寄稿

法改正の概要と期待すること
~環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課~

(掲載日:2015年9月17日)


 日頃より廃棄物・リサイクル行政の推進に多大なご支援とご協力をいただき、心より感謝申し上げます。


 わが国は、多くの自然災害が発生している国の一つであり、台風による風水害、土砂災害、地震災害、火山災害等、あらゆる自然の猛威にさらされています。特に地震・津波災害では、平成23年3月11日に発生した東日本大震災において甚大な被害が生じ、約3千万トンもの災害廃棄物も発生しました。この災害廃棄物の処理について、環境省は、被災県に支援チームを派遣するとともに、処理指針(マスタープラン)を策定し、処理の推進体制や目標期間を定めて処理を推進しました。制度面では、政省令の改正に加え、東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法(平成23年法律第99号)を制定し、これに基づく災害廃棄物の広域処理や国の代行処理も活用することで、平成26年3月末までに、岩手県や宮城県を含む12道県において処理が完了しています。現在も処理を行っている福島県の市町村及び汚染廃棄物対策地域内については、市町と連携し、特別措置法に基づく国の代行処理等によりできるだけ早期の処理完了を目指して全力で取り組んでいます。


 東日本大震災や近年の災害における経験により、事前の備えや、大規模災害時においても適正な処理を確保しつつ、円滑かつ迅速に処理を行うための措置が不十分であることが明らかとなりました。この状況を踏まえ、環境省では、今後発生が予測されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の大規模災害発生時に大量に発生する災害廃棄物について円滑かつ迅速な処理を実現し、災害廃棄物処理の停滞により復旧・復興が大幅に遅れる事態を防止するため、法制度の整備を行いました。具体的には、廃棄物処理法、廃棄物処理法律施行令(昭和46 年政令第300 号)及び施行規則(昭和46 年厚生省令第35号)の改正により、災害廃棄物処理に係る基本理念の明確化、非常災害時における廃棄物処理施設の新設又は活用に係る手続の簡素化、非常災害時における一般廃棄物の収集、運搬、処分等の委託の基準の緩和等を行うこととしました。また、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の改正により、大規模災害時における環境大臣による災害廃棄物の処理に関する指針の策定及び廃棄物処理の代行等の措置を講ずることとしました。

図1  (マーク付きの画像は拡大することができます。)


図2 


 本改正も踏まえ、環境省では、平時からの備えとして、全国及び地域ブロック単位において、関係機関の連携による災害廃棄物処理体制の構築等に向けた検討を進めています。さらに大規模災害時には、重層的な対応により円滑かつ迅速な処理を進めることとなります。具体的には、被災した事業者の主体的な処理も促しつつ、まずは、被災市町村における処理、次いで非被災市町村及び事務委託を受けた都道府県が主体となって行う処理など当該都道府県内での処理、さらには地域ブロックでの広域処理を実施し、それでも対応が困難な場合には、複数の地域ブロックにまたがる広域的な処理について、その地域の被災状況や処理能力に応じて適切に組み合わせ、全体としての円滑かつ迅速な処理を補完するという観点から国による代行処理を実施するということが基本となります。また、環境省では、大規模災害時における災害廃棄物対策検討会を設置して、災害廃棄物処理システムの強靭化に向けて総合的な検討を進めており、これまでに、東日本大震災における災害廃棄物処理プロセスや技術・システムのアーカイブ化を行うとともに、津波災害を考慮した災害廃棄物発生量の推計手法の確立を行いました。


 さらに、自治体等における災害廃棄物対策への支援を充実させるため、本年9月に災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)を発足しました。D.Waste-Netは、災害廃棄物のエキスパートとして有識者や技術者、業界団体等を環境大臣が任命するもので、国のリーダーシップの強化を図るとともに、環境省がとりまとめる最新の科学的・技術的知見等を活用して、自治体による災害廃棄物の発生量の推計や処理困難物対策の検討、災害廃棄物の積極的な再生利用のための基準の検討、自治体の処理計画策定の支援、研修会や防災訓練への講師派遣等、平時の備えから発災後の適正かつ円滑・迅速な災害廃棄物処理の支援まで、自治体等の災害廃棄物対策を支援することを目的としています。

図3 


 地域ブロック単位では、地方環境事務所が中心となり全国8か所に地域ブロック協議会あるいは連絡会を設置し、都道府県や主要な市町村、地域の民間事業者や有識者等の参加の下、都道府県の枠を超えた地域ブロック内の実効性のある災害廃棄物処理の枠組みの構築を進めています。協議会等では、大規模災害も想定した平時からの備えとして、災害廃棄物の発生量の想定や地域ブロックにおける廃棄物処理に係る計画や対策等の検討を行っており、本年度策定予定の大規模災害発生時における災害廃棄物対策行動指針を活用し、地域ブロックごとに行動計画を策定することとしています。

図4 


 廃棄物処理システムの強靭化という観点からは、災害時においても一般廃棄物の適正な処理を支える一般廃棄物処理施設に対して、循環型社会形成推進交付金の活用等により引き続き支援に努めてまいります。支援にあたっては、平成25年5月に閣議決定した「廃棄物処理施設整備計画」も踏まえ、地球温暖化対策の強化や、東日本大震災の教訓を踏まえた防災、減災対策の視点から、廃棄物処理施設の防災機能の強化や災害廃棄物の広域処理体制の確保等、災害に強い廃棄物処理システムの構築を進めてまいります。


 首都直下地震や南海トラフ巨大地震は今後30年の間に発生する可能性が高いと言われております。このような大規模な災害が発生した場合にも、衛生状態の悪化を極力防ぎ、住民の生活環境の保全に努めるため、災害で生じた廃棄物の適正な処理の確保に努めることが不可欠です。加えて、膨大に発生する災害廃棄物の処理の遅延が早期の復旧・復興の妨げとならないよう、災害廃棄物の円滑かつ迅速な処理を実現するため、関係機関との協力の下、復旧・復興政策やそれに基づく事業と十分協調しながら災害廃棄物の処理を進めることが重要です。災害時にこうした適正かつ円滑・迅速な処理を実現することができるよう、平時から関係機関との綿密な連携や事前の備えを確実に進めていくため、より一層尽力してまいります。引き続き、皆様のご理解とご協力を宜しくお願いいたします。