テーマ別参考資料集(民間活用)

「災害廃棄物の処理処分における民間企業活用に大事な視点」web対談
~国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター
客員研究員 高田光康氏に聞く!~

令和2年7月

目次


はじめに

1.処理方法のバリエーション

・災害廃棄物と自治体の処理能力

・多量に発生する災害廃棄物の処理方法

・仮設処理施設による処理について

・広域処理について

・民間活用について

2.民間活用における注意点

・法令適合性

・委託業者選定手続きの正当性

・価格の妥当性

・技術的信頼性

3.自治体が行うべき事務

・一般廃棄物の処理責任

・災害等廃棄物処理事業費補助金の申請や査定対応

・地元調整

4.民間活用に関する平時の備え

・補足 産業廃棄物処理施設の事情あれこれ


はじめに


 自然災害が頻発し、その被害の規模も大きくなっています。災害に伴って多量に発生する災害廃棄物は、被災自治体の力だけでは処理しきれず、民間企業の処理能力に頼る事例が増えています。

 災害廃棄物は、廃棄物処理法において一般廃棄物と位置付けられており、その処理責任は市区町村にあります。市区町村が民間企業を活用する際には、一定の手続きと条件が必要になるため、ここでは、その特徴や留意点等について伺います。


1.処理方法のバリエーション

多量に発生する災害廃棄物の処理方法について教えてください。

●災害廃棄物と自治体の処理能力


 災害時には、片付けごみやがれきが一気に排出され、自治体の処理能力では追いつかない事態となります。ここでいう処理能力とは、「量」と「質」の面があります。

 災害時に片付けごみとして排出される粗大ごみは、普段でも自治体は処理していますが、災害時には、自治体の処理能力の数年分という膨大な量が短期間に排出されます。

 また、災害によってライフラインが途絶すると避難所にいる人のみならず、多くの人が仮設トイレを使うことになり、そのし尿の収集・処理が必要ですが、特に都市部の自治体ではバキューム車もし尿処理施設の処理能力も足りないという、量的な問題が発生します。


 質の面では、普段自治体では処理しない有害・危険物のようなものが仮置場に持ち込まれて、いったん預かってしまうとそれらは自治体で処理せざるを得ません。

 また、家屋解体の廃棄物は、普段は工事事業者が産業廃棄物として処理するものであり、自治体には元々、がれき類を処理する施設がありませんが、災害時には、質的な面で処理能力を超えたものが出てくるわけです。


●多量に発生する災害廃棄物の処理方法


 このように、災害時には量的・質的な負担が自治体にのしかかります。災害廃棄物を処理する方法は3通りあげられ、これらを組み合わせて処理を行います。

 1.自治体が整備する仮設処理施設による処理

 2.他の自治体の施設の余力に頼る広域処理

 3.民間処理施設を活用する処理

方法 事例 利点 制約条件等
1.仮設処理施設
  • 焼却炉設置は阪神淡路・東日本大震災の2例
  • 破砕・選別は広島土砂災害、熊本地震、平成30年7月豪雨など
  • 自区内処理の達成
  • 施設の設計、発注、生活環境アセス等に技術力と期間が必要
  • 用地の選定・確保が必要
2.広域処理
  • 阪神淡路、東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、平成30年7月豪雨など
  • 施設の被災による生活ごみ等の処理に好適
  • 協力先の受け入れ条件に適合する必要性
  • 自治体間協議・通知が必要
3.民間活用
  • 紀伊半島豪雨、関東東北豪雨、熊本地震など
  • リサイクル率向上に期待
  • 災害廃棄物の取扱いに熟練した業者は迅速性が高い
  • 法令適合性
  • 選定手続きの正当性
  • 価格の妥当性
  • 処理能力と技術的信頼性 等

●仮設処理施設による処理について


 仮設処理施設について自治体の方の話を伺っていると、焼却炉を作るイメージが強いようですが、実際に仮設焼却施設を設置した例は、阪神淡路大震災と東日本大震災しかありません。数千万トン級の災害廃棄物が発生したときには、数百万トンに及ぶ可燃物を所定の期間内に処理するために仮設焼却炉を設置して処理しました。

 最近の大規模災害では、熊本地震や平成30年7月豪雨のように、災害廃棄物発生量全体が数百万トン級であれば、仮設焼却炉は設置されず、仮設の破砕選別施設が設置されています。

 混合状態で排出された廃棄物のサイズを小さくしたり、夾雑物を除去してリサイクル率を高めるのに必要な破砕・選別機を仮置場に設置する例は多くなっています。


 災害に見合った設備をすぐに整備できればいいのですが、仮設処理施設を設置するのには設置場所や設備の仕様を決めたり、設備の能力によっては廃棄物処理法や騒音規制法、大気汚染防止法等に定められた手続きと基準をクリアする必要があります。そのため技術的に実力のある自治体や専門の技術・ノウハウをもつ企業の力がないと設置できませんが、対応できれば、一般廃棄物の自区内処理の原則が達成できるという特徴があります。

仮設処理施設の設置は、発生量が多い場合に用いられる方法ということになりそうですね。

●広域処理について


 災害廃棄物を自区内処理できないときに他自治体の力を借りるのが広域処理といわれるものです。近隣の自治体の一般廃棄物処理施設で処理できれば運搬距離が短く、様々な調整もしやすいですし、都道府県が受け入れ先を調整するケースも多くみられます。

 大規模な災害になると、都道府県外の自治体の施設で処理することもあります。

 自治体の処理施設に余力がない場合や、施設が被災して稼働できないときは、災害廃棄物のみならず生活ごみやし尿を近隣自治体の施設で処理してもらうことも有効です。


 災害廃棄物の広域処理では、焼却施設の処理量の数%程度の可燃物を混焼することは可能ですが、焼却施設の処理方式や供用開始年によって、受入れ可能な廃棄物の大きさが異なったり、廃プラスチックは燃えるごみか燃えないごみかなど自治体の分別ルールが異なることがあるため確認が必要です。

 また、一般廃棄物を区域外の施設で処理する場合に、廃棄物処理法上の手続きとして、事前に相手自治体に通知し、了解を得る必要があります。これらが広域処理の特徴、制約条件となります。

質的に処理能力を超える場合はどうなりますか?

●民間活用について


 質の面では、大規模自治体であれば、仮設処理施設を設置して対応することもありますが、主には3つ目にあげたような民間処理施設の力を借りることになります。


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2.民間活用における注意点

中小規模自治体は、産業廃棄物処理業者に詳しくないと思いますので、
民間活用の際の注意点について教えてください。

●法令適合性


 廃棄物処理を行う前提として、法令適合性があります。廃棄物処理を事業者が行う場合には、廃棄物処理法による許可が必要です。産業廃棄物許可業者は、一般廃棄物の処理の許可を有していないところが多いのですが、一般廃棄物をきちんと処理できることが必要です。

 災害廃棄物処理に関する特例措置があり、産業廃棄物の許可しか有していない施設でも、産業廃棄物と同じ性状の災害廃棄物を処理する場合は、事後届で処理することができます。ただし、処理責任は自治体にあるため、処理基準に適合した処理ができない業者に委託した場合には自治体が責任を問われることになりますので、法令適合性が重要なポイントです。


●委託業者選定手続きの正当性


 2つ目には、処理を委託する民間業者の選定手続きの正当性が非常に大切です。災害時にすぐに頼みたくなりますが、税金を使って委託する以上、適正な手続きをとる必要があります。そのため平時に処理業者をリストアップし、協定を締結して緊急時にお願いできるようにしておくことで、手続きの正当性は説明できるでしょう。


●価格の妥当性


 3つ目に、価格の妥当性があります。価格が安ければいいと言うことではなく、処理の基準に則り、所定の期間内に処理することという条件を提示した上で、三者見積りなどで適正な価格の業者に委託します。過去の事例を調査した上で妥当性を検討することもできます。災害廃棄物処理に係る費用には、国の補助金を使うことができ、査定の際の説明のためにも価格の妥当性を説明できるようにしておくことが大切です。


●技術的信頼性


 4つ目に、処理能力と技術的信頼性です。技術的信頼性のある事業者に頼むことが重要です。地元の事業者は、近くて運搬費が安いため依頼しやすいですが、扱ったことのない廃棄物について、処理基準に適合した処理が可能かどうか、技術的信頼性を確認しないまま契約すると、災害廃棄物を処理できないことにもなりかねません。処理能力と信頼性を押さえておくことが重要になります。

緊急を要する場面で、協定はどう活用できますか?

 全国の都道府県に産業廃棄物処理業者の協会があり、都道府県と協会とで災害時の支援協定を締結しています。災害時に協会を通じて適切な価格で処理に協力できる事業者を紹介していただけるという意味合いが協定には含まれていて、協定に基づいて市区町村は適切な業者へ適切な価格で契約できるという流れが確保できます。

協定締結時点で価格を決めている事例はありますか?

 価格について平時に協議できれば理想的ですが、実際には災害の規模や混合廃棄物の状況等によって処理費用は変わってきます。協定で標準価格を設定することはありえますが、その価格が足かせとなって災害時にかえって処理の妨げになることがないようにしておくことが大切だと思います。

県内でも業者によって価格が異なると契約を交わす市区町村が困ると思いますが、
県がまとめることは可能でしょうか。

 基本的には、市区町村と処理業者とで契約を締結するものなので、県に何の権限があって価格調整をするのかということになります。県は情報収集をして、適正な価格から外れないように基礎自治体とコミュニケーションをとることはできると思います。ただし実際には、市区町村によって分別区分や災害廃棄物の混合状態が異なるため、処理業者が現場を見て、目利きをしたうえで価格を提示することになり、一律に価格を調整することは難しいと思います。

適正な価格は過去の実績から示せるものですか?

 災害廃棄物1トン当たりいくらと示すことは難しいですが、過去の事例から、東日本大震災では、災害廃棄物処理量を国による補助対象事業の全体費用で割ると概ね3.7万円/トンでした。平成27年関東東北豪雨では、災害廃棄物5.3万トンに対して補助対象事業費及び市単費を合わせると30億円を超えており、6万円/トンになりました。水害と津波とで災害廃棄物の質も異なり、東日本大震災では量が多いためスケールメリットもあったと思います。遠方で処理したか、近くで処理したかという要素も影響すると思います。

 令和元年東日本台風では、処理単価は自治体によって様々と聞いており、高いところでは8万円/トンの例もあったと聞いていますが、単に相場が高くなっているということではなく、東日本台風では広域で同時多発的に被害が発生したため、処理業者の奪い合いになり、おのずと高くなるということがあったと思います。

協定による緊急時の随意契約を通常の契約に切り替えるタイミングはどうでしょうか?

 いつまでが緊急時でいつから復旧復興期かは、災害によりけりですが、緊急時とは発災してから自治体の管理体制ができるまでの間の混乱している状況で、排出された災害廃棄物は生活環境上の支障があるものが多いため、まさに緊急時と言えると思います。

 災害廃棄物の発生量をだいたい捉えて、いつまでに処理するかという目途をたて、災害廃棄物処理実行計画を作る段階になれば、処理フローが描けます。この段階まで来ると緊急時ではなく復旧復興期といえると思います。ただし、被災の規模や自治体の状況も様々なので、ケースバイケースと言わざるを得ないでしょう。

馴染みのない事業者がたくさん売り込みにくることがありますが、
どのように判断するといいでしょうか。

 事業者が廃棄物処理の許可を持っていることが基本ですが、全量リサイクルするから許可はいらないという業者や聞いたことのない処理技術を売り込んでくる例があると聞いています。リサイクルしたものの利用先まで確保されていて、期間内に利用される見込みがあるかを確認する必要があります。もし、引き渡した災害廃棄物がうまくリサイクルされずに問題を引き起こした場合、自治体は処理責任を問われることになります。

廃棄物処理業者だけでなく、土木建築業者に処理を委託した例もありますが、
その注意点はありますか。

 委託先の事業者が扱い慣れていない災害廃棄物まで処理を任せるのには注意が必要です。自治体は、事業者に対して仕様書で災害廃棄物をどう処理するかという方針を理解してもらえるように示すことが必要です。

 また、廃棄物処理法では、再委託は認められていませんが、災害廃棄物の特例措置として再委託を1回だけ認めています。しかし、再々委託はできない。これを理解していない事業者に処理を委託すると土木建築業界の下請け・孫請けといった感覚で委託が行われ法令に抵触する問題があったため、注意する必要があります。

災害時に復旧工事を進める建設コンサルタントや土木建築業者は取り合いになりそうですが、
災害廃棄物処理に必要な力を確保するにはどうするといいですか?

 災害廃棄物は相当量あるため、運搬するにも重機やダンプカーが必要であり、土木建築業者の力が必要です。一方、災害直後から72時間の人命救助からライフライン復旧のための1週間は土木建築業者の人員と資機材が多く投入されます。これらに比べると廃棄物処理は時期的に少し後になるため、発災1週間後くらいからパワーを振り向かせて応援をお願いする努力が必要になります。

 大手ゼネコンの多くは廃棄物処理を担当する部門を持っており、リソースも調達力も大きいため、大規模な土砂災害ではその能力を活用して撤去から廃棄物処理まで一貫して対応するところもあり、災害の種類によっては処理委託先としてゼネコンを選択することもあります。

広域処理では運送会社を活用することになりますね?

 近年の災害において広域処理で廃棄物を長距離運搬するには、海上輸送を使っている例があり、最寄りの港からコンテナに積み替えて処理施設までトラック輸送することがあります。また、JR貨物で鉄道輸送を行った例もあります。


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3.自治体が行うべき事務

これまで伺った注意点を踏まえて、自治体が行うべき事務には何がありますか?

●一般廃棄物の処理責任


 繰り返しますが、前提として災害廃棄物は一般廃棄物なので自治体に処理責任があります。お金さえ払えば処理が終わるという単純なものではなく、処理基準に合った適正な処理ができなければ、その責任は委託側にもあるということがポイントです。

 産業廃棄物の場合は、マニフェスト制度によってどこで処理処分されたかという情報が、委託者に記録として戻ってきますが、一般廃棄物にはマニフェスト制度がないため、処理先できっちり処理されているか、自治体側が現場まで行って確認し、適正処理の証拠を確保しておく必要があります。


●災害等廃棄物処理事業費補助金の申請や査定対応


 災害廃棄物の処理にかかった費用は、国の補助事業の対象として申請することができます。申請で必要となる災害報告書などの作成は自治体でないとできない事務であり、写真や記録・契約書類等を整理し、補助金申請額を算定した根拠を用意することが自治体にとって重要な大きな事務になります。

 そして、補助金の査定への対応も自治体にとって負荷の大きい事務になります。


●地元調整


 処理にあたって遠方の事業者を選定した場合に、なぜそこを選定したか議会等で説明する必要があったり、地元の民間業者へ説明して協力依頼するといった調整を行うことも説明責任を果たす意味で廃棄物部局の大切な仕事です。


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4.民間活用に関する平時の備え

民間活用について、平時から備えておくといいことに何がありますか?

 災害廃棄物処理計画策定時に推計された発生量から自治体に不足する処理能力がわかります。不足する分は、どこに依頼するかというストーリーを考えて備えることができます。

 協定が締結できていればそれで大丈夫ということでなく、災害時に協定に基づき誰に何をどうしてもらうか協定締結の相手と話し合っておくことが大切で、自治体は何をする必要があるか具体的に考えて備えることが重要と思います。

民間事業者とのコミュニケーションは取りにくそうですがどうでしょうか?

 政令指定都市・中核市は産業廃棄物業者の許可権限をもつため接点はありますが、それ以外の中小規模自治体では、産業廃棄物処理業者と接点がありません。そのため例えば、災害廃棄物処理計画策定時等に都道府県を通じて、地元業者と話し合う機会を持つとか、産業廃棄物処理業者の協会には都道府県内に支部があるため、災害時に協力・連携できるように連絡先を共有して、定期的に話し合う窓口を作っておくとよいと思います。

廃棄物処理業者以外にコンサルタント業者に頼る場面もあるようですが、
どういうときにコンサルタントを活用するか、その特徴や留意点を教えてください。

 自治体には、国から災害廃棄物処理計画を策定することが求められており、その計画策定でコンサルタントを活用することがあります。

 災害時には、災害廃棄物発生量の推計や処理フローを含む災害廃棄物処理実行計画を作成しますが、自治体職員が作成するのは必ずしも容易ではありません。そのため、発生量の推計や処理先の情報に通じているコンサルタントに依頼することがあります。さらに大規模な災害で、仮設焼却施設を設置する際に発注仕様書の作成にコンサルタントの協力を得たこともありました。これらの費用も国庫補助の対象になります。

 災害の事前・事後とも、被災経験のない自治体は災害廃棄物処理には必ずしも詳しくないため、全国の災害事例を知っているコンサルタントをうまく活用すると大きな力になると思います。


●補足 産業廃棄物処理施設の事情あれこれ


 それから、一般廃棄物処理施設には余力(公称処理能力 - 処理実績)という考え方がありますが、産業廃棄物施設にこれを当てはめることは困難です。一般廃棄物の量は自治体の人口規模によってほぼ決まりますが、産業廃棄物処理施設の処理量は社会経済活動の状況や処理価格の設定などの複雑な要因の影響を受けます。もし、「余力」の大きな産業廃棄物処理施設があったとすればビジネスとしては不採算ということになります。許可を受けている処理能力と処理実績の差を余力と考え、それを災害廃棄物処理に振り向けようとしても、施設をオペレーションする人や資源の追加が必要で、すぐには条件は整いません。

 また、廃棄物処理業者に通常の顧客の受入れを止めて、自治体の災害廃棄物を受けてもらおうとしても、災害廃棄物処理は一時のものです。もし普段の顧客がその間に別の事業者へ処理を頼んでしまえば、その顧客が戻ってきてくれる保証はないため、災害時に急にはそのような対応に踏み切れない事情があります。

 さらに産業廃棄物処理業者と一口にいっても、品目ごとに得手不得手があり、自社で普段取り扱っている得意な品目については早く処理が進みますが、被災により夾雑物の多い混合廃棄物系のものは引き取りを渋られ、どうしても残ってしまいがちになる傾向にあります。

ありがとうございました。
自治体が民間事業者を活用する際の心構えや実務についてお伺いすることができました。
自治体の皆様、ぜひ参考にしてください。

2020年春、世界中で新型コロナ感染対策が必要な状況になり、web対談としました。


 (聞き手)公益財団法人廃棄物・3R研究財団 夏目吉行
国立研究開発法人国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター 森 朋子
2020年6月19日


>>本記事は以上になります。 画面top  メニューに戻る