研修事例報告

取組紹介
災害廃棄物処理に関するリモート図上訓練の取組
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
主任研究員 小森清志、研究員 吉田夏稀

令和3年8月

1.はじめに


 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)では、令和元年度から令和2年度において「災害廃棄物処理対策研修モデル(中国四国ブロック)業務」を環境省中国四国地方環境事務所から受託し、災害廃棄物処理に係るワークショップ及び図上訓練を実施しました。令和2年度はモデル地域のうち松山市において、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための措置として、ウェブ会議システムを用いたリモート図上訓練を実施しました。その取組についてご紹介します。

 訓練当日は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を鑑み、県外からの来訪ができませんでした。そのため、訓練のファシリテーターを担当する松山市職員(2名)と参加する松山市職員(10名)は松山市西クリーンセンターの研修室に参集し、事務局は環境省中国四国地方事務所の担当者が高松市の執務室から、有識者と当社スタッフ(ファシリテーター、コントローラー)は当社の大阪オフィスからリモートで参加する形式としました。


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2.リモート図上訓練の目的


 平成30年3月に策定された「松山市災害廃棄物処理計画(令和元年6月一部修正)」(以下、処理計画)を踏まえ、リモート図上訓練の目的を以下の3点としました。

図表 1 図上訓練の目的

● 市の処理計画の実効的な運用
● 幅広い知識の習得による各主体の対応能力の向上
● 計画で定められた各担当を組成する他部署の職員との連携体制の向上

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3. リモート図上訓練の設計

(1)訓練の被害想定・対応内容・担当

 リモート図上訓練の「被害想定」、「対応内容」、「担当」は以下の通りです。処理計画に則り、南海トラフ巨大地震を対象とした被害想定としました。5つの担当に分かれ(うち2担当はコントローラーが対応)、処理計画における初動期(約3日)と応急期(約1か月)の災害廃棄物処理対応を実施しました。


図表 2 被害想定、対応内容、担当
被害想定 地震名 最大震度 津波被害の想定 災害廃棄物発生量
南海トラフ巨大地震 7 622(千トン)
対応内容 午前 発災直後~初動期(約3日)
  • 組織体制及び指揮命令系統の確立
  • 連絡体制の確立
  • 情報収集・連絡調整等
  • 災害廃棄物処理に係る受援・支援
午後 応急期(約1か月)
  • 災害廃棄物発生量の推計、庁内及び国,県,関係団体との調整、広域処理の要請及び県への事務委託の実施、災害廃棄物処理実行計画の作成
  • 各種広報の実施、市民相談窓口の設置、ボランティアの受入れ
  • 仮置場の選定、仮置場の運営計画の検討、広域処理に向けた検討・調整、二次仮置場の設置・運営(県への事務委託)
担当 総務担当
※松山市職員が対応
  • 総合調整本部の設置
  • 情報収集
  • 進捗管理
  • 実行計画策定  など
広報・渉外担当
※松山市職員が対応
  • 市民広報
  • 市民相談窓口の設置
  • ボランティア等の受入れ
  • 思い出の品等の受取り,保管等
  • 文化財の取扱い  など
がれき・解体撤去担当
※コントローラー(当社スタッフ)が対応
  • 障害物の除去
  • がれきの収集,運搬
  • 家屋の解体撤去  など
収集・対策・指導担当
※コントローラー(当社スタッフ)が対応
  • 処理困難物への対応
  • 事業者指導
  • 生活,避難所ごみの収集や運搬
  • 仮設トイレの設置,維持管理
  • し尿処理  など
施設担当
※松山市職員が対応
  • 仮置場の用地確保
  • 仮置場の設置運営管理
  • 処理施設能力の算出
  • 代替処理施設の確保  など
ファシリテーター
※松山市職員(現地)、当社スタッフが対応
  • 訓練の進捗管理・モニタリング
  • 参加者へのアドバイス
  • 状況付与の送付(メール・紙)  など

(2)状況付与の検討

 目的に据えた「処理計画の実効的な運用」に寄与するために、処理計画に則り作成したシナリオを事前に開示しつつ、シナリオには明記していない「状況付与」により、突発事項への対応能力の向上を図りました。以下に状況付与の内容の例を示します。


図表 3 状況付与の内容(一部抜粋)
問合せ先 問合せ元 内容
総務担当 応援自治体の職員 中国四国地方環境事務所からの要請で、貴市の災害廃棄物処理の応援の先発隊として職員を派遣するよう要請を受けた。明日から2名派遣するが、宿泊先などの確保をお願いすることは可能か。
総務担当 ●●地域の自治会長 津波に流された所有者不明の自動車やバイクが散乱している。道路をふさいでおり、処分をお願いしたい。
広報担当 マスコミ 松山市の災害廃棄物発生量と、いつごろから仮置場への集積が始まるのか方針だけでも良いので教えてほしい。
広報担当 ボランティア 市の社会福祉協議会に連絡するとボランティアは、コロナの感染が心配なので当面県内在住者に限るといわれた。我々はPCR検査も受けて陰性であることを確認しているので、片づけに行きたいが受け入れてくれるか。
広報担当 松山市民 津波で流されてきたのだと思うが、家の前にダイナマイトのようなものがある。危険物なのですぐに収集してほしい。
施設担当 松山市民 仮置場にゴミをもってきたが、トラックで大渋滞している。なんとかしてほしい。
施設担当 仮置場周辺の住民 臭気、粉塵がすごい。車も常に渋滞していて日常生活に支障が出ている。先日は、畳から煙が上がっているように見えた。火災が発生するのではないか。どこか別の場所に仮置場を移して欲しい。

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4. リモート図上訓練の進め方(連絡手段とモニタリング方法)


 実施イメージは以下の通りです。松山市職員(12名)は松山市西クリーンセンターの研修室に参集し、事務局は環境省中国四国地方事務所の担当者が高松市の執務室から、有識者と当社スタッフ(ファシリテーター、コントローラー)は当社の大阪オフィスからリモートで参加しました。

 リモート図上訓練における連絡手段は、通常の業務で活用するメールのほかに、電話の代替として顔を見て話せるウェブ会議システムでの対話としました。訓練開始後、ウェブ会議システムのブレイクアウトルームという機能で各担当(総務担当、広報・渉外担当、施設担当)が仮想の会議室に分かれます。仮想会議室にはコントローラー(当社)が配置され、各担当はコントローラーを通じて情報入手とともに手順の確認を実施しました。また、ファシリテーター(松山市職員、当社)はメール内容やウェブ会議システムを用いた対話をモニタリングし、図上訓練の進捗を管理しながら、課題等の把握に努めました。


図表 4 リモート図上訓練の実施イメージ




ウェブ会議システムを用いた資料説明

有識者の講評
(廃棄物・3R研究財団 中山育美上席研究員)


松山西クリーンセンターの様子


松山市職員とコントローラーの対話

事務局の様子(当社大阪オフィス)

図表 5 リモート図上訓練の様子


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5. リモート図上訓練の結果


 リモート図上訓練後に振返りを実施しました。各担当の検討結果と発表内容は以下の通りです。

 「訓練を通して感じた処理計画の改善点及び追加すべき事項」について、各担当で優先順位をつけて5項目ずつ整理しました。その結果、特に「人員確保と役割分担」、「処理順位などの意思決定」について、事前準備の重要性を確認することができました。これらの結果は、参集型の図上訓練でも改善点として優先度が高い項目であり、参集型・リモート型でも遜色ない結果が導出できました。

図表 6 リモート図上訓練を踏まえた処理計画の改善点及び追加すべき事項(優先度順5項目)
班名 処理計画の改善点及び追加すべき事項
総務担当 ① 早い段階で仮置き場運営の人数確保を始める。
② 仮置き場リスト(総務から提供)を使用しやすい形に変える。
③ 係の中で基本の担当分けを行う(現場確認、メール返信、記録、計画策定など)。
④ 廃掃法に詳しい人間を各担当に一人配置する。
⑤ 災害廃棄物処理計画中に【やることリスト】の追加。
広報・渉外担当 ① 段階に応じた広報の定型化
② 優先すべき処理の順位付け
③ 相談窓口の早期開設
④ 段階に応じたボランティア活動の確立
施設担当 ① 意思決定を迅速に行うこと
② 然るべき対象・時期に情報共有を行うこと
③ 対応事項の優先順位を的確に判断すること
④ 時間の制約を意識すること
⑤ 総務担当メンバー構成(各分野の知見を有する人材)

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6. まとめ(自治体職員の皆様にとって参考となること)


 今回実施したリモート図上訓練(自治体職員は参集型、ウェブ会議システム及び通常業務で使用するメールを活用して事務局とやり取りを実施)を踏まえ、参考にしていただきたい参集型およびリモート型の図上訓練の特徴は以下の通りです。双方の図上訓練の特徴を踏まえながら、災害廃棄物処理担当職員の方々の対応力向上が図られることを期待します。

 なお、双方の図上訓練の共通の特徴として、災害対応経験者(被災経験職員)を各班・各担当にうまく配置できると実態に即した対応や判断について参加者が学びを得やすくなります。さらに、リモート図上訓練を実施する場合には参加者・事務局ともに、リモート対応に慣れている人(比較的若手の職員を想定)を配置することで訓練をスムーズに進行することができます。このように、参加者の被災経験等も踏まえた班構成、班における役割分担などの工夫をすることで、より効果的な図上訓練になると考えます。

 当社では参集が難しい状況においても様々なツールを用いた適切な手法により図上訓練を企画・運営し、災害廃棄物処理に関する理解醸成を図るとともに、参加者のネットワーク構築の支援を推進して参ります。


図表 7 参集型およびリモート型の図上訓練の特徴
  参集型 リモート型
メリット
  • 訓練中に顔を見て相談しやすい。
  • 市町村の担当職員間のネットワークが構築しやすい。
  • 被災経験自治体の職員と直接対話ができ教訓等を得やすい。
  • 訓練中の意見交換や共同作業などで満足度が高まる。
  • 他の自治体職員の対応力を間近で体感できる(自身の対応力を測れる)。
  • より職員個人の対応が求められ、災害発生時に近い対応となる。
  • 被災時に使用する機器やツールを活用した実践的な訓練となる。
  • 移動がないため遠方からでも参加しやすく、新型コロナウイルス感染症等の人流制限時でも対応可能。
  • (全員がリモート参加の場合)模造紙や付箋等の訓練資機材、新型コロナウイルス感染症等の衛生対策の資機材、広い会場等が不要。
デメリット
  • 遠方からの参加者を考慮した企画・調整が必要。
  • 模造紙や付箋等の訓練資機材、新型コロナウイルス感染症等の衛生対策の資機材、広い会場等が必要。
  • ウェブ会議システムの有無(使用可否)、通信環境、システムリテラシーの高低等が満足度に影響。
  • 訓練内容とウェブ会議システムによる動作理解に時間を要する場合がある(事前研修等で模擬体験が理想)。
  • 有識者や事務局が全体を俯瞰するのが難しい(現場の担当職員との連携が必要)。

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7. 外部リンク


令和2年度災害廃棄物処理対策研修モデル(中国四国ブロック)業務

報告書概要版

報告書


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