テーマ別参考資料集(現在進められている取組レポート)

鹿児島市災害廃棄物処理計画の策定について
鹿児島市環境局資源循環部
資源政策課 課長 小林拓史

令和元年7月

目次


1 はじめに

2 策定プロセス

3 策定に当たって留意した視点

4 本計画の特徴(ポイント)

(1)火山災害を含む4災害を想定

(2)市・市民・事業者の役割を規定

(3)災害廃棄物処理行動スケジュールの作成

(4)仮置場候補地の選定

(5)災害廃棄物処理計画マップ

5 おわりに(今後の課題等)


1.はじめに


 平成30年7月豪雨は、西日本を中心として全国的に広い範囲で記録的な大雨により、死者224名、住家全壊6,758棟等、甚大な被害をもたらしました。鹿児島市においても、桜島地区古里町で発生した土砂崩れにより、2名の尊い人命が失われ、平成5年8月の鹿児島豪雨以来はじめての犠牲者を伴う災害となりました。


古里町土砂崩れ現場

古里町土砂崩れ現場


 全国における近年の例をみても、23年の東日本大震災以後、広島土砂災害(26年)、熊本地震(28年)、九州北部豪雨災害(29年)、北海道胆振東部地震(30年)など、毎年のように大規模な自然災害が頻発しており、災害廃棄物の処理は、市町村にとって差し迫った大きな課題となっています。これらの被災地では、公益社団法人全国都市清掃会議等からの要請で駆けつけた多数の自治体が支援を行っており、本市も28年度以後は毎年、被災地における支援活動を展開しています。〔熊本市(28年)、朝倉市(29年)、倉敷市(30年)〕


朝倉市への災害支援

仮置場の様子(倉敷市)

倉敷市への災害支援

倉敷市への災害支援


 こうした背景のもと30年3月、国は熊本地震等から蓄積された最新の知見を踏まえ、地方公共団体が行う災害廃棄物処理計画の策定に資するための「災害廃棄物対策指針(以下、指針)」を改訂し、同月には鹿児島県も「鹿児島県災害廃棄物処理計画(以下、県計画)」を策定しました。

 本市では、同指針や被災地におけるこれまでの支援経験等を踏まえ、県計画や鹿児島市地域防災計画等と整合を図りつつ、災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理することを目的として、31年3月、「鹿児島市災害廃棄物処理計画(以下、計画)」を策定しました。計画の詳細等については本ホームページで参照いただけますので、本稿では、策定までのプロセスや策定に当たって留意した視点、本計画の特徴(ポイント)について、ご紹介します。


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2 策定プロセス


 本市では、計画の策定に当たり、所管部である資源循環部長以下、庁内の関係13課長で構成する検討会議※を設置し、計画案や仮置場候補地の選定に係る協議等を行うとともに、市民参画推進の観点からパブリックコメント等を行いました。策定までの主なプロセスは以下のとおりです。


平成30年 5月計画策定業務委託制限付一般競争入札、同業務委託契約
5月第1回庁内検討会議(計画案に係る協議、仮置場候補地の検討等)
11月第2回庁内検討会議(同上)
12月市議会環境文教委員会(パブリックコメント実施報告)
12月市清掃事業審議会(同上)
12月パブリックコメント(実施結果:26人から110件の意見あり)
平成31年 2月市議会環境文教委員会(パブリックコメント結果報告)
3月第3回庁内検討会議(計画案に係る協議)
3月市清掃事業審議会(パブリックコメント結果報告)
3月計画策定

※鹿児島市災害廃棄物処理計画策定庁内検討会議(構成メンバー)

(資源循環部長、資源政策課長、廃棄物指導課長、清掃事務所長、北部清掃工場長、南部清掃工場長、管財課長、危機管理課長、地域福祉課長、公園緑化課長、住宅課長、道路管理課長、道路維持課長、教育委員会施設課長)


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3 策定に当たって留意した視点


 計画の策定に当たっては、本市の地域特性や過去の被災地支援の経験等を反映した実効性のあるものとするため、主に以下5つの視点に留意して取り組みました。


主な視点 参照した計画等 工夫した点など
(1)基本的な考え方の整理
  • 国の指針や先行市の計画等
    ⇒本市の基本的な考え方を整理する際の参考とした。
  • 各市により、盛り込む内容や構成、ボリューム等が多種多様であったため、本市向けに選択、再構築等を行った。
(2)他計画との整合性
(県計画・市地域防災計画等)
  • 鹿児島市地域防災計画
    ⇒災害廃棄物処理に係る従来の基本的な考え方の確認、本計画策定に当たって見直すべき点の整理
  • 左計画で規定する市民等の責務の具体を本計画に盛込んだ。(第1章第2節)
  • 新たに整理した事項等について左計画へのフィードバックを行った。
  • 鹿児島県災害廃棄物処理計画
    ⇒処理方針や災害廃棄物発生量、処理フローの参照等
  • 県計画で想定する被害棟数(H26年被害予測調査)への時点修正
  • 県計画で想定されていない火山災害を想定災害に追加した。
(3)地域特性の反映
  • 活火山「桜島」を有する特性
    ⇒火山災害を想定災害に加える
  • 既往災害(平成5年鹿児島豪雨)の教訓
    ⇒仮置場候補地の事前選定の重要性等
  • 大正大噴火級の災害を想定した大量軽石降灰による倒壊家屋の推計
  • 過去災害の教訓から被災時に有効な仮置場候補地の複数選定、リスト化等を行った。
(4)被災地支援経験の活用
  • 九州北部豪雨、熊本地震、平成30年7月豪雨における各被災地への支援経験
    ⇒迅速な支援の在り方や被災時における応援市のマネジメント等を参考とした。
  • 受援、支援の仕組み(第2章第2節)
  • 仮置場の選定、開設についての考え方
  • 庁内外で共有できる災害廃棄物処理計画マップの作成等を行った。
(5)実効性の確保
  • 国の指針や先行市の計画等
    ⇒平時に整理しておくことで被災時に活用できる資料作成の参考とした。
  • 本文は長文を避け、項立てて簡潔に整理
  • 参照性向上のため目次の充実
  • チャートや図面等による資料作成など

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4 本計画の特徴(ポイント)


(1)火山災害を含む4災害を想定


 本市の大きな特徴の一つは、市街地から錦江湾を隔てた約4㎞先にそびえる活火山「桜島」です。季節や時間の経過とともに表情を変える雄大な景観は、本市のシンボルとなっています。



桜島(噴煙)


 一方で、死者35名、全壊家屋2,148戸等、甚大な被害をもたらした大正大噴火(大正3年)から100年以上が経過した現在、桜島にマグマを供給すると考えられている姶良カルデラでは、マグマの蓄積量が大正噴火前のレベルまで戻りつつあるとされています。

 本計画では、こうした本市の特性を踏まえ、大正噴火級の火山災害を含む4災害を想定災害としました。また地震災害については、最大想定となる鹿児島湾直下地震に加え、発生確率が最も高い、南海トラフ(西側ケース)等、3地震について発生量等の推計を行いました。各災害廃棄物の発生量や仮置場必要面積等は下表のとおりです。


【想定災害と災害廃棄物発生量等(推計)】
想定災害 理 由 災害廃棄物発生量(推計) 仮置場必要面積
地震災害 鹿児島湾直下地震 最大規模の被害が想定 181万トン 60ha
南海トラフ地震(西側) 最も発生確率が高い 70万トン 24ha
県西部直下地震 近隣の市来活断層起因 20万トン 7ha
津波災害 桜島海底噴火A 最大規模の被害が想定 2.6万トン 1ha
水  害 平成5年鹿児島豪雨級 既往の風水害から、左記と同規模を想定 9万トン 3ha
平成5年台風13号級 5万トン 2ha
火山災害 大正大噴火級 記録に残る最大規模 ※12万トン 4ha

※降灰、軽石等は含まず


(2)市・市民・事業者の役割を規定


 大規模災害の発生時に、一日も早い復旧・復興に向け、災害廃棄物の適正かつ円滑・迅速な処理を行うには、行政のみならず、市民・事業者と一体となった取組みが大変重要です。本計画では、地域防災計画で定める市民等の基本的な責務を基に、災害廃棄物処理の側面から平時及び大規模災害発生時における各々の役割を定めました。(以下、関係部分要約)


○市民の役割
 自らも防災対策の主体として、日頃から自主的に風水害等に備えるとともに、発災時には市が行う災害廃棄物処理対応への理解協力などに努める。


【平時の取り組み】

  • こまめにごみを出す。(ごみをため込まない)
  • 雨水貯留タンクの設置(断水時の水洗トイレ用等)
  • 簡易トイレの備蓄(家族人数の3日分が目安)

【大規模災害発生時】

  • 市が指定する場所への排出(被災後に広報する一次仮置場等)
  • 市が指定する分別ルールに沿った排出、同種のごみは、近い場所にまとめて集積、災害廃棄物に生ごみを混入しない、等

(3)災害廃棄物処理行動スケジュールの作成


 過去災害における被災市の行動事例等を参考として、本市が被災した際、災害廃棄物処理に当たる資源循環部5課の行動スケジュール(タイムライン)を作成しました。被災後の各時点において、担当各課が行動すべき内容確認や全体の進行管理等に用いることを想定しています。


【行動スケジュール表:抜粋】 (画像を拡大することができます。)



(4)仮置場候補地の選定


 本市では、平成5年鹿児島豪雨災害の教訓から、仮置場の事前選定や迅速な開設の重要性を踏まえ、下表のとおり184箇所の仮置場候補地を選定しました。なお、選定に係る基本的な考え方や苦慮した点、工夫した点等は表以下のとおりです。


①仮置場候補地の選定数等

用途等 選定数(面積) 主な場所
市民
仮置場
・市民等が自主的に搬入 ・ごみステーションや公共の空き地等(※)
一次
仮置場
・市及び市民等が搬入、分別集積
(市で監視員等を配置)
181箇所
(186ha)
・運動公園・街区公園
・学校グラウンド 等
二次
仮置場
・市が一次仮置場から搬入、選別、破砕等
(市で監視員等を配置)
3箇所
(18ha)
・横井埋立処分場
・桜島溶岩グラウンド
・錦江湾公園

※迅速な収集・運搬のため公道等にはみ出さないよう配慮すること。


②仮置場に係る基本的な考え方

○候補地の選定

  • 被災状況(災害の規模・種類、被災場所、災害廃棄物発生量等)に応じて、最適な場所を迅速に開設できるよう、国の指針で示された留意事項(第5章 3(3))等を参考に、法令等で選定できない場所等を除き、幅広く選定する。
  • 市有地を対象として候補地リストを作成することとし、避難所や応急仮設住宅、降灰の仮置場等、優先すべき他用途の候補地も、情報を整理・把握の上、候補地リストに登載する。

○仮置場の開設

  • 発災時には、候補地リスト作成時に整理した優先すべき他用途の利用(予定)状況等について、災害対策本部や関係機関等との間で確認・調整の上、最適な場所を開設する。
  • 必要に応じて、候補地リスト以外の国有地や県有地等についても協力を求める。

③選定等に当たって苦慮した点

○国の指針では、「仮置場候補地の選定に当たっては学校等に近接する場所を避ける」とされているが、以下の理由により、
 学校グラウンドも仮置場候補地リストに登載することとしました。

  • 災害廃棄物発生量に対応できる仮置場を検討する上で、学校グラウンドを除いて必要面積を確保する手段がないこと。
  • 平成30年7月豪雨で被災した倉敷市への支援経験から、被災地区内の学校自体が被災して開校の目途が立たない状況下で、学校グラウンドが仮置場として効果的に利用され、有効に機能していたこと など

④工夫した点

 仮置場候補地リストの作成に際しては、国の指針で示されるスクリーニング方法により抽出し、庁内検討会議において、当該候補地に想定される仮置場以外の用途(応急仮設住宅優先度A~C、指定避難所、指定緊急避難所等)まで整理したリストを別途作成しました。被災時は、同リストを基に他用途と重複が無いよう利用調整等を行うこととしています。


(5)災害廃棄物処理計画マップ


 被災地への支援経験や被災後の混乱時における円滑かつ迅速な対応のため、本市の一般廃棄物処理施設や仮置場候補地を始め、緊急輸送道路等を掲載したマップを作成しました。(市内全域版及び市域を14地区への分割版)

 被災時には、マップ上の被災地区、仮置場、処理施設等を緊急輸送道路等で結び、効果的な収集運搬ルートの作成等に用いることを想定しています。

 また、被災時には庁内外の関係部署や応援市等との連携を円滑にするためのツールとすることを想定しています。


(仮置場は有効面積毎に色分けしてあります。:5000㎡以下、15000㎡未満、15000㎡以上)




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5 おわりに(今後の課題等)


 環境省九州地方環境事務所が本年2月にとりまとめた「平成28年熊本地震における災害廃棄物処理を振り返って」によると、被災自治体へのヒアリング等から得られた教訓として、「発生した災害廃棄物を適正かつ円滑に収集や処理を行うためには、住民の協力が不可欠」であり、そのため各自治体は被災後、様々な手法を用いて広報を行ったとのことです。

 また、「平時において災害廃棄物の分別区分や排出方法等を広く周知していた市町村は少なく、発災後に対応を行ったケースがほとんどだった」とのことであり、反省点や今後の対応として、「住民への周知不足や平時から市民に対して分別ルール等の周知を行っておくこと」等が挙げられています。

 本市は、ようやく災害廃棄物処理計画を策定し終えたばかりですが、今後はこれらの教訓を活かし、平時における市民等への周知広報や町内会等への説明(参考:広報チラシ)等、計画の実効性向上に努めていく必要があるものと考えています。




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