イベント

開催報告
東日本大震災からの10年ワークショップ
「災害廃棄物対策のふり返りと今後の展望」
国立研究開発法人 国立環境研究所
災害環境マネジメント戦略推進オフィス

令和3年4月

はじめに



事前配布チラシ
(クリックでpdfをご覧いただけます)

 2021年3月、東日本大震災から10年が経過しました。この間、災害廃棄物対策のための制度や体制は大きく進展した一方で、気候変動による豪雨災害等の頻発化・社会の脆弱化などにより、災害廃棄物問題を取り巻く状況は、変化してきています。
 このような背景から本ワークショップは、災害環境マネジメント戦略推進オフィス(以下、災害オフィス)が、この機を捉え、これまでに関わってくださった皆様と共に、東日本大震災以降の災害廃棄物対策についてふり返りを行いたいと考え企画したものです。様々な立場のパネリストを招き、この10年の災害廃棄物対策のあゆみと課題を把握し、さらに今後の展望について議論する場(パネルディスカッション)を設けました。
 本ワークショップは、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、Zoomウェビナーを使用したオンライン開催となりましたが、パネリスト等を含め120名を超える参加者が集まり、参加者からは多くの質問が寄せられる等、本テーマへの関心の高さがうかがえました。
 このページでは、当日の講演、パネル討論の概要と共に講演者の発表スライドを掲載し、本ワークショップの成果を共有します。



当日のオンライン画面の様子



講演:東日本大震災以降10年の振り返り


(国研)国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター長
大迫政浩氏
画像クリックで当日スライド(pdf)をご覧いただけます

 日本は自然災害の国であるが、東日本大震災は1000年に一度の大災害と言われている。歴史を紐解くと安政時代の自然災害の時に、日本は明治維新を成し遂げ近代国家へと発展した。このように日本は大きな自然災害を経験するごとに社会として変化し発展してきている。今、東日本大震災を契機に我々がどういう社会を作っていくのかということを問われているように思われる。自然災害史の中で、東日本大震災を捉え、そのあゆみを見ていくということも重要ではないかと思う。
 さて、この10年を総括すると、災害廃棄物対策に係る3つの大きな成果があったと思う。
 1点目は、災害規模に応じたシームレスな制度的対応である。廃棄物処理法の改正の中で、平時の備えから、また東日本大震災も教訓にしながら、円滑で迅速な対応が取れるような特例措置が整理された。中規模・大規模災害に対しては、地方自治法の中で都道府県の事務委託が可能に、また巨大災害においては国自身が災害廃棄物処理を代行できるという法改正が行われた。このように規模に応じたシームレスな対応が整備されてきた。災害廃棄物処理計画も順調に策定が進んでいるが、今後は策定だけではなく、実効性を上げることが大事である。
 2点目は、様々な関係主体の連携体制が確立したことである。2015年にD.Waste-Netが設立され、様々な関係機関、団体が初動・応急対応および復旧・復興対応時に支援していくということが常設化され、様々な支援貢献を行っている。また環境省においては、地域ブロックごとに地方環境事務所が音頭を取って、都道府県・市町村を構成する協議会を作って平時の備えや緊急時の連携支援などの活動が活発化してきている。国・都道府県・市町村の階層的な支援体制ができてきたというのも一つの大きな成果である。加えて、現在、人材バンク制度を設けて運用しつつある。また、民間との連携体制という意味では、国・都道府県・市町村レベルで協定により地域の産業廃棄物に関連する団体等との連携を進めているところであり、災害対応を通じて地域の関連の事業者とも信頼関係づくりを行いつつある。
 3点目は、災害廃棄物対策が環境政策の中で主流化したことである。近年、毎年のように地震・豪雨・台風災害が起こっている。これらの災害に対応していかねばならない中で、前述の災害廃棄物対策の制度的対応や連携体制づくりが進んできた。そして環境政策の中で大きな流れとなって位置づけられているという状況になった。現在進行中の循環基本計画では、7つの大きな政策の柱があるが、その一つに、災害廃棄物処理体制の構築が明記されており、重要な環境政策、資源循環・廃棄物管理の政策に位置付けられているということが理解できる。
 このように災害廃棄物対策の10年を振り返ると様々な発展、進捗があったと評価できる。一方で、今後に向けた課題としては、地域社会の強靭化、事前復興を含む社会システムのイノベーションが重要だと考えている。たとえば、空き家や勝手仮置場の問題があるが、これは災害が頻発化するのと同時に人口減少や高齢化など様々な社会の脆弱性が進んでいるということではないかと思う。こういった点でも、コミュニティの劣化によって対応が難しくなってきている状況だと思っている。
 これまで行政的な対応は進んできたわけだが、今後は一般市民へのアプローチが重要ではないかと考え、私たちもその研究を進めている。また、今後必要だと思っているのは災害時の対応力だけでなく、それを平時の廃棄物管理の能力の向上にもつなげるべきという点で、災害時と平時のシームレスな対応という形で今後は展開していくべきだと思っている。コミュニティ・社会の劣化に対しては、災害時対応と同時に社会の強靭化をはかるということは地域における社会課題の同時解決にもつながるという視点の中で進めるべきだと思っている。それがSDGs時代における重要な視点だと考えている。今後地域の主体性による地域力向上と各主体の相互連携を社会の強靭化につなげていくという形で災害オフィスも関係者の皆様のご協力を頂きながら努めていきたいと思っている。



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パネルディスカッション第1部


概要


 東日本大震災以来10年、災害廃棄物に関わる実務に携わってこられた6名のパネリストにこれまで災害廃棄物対策に取り組まれてきた内容について紹介して頂きながら、その振り返りと課題・展望についてお話頂いた。

コーディネーター:
国立環境研究所 客員研究員 高田光康氏



これまで災害廃棄物対策に取り組まれてきた内容について、各パネリストより発表



○処理主体である市町村の立場から

東松島市 建設部下水道課 経営係長
鈴木雄一氏
画像クリックで当日スライド(pdf)をご覧いただけます(以下、同)

 市町村職員として、災害廃棄物処理の現場や事務、窓口対応、最後の仮置場の復元まで大体全てのことについて対応した。東松島市の特徴的な取り組みの一つとして、分別の徹底がある。被災者自らが仮置場に持ってくる前段階で分別し、仮置場には分別した状態で品目ごとに搬入してもらうということにしていた。この方法は今ではある程度当たり前に認知されているが、当時は画期的な取り組みの一つとして注目された。分別を徹底すればリサイクルできる部分も増え、仮置場の中の分別の工程が少なくなれば作業の効率にもつながる。
 次に、災害廃棄物処理事業の委託先として、災害協定に基づき東松島市建設業協会に事業を全て委託した。契約は協会ではなく、会社単位で行った。このことが後々事業を進める上で大きな効果を生んだと考えている。災害廃棄物処理の対応業務は多岐にわたるが、発注者側の行政は業者ごとの得意分野というのは全て把握しきれていない状態であるので、協会に適切な業者に公平に業務を振り分けてもらうという形で進めた。結果的に業務の効率化が進んだ。
 このように、分別の徹底によってほとんどをリサイクルすることができ、建設業協会の協力により作業効率も向上し、大きな施設を作らないで作業工程を単純化したため多くの被災者を雇用することもできた。ここまで話すと、大成功したようなイメージが強いが、実際はうまくいかなかったことや、失敗したことの方が多かったように記憶している。当然このようなことを本市だけでできることではないので、当時から多くの方々に支援を頂いた。成功も失敗も様々な経験を次の世代にバトンタッチしていくということが、今必要になってきていると思う。



○被災した市町村へ、主に廃棄物の収集等の支援に赴かれるという立場から

(公社)全国都市清掃会議
総務部長
大川敏彰氏

 全国都市清掃会議は、廃棄物行政に対する課題解決を目的として組織された団体である。東日本大震災以降D.Waste-Netの一員として基礎自治体の協力を得て、被災自治体の災害廃棄物処理、特に収集運搬支援を行っている。スライド1枚目は、熊本地震の益城町の一次仮置場の本震当日の状況である。一般的に、地震の場合は余震などもあるので発災直後は災害廃棄物の排出圧力は低いと言われているが、仮置場の早期の設置が非常に重要である事と、仮置場の管理運営が大前提であると考えている。また混合状態の災害廃棄物の収集運搬支援に関しては、車4台(指揮をとる車・パッカー車・プレスパッカー車・平ボディ車)をセットで出動するケースがあるが、小規模な公園等ではこういった作業がうまく回らないという状態になる。熊本地震のケースは、都市部で災害が起きた時に想定される課題として参考になる事例ということで取り上げた。
 スライド2枚目は平成30年7月豪雨の倉敷市の勝手仮置場の状況である。水害の場合は自家用車が浸水する状況もあるので、仮置場が設置されたとしても持ち込みができないという状況になる。水害の場合は、生ごみだけでなく腐敗性の高い畳や布団も排出されるので、これらを優先的に収集しなければいけない。一方で平ボディ車を保有している自治体が少ないという課題もあるので、今後は車両を所有している民間事業者との連携も大きな課題になると考える。
 スライド3枚目は、令和元年台風被害を受けた長野県の勝手仮置場の状況である。ここまで見てきた地震、風水害では、結果的に残念ながら混合廃棄物(以下、混廃)が大量に排出されている状況がある。東松島市の鈴木氏がお話されたように、このような状況が起きないようにすることは非常に大事だが、残念ながら他の災害でもこういう状態は続いているので、過去の貴重な教訓が生かされていないのではないかと思っている。今後は広報戦略が非常に大事になると考えている。一方、被災エリアと被災していないエリアにおいて、後者のごみの収集品目を制限する等も必要になってくるのではと思っている。また、人材バンク制度の話もあったが、現場の状況が分かる人ができるだけ多く支援に行って頂ければと思っている。



○市町村等から災害廃棄物処理を受託する民業の立場から

(一社)日本災害対応システムズ 事務局長
仙台環境開発(株)経営企画部長
舟山重則氏

 私の災害廃棄物処理とのかかわりは、東日本大震災からである。東日本大震災直後に仙台市が設けた仙台市内の片付けごみ仮置場と2次仮置場の運営管理を仙台環境開発(株)が依頼され、そちらの業務を担当した。さらに当社が中心となり、同業者に声掛けし宮城県震災廃棄物処理共同企業体と震災廃棄物収集運搬企業体という組織を立ち上げ、ゼネコンが受託した宮城県内の仮置場の支援にあたった。これらの経験を踏まえて、熊本地震および平成30年7月豪雨において地元企業と共に仮置場の運営管理にあたった。
 災害廃棄物処理における廃棄物関連企業を中心とした民間の役割についてお話しする。1点目は、発災初動時に作業員、重機、車両を仮置場等に投入し現場を管理することであり、2点目は処理先の受け入れ条件に合わせて現場で分別を行うという事、3点目は自治体施設で処理できない廃棄物を処理するということ、さらにこれらに関連する運搬業務の4点が挙げられる。これら全てを安全・効率的に行うことが民間の役割である。大迫先生からの話にあったとおり、東日本大震災以降、特に災害廃棄物が注目されるようになり、民間でも様々な取り組みが行われている。各県の廃棄物団体では、自治体との災害協定が実効性のあるものになるように体制を整えつつある。また災害廃棄物を迅速に処理するために2016年に設立した日本災害対応システムズでは、質や量、時間等の制約によって被災地で処理できない廃棄物を広域処理してきた。過去の災害では、民間視点での記録が少なく現場ノウハウの蓄積が十分ではなかったという風に感じている。そのため現場の記録を残すことが大切であると考えている。



○東日本大震災当時、宮城県職員として、広域調整を行う県の立場から

国立環境研究所 客員研究員
阿部勝彦氏

 県職員として携わってきたが、災害廃棄物を直接的に担当したのは、東日本大震災直後の4月に一番被害の大きかった石巻保健所に赴任してから。そこで避難所や災害廃棄物処理の現地調整等を行った。その後、熊本震災の際の熊本県への支援や退職してからもNIESの客員研究員という立場で少しでも恩返しできたらということで現在に至っている。
 東日本大震災時にどういうことで困ったか、それは現在の枠組みの中でどのように検討・フォローされているかという事をお話しする。一番困ったのが情報収集であり、また通常はあり得ないような多様な業務で混乱した。当然、組織の枠を超えた連携が必要であったし、マンパワー不足、何よりも想定していなかった仮置場への対応、加えて出てきた災害廃棄物の確立した処理方法が無いという現状にぶち当たった。このような問題に対して、国によって平成27年の廃棄物処理法の改正で、地方公共団体、事業者その他の関係者の適切な役割分担、基本方針や指針を策定し、災害廃棄物処理計画を事前に検討して定めるという枠組みができたおかげで、こういった問題への対応が蓄積できてきた。その他、各種の応援協定の必要性が認識され、通常の枠を超えた連携体制やマンパワー不足、仮置場への対応等などへの応援が得られるようになった。
 処理方法などのノウハウの蓄積については、舟山氏が話されていたが、処理業者もこうした枠組みに参加して、実際に処理をした、又はされたことで得たノウハウが蓄積されたことにより、この点でも協力が得られるようになったということである。こうしたことから全体として法制度が整備され、最終的には、国が災害廃棄物の処理を代行することができる規定が盛り込まれる等、大迫センター長が話されていたようにシームレスな対応が可能となり、今話したことの事前検討やフォローする仕組みが整ってきたと感じている。



○D.Waste-Net等で被災地に技術支援に行った立場から

国立環境研究所
災害廃棄物対策専門員
宗 清生氏

 災害廃棄物との関わりは、東日本大震災の際、岩手県に環境省支援チームの一員として災害廃棄物処理の支援を行ったことが最初であった。当時、災害廃棄物処理に取り組む自治体の皆さんの現地の状況・課題を把握して岩手県・本省へお伝えして必要な支援につなげるといった活動をしていた。5年前より現在の災害オフィスに所属し、D.Waste-Netの一員として被災自治体の現地支援に関わっている。自治体主催の人材育成や各種活動に関わっている。現地視察研修などの活動も行ってきた。
 現地支援を行う中で、技術者、支援者の観点から考えている課題として、混廃の発生、住民集積場(勝手仮置場)の発生、また初動での発生量推計方法が確立できていないという点が挙げられる。これまでに講演等で皆さんにお伝えしてきたことだが、混廃などの問題の発生を防止する対策について3点ほど挙げたい。1点目は、予告広報ということで、発災したらすぐに仮置場をこれから開設するので、それまではごみを出さないでくださいということと、分別して保管してくださいということをすぐに予告広報するということである。2点目は、素早く十分な準備をして仮置場を開設してほしいということである。ただし、これが難しいため問題が起こっている現状があるので、3点目として、事前準備が重要であるということをお伝えしてきた。具体的には発災後仮置場開設に向けて民間事業者がすぐに動ける仕組み、仮置場に人がすぐに集まってくれる仕組みを平時に具体化しておくということが大事である。



○環境省の災害廃棄物対策室に長く務められた国の立場から

中間貯蔵・環境安全事業(株)中間貯蔵事業部 次長
小岩真之氏

 東日本大震災時は災害に関わっていなかったが、2013年からはずっと災害関連の業務に携わっていた。ターニングポイントとなった3つを紹介したい。まず、中部ブロックの広域連携計画の策定である。南海トラフの際に、中部地方環境事務所が機能しないことを前提に初動時には応援県順位が高い県が中心になるという計画案を作った。2019年の東日本台風では、被災した長野県に対して、この広域計画に基づいて富山県を中心に支援を行うといったことにつながった。
 次に、災害廃棄物対策室に着任してすぐに熊本地震が起こり災害対応をした。熊本地震をきっかけに、全国どこでも災害が起こる可能性があると痛感し、南海トラフや首都直下地震が懸念される地域だけではなく、全国の市町村で処理計画を策定してもらえるようにモデル事業を行う、全ての地方環境事務所に災害廃棄物専門官を配置する、全ての地方ブロックで広域連携ができるように行動計画を作る等に尽力した。
 最後は、第4次循環型社会形成推進基本計画の作成である。その中で災害廃棄物に関して将来目指すべき社会像を描くことになった。強靭な体制作りのためには、どこか一つの組織(たとえば国)に頼るというやり方では、そこが折れてしまうと全体が崩れてしまうことがあるので、重層的な体制を目指すべきである。一口に災害と言っても、市町村だけで対応できる小規模なものから、東日本大震災クラスまで様々である。東日本大震災クラスでも、被災地全てが壊滅するわけではなく、震源から離れれば市町村だけで対応可能な被害にとどまるという地域もある。このため、市町村・都道府県・地域ブロック・全国という各レベルで自ら率先して努力を継続し、災害時には自ら対応できることを目指すと共に、いざという時には躊躇なく支援要請をする、あるいは要請を待つことなく支援するという重層的な体制をつくることを目指すべきだという将来像を描いた。
 この間、災害対応に奔走してきたが、災害が起きる度に平時にもっと準備をしておけばよかったと思うこともあったが、災害の合間に準備に心を砕きつつ向上するよう尽力してきた。



今後の災害廃棄物対策への課題と方向性について、各パネリストより発表


宗氏

 混廃の発生防止はすぐに取り組まなければならないと思っている。対策としては、予告広報に加えて住民に平時にごみの排出ルールをお知らせすることが重要である。一方で、東日本大震災のような津波災害など、混廃の発生を前提とすべき観点もある。分別が出来ない場合に対応できる方法は必然的にハード面(処理技術や処理設備等)からの検討となる。例えば、混廃を破砕・選別・溶融できる施設を建設し、毎年発生する災害時に利用する。これは東日本大震災時に仮設施設の投資効率が低いと言われていたことを補える方法であり、南海トラフ地震の発生時にもすぐに活用できるため大きな備えになると考えている。



舟山氏

 これまでもパネリストの方が、初動時の混廃について話題にしていたが、やはり初動時の現場対応が課題である。民間事業者は、迅速な現場体制の構築、廃棄物の適切な分別と搬出の各工程における安全確保においてプロであるべきだ。また、必要に応じて住民・自治体を巻き込んだ対応を展開するべきだと考える。この事例として、令和2年の人吉市での車両渋滞緩和のための方策であった単品搬入が挙げられる。災害廃棄物の性状から、産廃業者の活用も重要であるが、平時は市町村との接点があまりないため、今後は産廃業界の支援体制を認知してもらうことが重要である。大規模災害に対しては、多くの民間団体が力を合わせる必要があるため、実効性のある連携体制を作ることが課題である。
 最後に、災害時というのは日々想定外の連続であり、その際に必要なのは関係者の信頼関係である。お互いが相手を尊敬し、協力することができれば困難を乗り切ることができると信じている。



小岩氏

 環境省の災害廃棄物対策推進検討会、モデル事業、人材育成等は継続的に実施し練度を上げることが必要である。それに加えて、南海トラフや首都直下地震では想定被災地域から、有害廃棄物や腐敗しやすい廃棄物について、これまでの災害を振り返って準備することが重要。産業廃棄物の処理能力の活用について、すべての都道府県で高い水準となると良い。また多数の大企業が被災した場合、行政がどこまで関与するか検討しておくべきと考える。
 これまでは迅速な処理が優先だったが、毎年のように広域的な大水害が起こる場合に、全国一律で迅速な処理を求めるべきなのか、生活環境保全上支障のない災害廃棄物については、仮置場で数年にわたって保管し、少しずつ処理するなどして、その他の作業にリソースを割くといった判断も地域によってはありうるだろう。その他、火山災害等、頻度は少ないが、甚大な被害をもたらすリスクに対してどこまでコストをかけるかといったこと、新型コロナを契機に、将来のパンデミック発生の想定についてもどこまで対策を行う必要があるのか、が今後の課題として挙げられる。



鈴木氏

 東松島市は、平成28年の熊本地震の際、熊本県の西原村に支援に行った。これをきっかけにこの経験を伝えることの重要性を感じた。以降、職員向けに災害研修を行っている。座学が中心ではあるが、最終的にはグループ討論で仮置場の図面を作成・発表までを行う。最近では、仮置場の完成度が上がってきたため、今年度から成果物を用いて設置できるかどうか職員に試してもらった。この訓練では、大体2haの最終処分場の跡地を利用し軽トラック2台分の粗大ごみを災害廃棄物と見立てて、分別してもらった。結果としては、図上演習で作成した災害廃棄物仮置場はできなかった。要因としては、図上演習で作成した分別品目と実際に搬入される災害ごみとのイメージが大きく違うことが挙げられた。災害廃棄物処理事業は想定外の連続であるため、図上演習と併せて、このような設置訓練を継続していくことが重要であると思った。



大川氏

 人吉市内の大型災害ゴミ一掃大作戦という題で、ボランティアから人吉市役所、熊本県、内閣府、自衛隊、環境省、トラック協会が連携した事例としてご紹介したい。舟山氏からもご紹介があったところだが、各団体が一同に会して効率的な災害廃棄物処理を進める取組がはじまってきた。今後はソフト面での人的な連携、特にボランティアとの連携が重要になってくると思う。特に地元のボランティアは現地の情報に詳しいので、その点でも連携の取組が大事である。
 災害廃棄物処理は、自治体によって体力の差が大きく、担当者が1名というケースもある。少なくとも、災害廃棄物処理計画は国土強靭化基本計画に位置付けられているので、ソフト面で対応していくという課題を整理する良い時期にきたと考えている。一方で危惧しているのは、自治体の収集業務は委託化が進んでいるので、協力を要請できる自治体が減少している点である。経験豊富な現場職員の職員力の維持・確保という事も非常に重要な施策だと思っている。



阿部氏

 特に廃棄物を担当している行政の皆様に、災害廃棄物処理計画に加えて、事情が許せば災害廃棄物処理の応援に行って欲しいということをお願いしたい。それにより現場の実情を知り、自分の市町村や県の弱点を知ることが出来る。その弱点をどのようにカバーするかということを検討、フォローしておくことが重要であると考える。足りない部分は支援や協定で補えば良く、また職員力という話もあったが、そのレベルアップも必要である。
 最近は、災害が起きたとき、国が積極的に支援してくれるようになった。これはどうしたら良いか分からない被災自治体にとっては非常に有難いことだが、支援に入ったときに感じるのが支援に依存しがちな状況である。災害廃棄物処理計画を策定して終わりでは無く、有事の際、支援や派遣(応援)の能力を十分に活かす能力、体制が欠かせないと思う。また、支援側にも技術的助言、人手だけでは無く、支援先の廃棄物処理のニーズや進捗状況に合わせた国と県、県と市町村をつなぐ連絡調整役が必要と感じている。
 最後に、私どもの被災経験や支援時の経験から、災害廃棄物処理は、法制度や技術をうまく活用し創造的に乗り越えるプロセスの繰り返しであること、支援や業者に頼るだけでなく職員が一緒に考え乗り越えていく姿勢が大事であること、迅速な災害廃棄物処理は日ごろのコミュニケーションから始まるということの3点を特に自治体の皆様にお伝えして終わりにする。




現在の災害廃棄物対策の取組の中で、特に今後しっかりと行うべき点について


舟山氏

 災害廃棄物をハード面から支える民業の立場として、懸念されるのは、特に南海トラフのように広域的な災害が起きた場合、多方面から同時に様々なオーダーが来た際に、民間サイドが機能不全に陥るようなこと。もちろん民間サイドでは、連携体制についておよび能力の限界などは状況に応じて冷静に判断するべきであると思っている。民間の能力を十分に活用するには、阿部氏の話にもあったが、行政とのコミュニケーションを密にすること、行政の指揮命令系統に則った適切なマネジメントが重要であると考えている。




災害廃棄物対策に取り組む中で今後実現させたいことについて


鈴木氏

 災害廃棄物処理事業は、ごみを片付ける重要な仕事であるだけではなく、被災者に明日への希望を抱いてもらうこと、誇りを取り戻すような役割を担って、被災者からの期待に応える形で進めていくことが求められているのではないかと思っている。東日本大震災で、東松島市は分別を徹底しリサイクルを進めたが、その理由としては主に二つある。一つは、災害廃棄物はもともとごみでは無く、住民の思い出の品であるため、多くのものがリサイクルできれば倒壊した家や思い出の品も新しく生まれ変われるので、被災者は喪失感の中でも復興の礎となったと感じることができるのではないかということである。もう一つは、仮置場で被災者を雇用できれば、経済的支援はもちろんのこと被災者同士が休憩時間に他愛もない話をすることによって、新たな一歩を踏み出すきっかけとなったことである。実際に、仮置場を閉めるときも、皆の努力をたたえ泣きながら終えたという事もあった。
 今後被災される自治体においても、目の前のごみを片付けるのはもちろんのこと、こういった考えに基づき取り組んでもらえれば、災害廃棄物対策がより良くなると考えている。




第1部まとめ


 パネリストそれぞれの実体験に基づいた強い思いということで話を伺った。東日本大震災で得られた教訓を活かして、災害廃棄物処理を円滑に進めていくためには、国、自治体、支援団体、民間等が連携しつつそれぞれの役割を果たすことが大変重要であることが、今回の皆様のお話の中から伺い知ることができた。


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パネルディスカッション第2部


概要


 「地域のステークホルダーとの連携」というキーワードで、これまで地域と関係した活動・業務に携わってきた6名のパネリストと共に、地域との連携の在り方について議論を行った。

コーディネーター:
国立環境研究所 特別研究員 森朋子氏



①地域との連携が大事であると思う点、②これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたかについて、各パネリストより発表


かつらぎ町役場 住民福祉課
統括専門員兼生活環境係長
奥田幸宏氏
画像クリックで当日スライド(pdf)をご覧いただけます(以下、同)

○地域との連携が大事であると思う点

 いざ災害が発生してからでは、住民も行政も混乱の中にあり、住民生活や行政機関等の機能の回復を整えるには人材・時間的に相当困難を伴う。発災前から地域住民や関係機関に災害への対応として少しでも予備知識として周知し、地域との連携を密にすることが大切であると考える。またそのためには、情報共有も必要である。


○これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたか

 かつらぎ町では、過去に平成29年10月台風21号で紀ノ川が増水、内水氾濫し水害被害が発生し、近年は全国各地でも被害があり、近い将来の南海トラフ等から速やかに復旧・復興する必要性を感じている。本町でも風水害による被害が発生し、今後大規模災害が発生した場合、災害廃棄物処理の迅速な対応が可能であるか検証すべきタイミングであった。
 そこで、災害ごみの分別など、住民と行政の意識改革が必要と考え、このたび、環境省主催の災害廃棄物処理住民啓発モデル事業に応募した。この事業では、防災減災にもつながる事前の準備としてごみ搬出模擬訓練を行い、災害時におけるごみの出し方のパンフレットの作成に取り組んだ。ただし、事業実施にあたり、参加自治区の選出について区長会で希望を募る予定だったが、区長会がコロナ禍で困難となり、会長の提案により地元説明会を経て訓練を行う予定だったが、やはりコロナウィルスの影響で搬出模擬訓練は延期となった。今後改めて実施する予定である。


 


倉敷市 環境リサイクル局
リサイクル推進部 一般廃棄物対策課 課長代理
大瀧慎也氏

○地域との連携が大事であると思う点

 平成30年7月豪雨災害を経験し、行政として支援の範囲を広げていく取組の必要性を感じている。その支援の範囲を広げるための選択肢を拡大すること、他機関との連携によって重層的な支援を行うという2つの視点から地域との連携が必要であると感じている。


○これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたか

 倉敷市は令和元年度から、災害からの復興と防災・減災を意識した社会の構築を目指して、災害に強い地域づくりの検討を行っている。令和2年度には、SDGs未来都市に選定され、自治体SDGsモデル事業として、「SDGs災害廃棄物処理官民連携事業」を実施している。具体的には、平時からの取り組みとして、他機関と連携して災害廃棄物処理初動マニュアルを作成した。参加者それぞれが平時から役割を認識するとともに、災害発生時には直ちに連携を開始・人が集まる体制を作るようにした。さらに、住民への理解・周知を進めるために「災害廃棄物処理ハンドブック」を6か国語版で作成し公開した。また建築士会と連携し、経験に基づく「水害に備えて」の冊子作成や出前講座の実施などにも取り組んでいる。
 行政の廃棄物担当の第1の使命は目の前の廃棄物の撤去であるが、被災した住民からすると、廃棄物の撤去というのは再建への第1歩であり、地域の文化を取り戻す闘いが、そこから始まるという感覚である。そのことを念頭に、重層的な支援の一翼を担って多機関連携のために、地域の資源につながりを作って、そのつながりを地域の文化として蓄積できるような取組を目指していきたいと考えている。


 


認定NPO法人アクト川崎 副理事長
CCかわさき 代表
庄司佳子氏

○地域との連携が大事であると思う点

 これまでに川の活動もしており、地元地域の水害の歴史を調べる中で適応策への関心があった。その後、2015年の常総市の水害の状況を見て、いつ自分の地域に起こっても不思議ではないという危機感を持った。その後のワークショップに関わる中で多くの人に「自分事」として捉えてもらうことが大事だと思った。


○これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたか

 2017年に初めて災害ごみに関するワークショップを開催し、市民の理解がほとんど得られていないことに気がついた。その後、地域の環境や温暖化の活動を行っている人を30名程集め、2019年に2回連続のワークショップを開催した。ちょうどこの時、開催した川崎市でも台風の影響による内水氾濫があり、災害ごみがより身近な問題として関心を集め、ようやく実感が追い付いてきたように思った。続く2020年度には「気候変動の時代を生きのびる知恵」として、小学生とその保護者を対象にワークショップを開催した。感想としては、「災害ごみは身近で大事な問題だと気づいた」、「日ごろからの物の置き場所の配慮や地域のコミュニティの大切さ」などについて挙がった。災害ごみはマイナーな分野・問題と思っていたが、多くの親子の参加希望があって意識は変わってきていると感じた。
 川崎市地球温暖化防止活動推進センターでは、気候危機・減災市民連携会議を設置しており、そこへ災害ごみの視点も加えて活動してもらいたいと考えている。地域のレジリエンスを高めるために連携して取り組むことが大事だと感じている。


 


(株)タクマ 国際本部
国際部 2課 副主幹
戸﨑正裕氏

○地域との連携が大事であると思う点

 ごみ処理施設を運営する立場から、災害時の地域との連携が欠かせない部分は、昨今ごみ処理施設が災害時に地域の防災拠点としての役割を担うことが期待されている点である。一方で施設運営者だけでは災害時の対応(災害ごみの処理だけではなく、避難所の運営まですべて)は困難であり、自治体、市民の連携体制が円滑な避難所・施設運営に欠かせないと感じている。


○これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたか

 今治市クリーンセンターの防災の取組を紹介する。本取組は、ごみ処理施設が市の指定避難所になっている全国でも稀な事例である。中でも特に二つの取組を紹介したい。
 (1)ソフト面の取組について:災害時のごみ処理はもちろんのこと、避難所運営も実施できるようなBCP(事業継続計画)を確実に実行するために、今治市と地元NPOと支援協定を結び、災害時に協働できる体制を構築している。さらに平時から関係者と共同で避難所開設や炊き出し等の訓練も行っている。
 (2)フェーズフリーについて:フェーズフリーとは、防災の取組を災害時だけではなく、平常時においてもその価値を高めようとする考え方である。この思想を基に、本施設は防災の取組を市民の様々な活動や地域の課題解決につながるようにしている。例えば、大研修室は災害時には避難所に利用されるが、平常時は市民がスポーツやイベントを行えるようになっている。地域住民との交流を図ることもでき、市民には施設を身近に感じてもらえることで災害時に避難しやすい雰囲気を作り出せる。結果として地域の災害対応力の向上を図っている。


 


東北大学
災害科学国際研究所 准教授
佐藤翔輔氏

○地域との連携が大事であると思う点

 自身は、災害が起きた時の情報処理・過去現在の災害の経験の継承が専門である。大迫センター長の話にあったように、連携の重要性は、持続可能性が生まれるという事ではないかと思っている。


○これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたか

 気仙沼市での伝える(伝承)という活動の事例を紹介する。まち協(地域住民の中で伝える活動をしている人たち)・伝承館・東北大学の連携による活動だが、中学生が活動のキーになっている。具体的には、中学生たちが、地域住民から3.11の体験を聞き取り、それを基に伝承館で案内を行ったり、それらを整理して地域の方へ発表を行ったりする。また継続的な勉強会も行っている。
 これらの連携活動においては、バウンダリースパナ―(今回の事例では、中学校の校長、まち協の青年、伝承館の館長と、発表者である佐藤氏)の存在が大事である。バウンダリースパナ―は色々な状況を把握した上で、足で稼ぎ、汗をかいて、アイディアを生むことで皆を結びつける。連携を生むためには、このようなコーディネーターとしてのバウンダリースパナ―を各地域で育てること、見つけることが重要である。


 


国立環境研究所 主任研究員
多島 良氏

○地域との連携が大事であると思う点

 パネルディスカッション第1部で強調されてきたように、最初の排出が円滑に進むことにより初動対応が容易になり、それが全体の災害廃棄物処理をスムーズに進めることにつながる。逆に被災者自身が適切に対応するということは大切なものをうっかり捨ててしまうことを防ぐことにもつながり、色々な意味での復興が円滑に進むという意味で、連携していくことが大事であると考えている。


○これまで地域連携でどのような取り組みを行ってきたか

 バンコクにおける水路ごみの削減研究について紹介する。バンコク都のある区において、区役所と4つの自治会の役員メンバー、研究者の3者の協働で行った。まずは現地の水路ごみの状況を調査し、それを地図に落とし込み可視化した。地図を利用して、地域ごとにごみの排出や問題点・解決策について話し合いができるようなワークショップを2019年に開催した。
 その後、リサイクル品の収集キャンペーンが行われた。このキャンペーンは、区職員がボートに乗ってリサイクル品を収集し、それを地域のお寺に寄付するという取組であり、これは2019年のワークショップで提案されたアイディアの一つであった。区と地域住民とがごみに関してコミュニケーションを取りやすい環境を醸成できたことが非常に良かったと思う。このような取組を通じて平時のごみ処理が改善し、洪水リスクも削減、災害廃棄物対策にもつながる良い事例であると思う。



各取組で苦労した点や成果、取組のポイント、他パネリストへの意見等について


奥田氏

 モデル事業を進める上で苦労した点として、やはり新型コロナウィルスの影響で区長会自体が開催困難であったことが挙げられる。また、対象地域の選定や地元の調整、関係機関・実施時期の調整についても苦労した。成果としては、準備段階でパンフレットが作成できたことである。今後は延期された訓練を実施し住民からの意見を聞く中で、さらに広報活動を進めていきたい。



大瀧氏

 災害廃棄物処理においては個人の問題と、社会全体の課題という二つの側面があり、そこには少しギャップがある。特に社会に関する問題については、集合的な意思決定が避けて通れないため、連携を取るにしても普段から話合いを持たなければならない。そこには価値観の違いや利害の対立が必ずある。決断は困難を伴い、調整するのに苦慮した。成果としては、ハンドブックや初動マニュアルを制作することで、読者に対して気づきを与えることができたのではないかという点である。こういった取組は結果として人づくり・地域づくりにつながっていくと思う。平成30年7月豪雨からおよそ1年後に市民へヒアリングを行ったが、その経験から、答えを話し合うのではなく、答えを考え出す方法から一緒に考えると良いのではないかと思い、業者やボランティアの方々を集めて意見交換からはじめるという今回の取組につながった。



庄司氏

 災害廃棄物に対する市民の関心について、最初にアンテナに引っかかる人は少ないと思うが、一緒に学んだ人達は、意識が高まり、仲間へと発信して、広がりを見せていくのではと思う。ワークショップの参加者などは、それを機会に気づきを得たので、今後、災害時の広報などを受信した際にうまく対応できる下地が作られるのではないかと思うし、その意味でも、学びの場を作ることを継続していくべきだと思う。



戸﨑氏

 住民を巻き込む取組にあたっては、何らかのメリットが無いと、ただ災害時のために備えるというのではハードルが高い。災害の意識が高い時は良いが、その意識が薄れるにしたがって取組が消極的になってしまうのが実情でもある。参加者のコストの意識をいかにバリュー(価値)に変えていくかというのが、地域住民を巻き込む中で重要である。今治市クリーンセンターでは、毎年炊き出し訓練を行っているが、地域住民へ地場の食材を振る舞うなど、地域活性化のためのイベントにすることで、気軽に参加してもらえる。また、最近はキャンプが流行っているので、防災と掛け合わせた防災×キャンプが実施されているところもある。防災力を高めることだけにとらわれずに、経済的な価値や社会的な価値などと掛け合わせることで統合的に解決できる取組を考えることがフェーズフリーの醍醐味であり、有力なツールであると考える。



佐藤氏

 戸﨑氏の話にあった「バリュー」について、実は2つの「裏のバリュー」があるのではないかと考えている。ひとつは、「格好良い」というバリューである。事例でも紹介したが、中学生が沢山参加してくれる理由は、伝える活動が格好良く見えているからではないかと思う。もうひとつは、自己肯定感を高めるためにもマスコミに取り上げてもらう事である。このように、バリューの中には直接的なものもあるが、間接的なものもある。間接的なバリューもまた、取組を継続するためには重要であると考えている。



多島氏

 タイの事例でも、学生が中心になってコミュニティに入っていった。タイの大学では地域との協働プロジェクトを積極的に進めており、それが一つの評価基準になっている。今回の取組事例もまた学内表彰につながるとあって、学生たちのモチベーションとなった。その熱意が地域との連携を生む結果となったのかもしれない。(実際に本取組は、大賞を受賞した)
 今後は、廃棄物の観点から、普段からのリユースが重要であると考えている。退蔵物をリサイクルの環に乗せることで、災害時の片づけごみの量も減るし、平時に積極的なリユースを地域の取組として継続的に行うことで、一つの習慣として災害時の適切なごみ出しにつながるような気もする。そのような取組を設計・開発していけたらと思う。


第2部まとめ


 市民を巻き込んだ取り組みを災害対応のためだけに行うのは非常に大変だと思うが、このワークショップで紹介頂いた事例などを参考に、普段のごみ処理や市民の方との付き合いや、自治体職員の方のモチベーションアップ等、色々な波及効果を意識しながら取り組んでいただけると良いと思う。


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おわりに(総括)


大迫氏

 パネルディスカッション第1部では、東日本大震災以降、10年を振り返って、制度・システム・人材・技術面で、各プレイヤーの連携も含めて充実してきたという話題と、一方、細部で見ればまだまだ課題があるということが理解できた。第2部では、地域社会での連携という重要性を再認識し、これまでの10年、今後の10年を考えた時に、新しいフェーズに入ってきたということが認識できた。 
 このコロナ禍でも感じるのは、日本社会が硬直化してきていること、脆弱性が課題ではないかということである。災害時と平時のシームレスな社会の強靭化や、新たな価値が提供できるよう連携することで新しい地域社会を作っていければ良いと思う。
 この新しいフェーズに入っているということの問題意識を、今日このワークショップで共有できたことは大きな成果だったと思う。国立環境研究所は2021年度から、5年間の中長期計画に入る。災害廃棄物関連研究では、事前復興をキーワードとして考えており、災害時の取組だけでなく、それが平時の新しい価値づくりにもつながるような計画論・マネジメント論を研究していくことを考えている。災害オフィスとも連携させながら、社会づくりに向けて貢献できたらと考えている。


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参加者から寄せられた質問とその回答について


 パネルディスカッションでは、参加者からパネリストへ多くの質問が寄せられました。その一部の概要をご紹介いたします。

講演


質問:

 社会の強靭化や市民を巻き込むという視点からは、環境部局,廃棄物部局だけでは無理だと思う。国では、環境省や内閣府、国土交通省、研究機関では国立環境研究所、国総研、土木研究所、防災科研などの連携が必要ではないか。今後の具体的な連携について聞かせてほしい。


回答:国立環境研究所・大迫氏

 確かに、社会の強靭化を図っていくためには分野横断、またあらゆるステークホルダーを巻き込んだ取り組みが必要だと思う。また、国レベルからのトップダウンと、自治体、地域レベルからのボトムアップの両方のアプローチが必要であると考えている。具体的な連携についての検討はこれからであるが、国レベルから地域レベルまで社会の脆弱性の要因を構造化して、今後の連携の戦略とその中で当研究所が果たすべき役割を考えていきたい。



パネルディスカッション第1部


質問:

 10年前にうまくいったこと、うまくいかなったことがいろいろとあったと思うが、10年を経て、特にうまくいかなったことをどのように経験として活かそうとされているか教えてほしい。


回答:東松島市・鈴木氏

 失敗は大きいものから小さいものまで数が多いが、中でも、比較的課題解決が容易で、これは必ず改善しようとしているのは、被災家屋の解体に係る部分である。特に、解体中の苦情についてであるが、近隣住民から、解体に伴う騒音、振動、重機搬入等について、役所に苦情が入る事案が多かった。これは家屋の所有者が、解体実施日及び以前に近隣に説明していなかったため、地域に情報が伝わっていなかった。一方で、解体業者は、数日前に近隣住民に対して説明を実施していたため、地域住民が求めていたのは、業者からの説明ではなく、所有者からの説明であったと考えられる。都市部等の地域性や世代によって異なるかもしれないが、このことから、被災家屋の解体においても、所有者からの近隣への説明といった、地域のコミュニケーションが重要であると考えられる。


質問:

 さまざまな知見の蓄積の取り組みは素晴らしいと思うが、災害はさまざまに進化しており、3.11の知見が、これからの災害にもすべて活かせるとは限らないと思う。これまでの10年で蓄積されたノウハウをさまざまな様相に対して適用していく想像力が必要ではないか?そのような想像力はどのように醸成すればよいか助言頂きたい。


回答:日本災害対応システムズ・舟山氏

 東日本大震災当時、あのような未経験の災害廃棄物をどのように取り扱えばよいか想像するために阪神淡路等の資料を調べたが、ハード技術についてまとめたものを見つけられなかった。そこで、災害廃棄物を直接ハンドリングする視点で記録をまとめてきた。想像のきっかけになるよう、記録誌作成に際し写真や図を多用したが、実際に関与した現場だけなので、内容は限られている。過去の多くの災害において、各現場が、どのような考えで廃棄物をどう取り扱ったかを体系的に整理したものがあれば、未経験の災害に遭遇しても想像するヒントが得られると考える。また、それらの体系的に整理した知見を平時からの研修・訓練などに活かし、地道に人材育成を図っていくことも重要である。もちろん、想像力のベースには、廃棄物処理の基本的事項への学びが大切であることも再認識すべきと考えている。



パネルディスカッション第2部


質問:

 福祉防災や医療防災との連携が重要だと思う。COVID-19の様相からは、日本にそれほど余裕がなくなってきているように感じるが、今後はどのように連携すればよいか教えてほしい。


回答:倉敷市・大瀧氏

 災害廃棄物処理に関して、福祉分野ではまずは社会福祉協議会や保健師との連携が必要であると感じている。現在倉敷市では、官民連携事業において、両者との連携を図っており、特に保健師は発災直後から被災された方の訪問を開始するため、平時からのつながりが必要と考えている。また、保健師自身が発災後に有害廃棄物から自身の身を守るためにも、県社協における研修会を通じて災害廃棄物に関する知識の強化を図っている。


質問:

 防災拠点としての処理施設について素晴らしいと思った。一方で、このような施設がさまざまな地域に展開されたとき、日本の基礎自治体の約半分が被災する南海トラフ地震の場合、民間企業としてのBCPから優先順位をつけないといけないのではないか?


回答:株式会社タクマ・戸﨑氏

 南海トラフ巨大地震のように、影響が広範囲に及ぶ場合、ご指摘の通り、弊社が運営している施設だけでなく、弊社が納入し、自治体が運営している施設も含めて多数の施設が被害を受けることが予想される。その場合、各施設の被害に関する情報を弊社で集約したうえで、被害状況や緊急度を鑑み、対応施設、対応方法に優先事項を付け、順次復旧対応を行うことになると思う。


>>本記事は以上になります。 画面top メニューに戻る