研修事例報告

取組紹介
大阪府 堺市「平成29年度災害廃棄物処理担当者研修」
~ヒアリングから、他市町村の参考になる点をまとめました~

平成30年9月

1.はじめに


 堺市は人口83万人(平成30年4月現在)を有する政令指定都市であり、災害廃棄物に関する取り組みとしては、平成29年3月に災害廃棄物処理計画を策定しています。また、市民向けに災害時のごみの出し方をまとめた「災害廃棄物処理ハンドブック」を作成するなど、先進的な取り組みを行っています。

 これまでは、都道府県と地域ブロック協議会を中心に災害廃棄物についての研修が進められてきたこともあり、情報プラットフォームで取り上げてきた研修事例報告は都道府県が中心でした。堺市のように災害廃棄物の処理主体である市が自らの職員に対して行った研修の事例は大変少ないため、堺市の研修内容について、担当者へのヒアリング結果に基づき、市町村でワークショップ型研修を実施する上で参考になるポイントについてまとめました。


2.研修の概要


研修の目的および位置づけ


 研修の目的は、堺市災害廃棄物処理計画(以下、処理計画)に基づき、災害廃棄物処理の核となる人材を育成することです。本研修は、およそ3年間で、基礎研修→ステップアップ研修→養成講座といった段階を経てスキルアップが図れるように設計されており、今回はそのうちの基礎研修に該当します。初年度にあたる今回の基礎研修では、参加者に災害廃棄物処理の全体像を理解してもらうことや、災害時に課題を生まないために平時から準備出来ることはないかを参加者が当事者として考えることを目的としています。以下では、平成29年度に実施した基礎研修の内容について詳しく見ていきます。


研修スケジュール


 基礎研修の実施に先立って、研修参加者を対象に各人の災害廃棄物処理に対する問題意識を高めてもらうため、研修の3日前にオリエンテーションが開催されました。オリエンテーションでは、災害廃棄物処理への導入と処理計画の事前説明が行われました。

 基礎研修は二部構成となっており、第一部は講義形式、第二部はワークショップ形式で、同日の午前・午後にわたって開催されました。第一部の参加者は、環境局職員に加えてその他の庁内職員や災害協定を締結している組合など業務に関連する民間事業者等を含む65名であり、第二部の参加者は環境局職員と危機管理室職員合わせて25名でした。当日の研修スケジュールは表のとおりです。


第一部 平成30年2月9日(金)9:30~12:00 於:堺市役所本館地下1階 大会議室

9:30-9:40 開会
9:40-11:10 「平時から始める 平時とつながる 災害廃棄物対策」
京都大学大学院地球環境学堂 准教授 浅利美鈴
11:10-11:20 休憩
11:20-11:50 「近年の自然災害における災害廃棄物対策について」
環境省近畿地方環境事務所 災害廃棄物専門官 若林完明
11:50 閉会

第二部 平成30年2月9日(金)13:00~17:00 於:堺市役所本館地下1階 大会議室

13:00-13:05 開会
13:05-13:35 話題提供「東日本大震災における災害廃棄物処理の取り組みについて」
仙台市環境局廃棄物事業部事業ごみ減量化 指導担当課長 小和田圭作
13:35-13:45 休憩
13:45-14:00 ワークショップについての説明、アイスブレイク
14:00-14:45 ワーク1「災害業務の問題点の洗い出し」
14:45-15:05 中間発表
15:05-15:10 補足説明
15:10-15:20 休憩
15:20-16:20 ワーク2「平時に準備すべきことはなにか」
16:20-16:50 最終発表(プレゼンテーション)
16:50-17:00 講評
17:00 閉会

ワークショップの手法と成果


 大規模災害時は、災害対策本部内に環境対策部が設置されます。環境対策部は、総務班(総合調整担当、広報・渉外担当、計画担当)・災害がれき班(解体撤去担当、処理担当、事業者指導担当)・収集班(ごみ収集担当、し尿収集担当)・施設班(仮置場担当、処理施設担当)の4班で組織されることが処理計画に記載してあり、実際にこの組織体制(4班)のもとでワークショップが進められました。ただし、現状では各班の所管課が必ずしも明確化していなかったことから、参加者の所属とは関係なく人数が均等になるよう班分けされました。


<ワークショップの流れ>

<ワークショップの流れ>
クリックで画像を拡大)


 ワークショップの流れは上図のとおりです。以下で詳しく見ていきます。



ワーク1:災害業務問題点の洗い出し

 まず「総務班」「災害がれき班」「収集班」「施設班」に分かれ、40枚程度の業務カードから、各班に関係すると思われる業務カードを10枚程度選択して時系列に並べることから始まりました。


業務カードについて

業務カードは、災害廃棄物処理を進めるうえで実施する必要のある業務のまとまりを示したもので、全体で約40枚あります。本研修に関わったコンサルティング会社がこれまでのワークショップのノウハウを活かしつつ、処理計画を参考に作成したものです。ただし、処理計画に含まれていないような業務項目もあり、また各班が約10枚ずつ選べるようにしたため、業務カードの抽象度には多少ばらつきがあります。



 選択した業務カードを見て(たとえば「一次仮置場の設置」)、その業務を遂行するにあたって問題となりそうなことを、各自が水色の付箋に書き出していきました。その際、問題点をイメージしやすいよう、実際の災害現場や災害廃棄物の写真を思考のヒントにしました。その後、時間軸に沿って、一人一枚ずつ説明をしながら模造紙に付箋を貼っていき、新たな問題点が見つかれば、その都度書き足しました。最後に、中間発表に向けて、各班の結論やポイントを全員で整理しました。また同じ意見の集約、模造紙への書き込み、業務カードの貼り付け等を行いました。



中間発表

 各班で整理した意見について、5分程度を持ち時間として発表を行いました。それにより全体でワーク1の成果が共有されました。また中間発表の後に見落とし等があった場合には適宜補うことで、ワーク2に進むための準備を整えました。





ワーク2:平時に準備すべきことは何か

 ワーク1を踏まえて、業務遂行にあたっての問題点を解決し、業務を円滑に遂行するために平時に準備すべきことを、各自が黄色の付箋に書き出しました。ワーク1と同様に、一人一枚ずつ説明をしながら模造紙に付箋を貼っていき、新たな問題点が見つかれば、その都度書き足していきました。最終発表に向けて、各班で意見を整理し、環境局への提案事項としてまとめました。

 提案事項とは、優先的に準備すべきことを3点に絞り込んだうえで、①その問題点を生み出す背景、②その問題点を選択した理由、③平時に準備すべき具体的な物(事柄・人)をまとめたものです。総務班の提案事項のうち一つを例に挙げると以下のようになります。

総務班が平時に優先的に準備すべきこと:問い合わせ対応

①初動期に重要、問い合わせが多く対応しきれない可能性がある

②対応する人員不足が想定される

③コールセンターの設置(委託)または専用回線の設置



総務班の提案

総務班の提案
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最終発表

 最終発表は、各班が環境局・危機管理室の幹部職員に対してプレゼンテーションを行いました。持ち時間は中間発表と同じく5分程度です。各班の発表者は、事務局が発表直前に指名するという形を取ることで、参加者は最後まで緊張感を持って班での議論を活性化させることができました。また、幹部職員自身が災害廃棄物対策についての理解を深める良い機会にもなりました。





研修成果と課題の整理


 各班の最終発表の内容や研修で作成された成果物を分析した結果、大きく分けて2種類の課題が示唆されました。一つは、市民周知・啓発についてであり、具体的には①発災時のごみの分別方法が定まっていないこと、②仮置場の場所が定まっていないこと、③発災時における市民への周知方法が確立していないこと、が挙げられました。もう一つは、庁内他部局や関係団体との連携について、④建設部局等、災害廃棄物処理に関係する部局との庁内連携が不足していること、⑤関連部局との情報共有方法が確立していないこと、⑥関連団体との協定が不足していること、⑦協定を締結していても具体的な内容が定まっていないこと等があり、その他にも⑧有害物や危険物が発生する可能性のある場所やその量が把握できていないこと、といった課題が示されました。

 このような課題の体系的整理をふまえ、それぞれの課題に対する今後の対応策が以下の通り整理されました。まず、①③については、災害時のごみの分別方法や市民周知方法についてまとめた分別方法等に係るマニュアル整備が有効と考えられます。②については、現在仮置場候補地として選定している土地について、詳細な情報を個票としてまとめておくなどの取組を進めるとともに、可能な限り、避難場所との整理や庁内における使用確約を取り付けておく仮置場候補地情報の整備・明確化が対応します。④⑤については、災害時に連携が必要な庁内関連部局と意見交換等の検討を進める等の庁内関係部局との連携の強化、⑥⑦については、現時点で災害廃棄物に関する協定を締結できていない分野を整理し、関係団体等との協定締結に向けて検討を進め、また、既に締結している協定について、協定締結先との定期的なコミュニケーションを図り、必要に応じて協定内容の見直しを検討するとともに、具体的内容を定めていくような関係団体等との連携の強化が有効と整理されます。⑧については、有害・危険物が備蓄されている工場や、水産加工物を取り扱っている事業所等の場所とその保管量について、把握、整理を進める有害物・危険物対策が重要と考えられます。このように、現時点での災害廃棄物対策における課題と今後の対応策を明らかにすることができたのは、研修の大きな成果であると言えます。


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3.おわりに


 ワークショップの内容を中心に研修の紹介をしてきましたが、本研修の特長としては以下の3点が挙げられます。

(1)業務カードの開発と活用:文字を追うだけではなかなか頭に入ってこないような事も、写真があるとイメージが湧きやすく、またカード形式になっていることで頭の整理もしやすかった

(2)ワークショップのグループ編成:実際に処理計画で定めた組織体制に基づいて、ワークショップのグループ(4班)が編成されたことで、より具体的な動きを確認することができた

(3)庁内の関係者をうまく巻き込むこと:事前のオリエンテーション実施や、班構成メンバーの決定、幹部職員に向けてのプレゼンテーションの実施および発表者の人選等々、事務局が参加者の立場や人柄まで理解し、上手に関係者を巻き込みながら進めていった

 特に、(2)(3)については、市町村がワークショップ型研修を実施する上でのポイントとなりますので、ぜひ参考にして頂きたいと思います。

 最後に、本研修の実施概要や報告書が堺市のWebサイトに掲載されていますので、あわせてご参照ください。

 ・堺市災害廃棄物処理担当者研修 平成29年度研修実施概要
http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/gomi_recy/saigaihaikibutsu/saigaihaikibututaisakunotorikumi.html


>>本記事は以上になります。 画面top メニューに戻る