の事由により特に必要となった廃棄物の処理を行うために要する費用の一部を補助することができる。」と規定しており、同法6条の2の一般廃棄物処理に係る市町村の処理責任と併せてみても、災害廃棄物処理事業の事業主体は市町村である。

 阪神・淡路では原則どおり、すべて市町が実施したが、東日本においては、宮城県、岩手県が「被害が甚大で、市町村自らが処理することが困難な場合には、地方自治法に基づく事務の委託により、県が災害廃棄物の処理を行う。」(平成23年3月28日宮城県「災害廃棄物処理の基本方針」)との方針が示された。しかし、事務委託には市町村議会、県議会の議決を要すること、受注者の決定に当たりプロポーザル方式が採用されたことなどにより準備段階で相当な時間を要し、県による処理が始まったのは、平成23年12月(宮城県亘理処理区)~平成24年9月(宮城県気仙沼処理区)となった。

 処理期間は、阪神・淡路では、計画段階で概ね2年とし、実際に2年後には98%まで処分が進み、仮置場のがれきの山は解消されていた。なお、被害の大きかった4市では概ね3年を要したが、これはマンションで解体か修繕か住民の間の意見調整に時間がかかるなど特段の事情があったものであり、事故繰越の手続きを行い1年延長して処理を行った。一方、東日本では、計画時点で概ね3年とし、宮城県、岩手県では計画どおり概ね3年で終了した。

 東日本では、処理対象物が、自動車・船舶や津波堆積物にまで及んだことやがれきが津波により流出したことなど、長期間を要する事情は多々あり、また、自治体の機能が崩壊している地域もあったため「県が処理実施」と判断されたが、処理の立ち上がりの速さを考えると原則どおり市町村実施の方が処理は早いと考える。

 また、市町村においては、県の受入体制が整わない中で解体等が進捗してくると発生した廃棄物の受入を行わざるを得ず、一次仮置場を確保し、市町村で処理先を確保できるものは、順次処理することとなった。その結果、宮城県では、市町村独自処理分576万トン、県受託処理分647万トンと同程度の量となった(処理をすべて県に委託したのは1町のみ)。

 「県が処理実施」の決定時は、兵庫県から県・市職員を派遣中であったが、事前に市町村への打診等がない中での決定であったこともあり、その時の市町村の反応は、「県に任せておけば良い」「県の動きが読めず、市の方針が決められない」といったものであり、これも遅れに繋がったのではないか。また、その時点で県と市町村の役割分担も不明確だったのではないかと思われる。

 今後の災害時への備えとして、事業主体は原則どおり市町村とするのが基本と考える。仮置場の設置や排出ルールの決定など、現地の事情に詳しい市町村が行うのが適切であり、また、処理のスピード感からしても、市町村とするのが適切であると考える。

3 再生利用率


 災害廃棄物の再生利用率は、阪神・淡路では38%であったのに対し、東日本では82%と非常に高くなった。

 その要因としては、阪神・淡路では大阪湾フェニックス処分場等の大規模な処分場があったのに対し、東日本では大規模な処分場が不足していたこと、建設リサイクル法の施行により木くずリサイクルの受け皿が増加していたこと、東日本では焼却灰を造粒固化・不溶化処理し土木資材としてリサイクルしたことなどがあげられる。

4 県・国等の役割分担


 事業主体は原則どおり市町村としたうえで、これを踏まえた県の役割としては、市町村の災害廃棄物処理計画の策定にあたっての助言・支援、補助事業を適切に実施できるよう市町村への助言・指導、廃棄物の自区域内処理が困難な場合の広域処理の調整、他府県で処理を行う場合の処理業者等の情報収集と提供、制度づくりに向けての国への働きかけなどがあげられる。

 阪神・淡路での制度づくりについては、①倒壊家屋の解体を国庫補助対象とすること、②事業系(中小事業者)の解体等も国庫補助対象とすること、③解体工事の諸経費計上を認めることなどの要望を県から行った。その結果、特例として、①②については1月28日(発災から12日目)に、③については2月28日に認められた(諸経費率15%)。非常に迅速な決定であり、国に感謝している。

 東日本での制度は、上記の①②③や自動車・船舶の取扱いは比較的早く決定されたようであるが、津波堆積物の処理を国庫補助対象とする通知は平成23年11月と時間がかかっている。

 また、国の役割としては、災害の特徴に対応した制度づくりと財政支援に尽きると考える。

 なお、速やかに処理を行うために、各府県において廃棄物処理事業を行っている公社・事業団等をもっと活用すれば良いと考える。阪神・淡路では、淡路の9町が同じ場所に搬入し、積み上がったごみの山をどう処理するかというケースで、9町協議のうえ共同して(財)兵庫県環境クリエイトセンターに委託した例があり、203,000㎥の処理を1年足らずで完了する速やかな処理に結びついた(仮置場の混合状態の災害廃棄物の分別、破砕、焼却、海面埋立を実施)。

 公社等が通常行っている処分場・焼却施設等での受入に加え、災害時の仮置場における分別や仮設炉での焼却なども公社で実施できる分野であり、処理のスピード化につながると考える。

5 今後の災害廃棄物処理への備え


 今後の備えとして、上述のほか大切と思われる点に触れておく。

(1)災害廃棄物処理計画の策定

 災害時への備えとして重要なことは、市町村が災害廃棄物処理計画を前もって策定しておくことである(兵庫県では41市町すべてで策定済み)。また、災害発生後には、その災害の特性に合わせ、適宜見直しを行い、対応することが必要である。

(2)仮置場の確保

 災害廃棄物処理に取り組むときにまず求められるのが、多量に発生した災害廃棄物を分別保管し、選別・破砕、焼却等を行う仮置場の確保である。できるだけ広い場所を前もって確保しておくことが望まれる。規模としては、廃棄物の積み上げ高さを平均5mとして、廃棄物占有面積の約2倍以上の面積の仮置場の確保が必要である。兵庫県では41市町中、21市町で約37haの仮置場候補地が確保されているが、さらに多くの市町での確保が望まれる。

6 おわりに


 南海トラフ大地震などが懸念される今、一層の災害廃棄物処理への備えが必要である。

参考資料


 本寄稿の元になった報告書「災害廃棄物処理に係る阪神・淡路大震災20年の検証」も併せてご覧ください。

>>(公財)ひょうご環境創造協会 築谷理事長からのご寄稿は以上になります。次回の掲載をお楽しみに!